花恋甘檻物語

緑山紫苑

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第三章

豆腐メンタル

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 ーーーー疲れたーーーー


 「どうしたの紫苑ちゃん。昨日もそうだったけど、今日も、家に帰って来てから更に機嫌悪いじゃん。」

 「今日、高校で、階段を降りてるとき、蓮花くんに背中押されて紫苑、階段から落っこちたの。」

 「うわっ、サイテー!蓮花くんって昨日シュークリームを家に持ってきてくれたイケメンだよね、マジで性格悪いんだ?」

 紫苑は、凛玖と枕投げをしながら今日の出来事話す。

 「もう疲れた。黒川ファンクラブのいじめの的になるのも、蓮花くんの奇行も。」
 
ミ○タードーナツで、やけ食いしてやる~!!

 紫苑がそう思ってポイントカードをみると、凛玖は、笑った。

 「気持ちは分かるけど、やめなよ、太るよ。」

 「そうね、、、、、。」

 紫苑はカードを財布にしまった。

 太るのは嫌だ

 はぁ

 「ハッ、!」

 そういえば、今日、満月だっけ?

 月夜神様、シルバーと会える日、、、

 また会いに行くって約束したし、今日の夜、シルバーさんに会いに行こう!

 そして、ちょっとだけ、愚痴を聞いてもらおう、、

 「凛玖、今日紫苑、シルバーさんに会いに行ってくる。満月だし。」

 「え、あ、うん。てか、シルバーさんって月夜神様なんでしょ?本当にいるの?」

 凛玖は興味津々に聞いてきた。

 「うん。居たよ。あの人が本当に月夜神様かは分からないけどそれらしき人は、、、いたよ。」

 シルバーさん、きれいな銀色の髪をしてたなぁ、それに水色の瞳をしてた、、、都市伝説と一致してる。

 「ふーん、今度、写真取って来てよ。」

 凛玖はシルバーさんの姿が気になるようだ。

 「ウーン、聞いて見るよ。」

 紫苑は凛玖にそう返事をして、9時になるのを待った。

 そうだ!

 前はお菓子をたくさんご馳走になったし、紫苑も何かお菓子を作って持っていこう!

 今から作れるお菓子、、、

 家にある材料からして、クッキーとか?

 紫苑が食品棚の中をガサゴソと見ていると、、、

 「アールグレイ!」

 アールグレイの茶葉が入ったジップロックを見つけた。

 去年、母が買ってくれたお菓子作り用のやつだ。

 よーし!アールグレイのクッキーを作ろう!

 紫苑は早速、クッキーを作り始めた。






 …………………………………………………………………………………………



 ーー豆腐メンタルーー



 
 次の授業は長距離走だ。

 あまり気乗りしない。

 俺はあまり足が速くないし、長距離走るのも得意でない。

 気持ちが落ち込んでいるせいか、足取りも遅くなってゆく。

 俺が体育着に着替え終わった頃にはもう、自分以外の生徒は、グラウンドへ行ってしまったようだ。

 俺も早く集合しないと、、、

 思い足取りを上げ、のそのそと階段を降りる。



 ダダダダダダ!!

 一人の体育着の女子生徒が階段を駆け上がって、通り過ぎて行った。

 どうしたのだろう?

 忘れ物でもしたのだろうか。

 俺はあまり気にせずに、階段を降りていく、、、、、?!!!

 「っ?!」
 
紫苑さんがカエアンさんに覆いかぶさるように、密着していた。

 これが少女漫画でよくある[床ドン]というやつ、、、、?!

紫苑さんとカエアンさんって、、、もしかして、、、、

 俺は混乱気味に二人を見下ろして固まった。

 紫苑さんは、起き上がりこちらの方を見上げた。

 彼女が俺のことを目に捉えると、大きく顔を歪めた。

 「なんでそんなことするの、蓮花君。」

 紫苑さんは自分に向かってそう言った。

 え。

 何?

 俺、紫苑さんに何かしてしまったのだろうか?

 俺が紫苑さんの言葉に驚いていると、、、

 彼女の顔がどんどん歪んでいく、、、

 ああ、やっぱり紫苑さんは笑ってるほうが可愛いな、、、

 マジギレしてる顔は恐ろし、、

 「紫苑も、紫苑のこと階段から突き落とす奴なんか、蓮花君のことなんか大ッキライ!!」

 大ッキライ?

 大ッキライ

 大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ大ッキライ

 え?

 紫苑さんは俺のことが嫌い?

 俺が紫苑さんのことを階段から突き落とす?

 そんな事してない!

 するわけない!

 誤解だ!

 自分の体が段々と冷たくなっていくのか感じる。

 全身から滝のように冷や汗が流れてくる

 心臓が痛い、、、

 『蓮花君のことなんか大ッキライ!!』

 違う!

 違うんだ!

 俺はやってない!そんな事、天地がひっくり返ってもするわけない!

 俺は紫苑さんのことを階段から突き落とすなんてこと、してない!

「ぁ、ぇ、、、、ぃます、、、」

 俺は必死に紫苑さんに自分は紫苑さんのことを突き落としていないと伝えようとするも、、、、、、、、紫苑さんに言われた『大ッキライ!!』が頭の中でループして、苦しくて上手く声が出せない、声がかすれる、、、

 気持ち悪い、、、

「カエアン、行こっ!」

 「うん!行こうか、紫苑君!」

 紫苑さんはカエアンの手をひいて、グラウンドへ行ってしまった。

 待って!

 違う!違うんだ!俺は、、、


 
 
 気持ち悪い、、、

 お腹の奥から熱いものが喉までせり上がってくる。

 『蓮花君のことなんか大ッキライ!!』

 今でも紫苑さんの言葉が頭の中でループ、 ループ、ループする、、、

 立つのが辛すぎてもう立ってられない、俺は思わず階段にへたり込む。


 「紫苑さっ、、オェェェエエ工アアア!!!!」

 吐いた。

 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 「はっ!」

 気がついたそこは、階段ではなく、白いベッドの上だった。

 保健室だ。

 外は暗かった。

 いつの間にかに眠っていたようだ。

 紫苑さんは、もう家に帰ってしまっただろうか。

誤解だと、 伝えないと、、、。

 ガラッ

 俺がベッドから起き上がると、急に保健室のドアが開いた。

 「蓮花君、居るかい?」

 入ってきたのはカエアンだった。

 「はい、、、。」

 俺は返事をしたが、何故か声が小さくなる。

 はじめての経験だ。

 カエアンは、俺が寝ていたベッドのそばに座った。

 「災難だったね、蓮花君。」

 「え、」

 「君を見てれば、君が紫苑君を階段から突き落としたんじゃないって解るさ!」

 そうだったんだ、、、、良かった。

 「ですが、、、何故、カエアンさんはそのことを紫苑さんに言ってくれなかったんですか?」
 
カエアンはニッコリとしてサラリとこう言った。

 「だってさ、僕、蓮花君のこと、嫌いだしね!むしろ絶好のチャンスだと思ったのさ!蓮花君は僕が君のこと嫌いだって知らなかったのかい?」

 「、、、、、、、何となく、そんな気はしてました。」

「なら、疑問はもう無いね!」
 
「いえ、まだあります。」

 「?、なんだい?」

 カエアンさんが俺のことを嫌っているとしたら、新しい疑問が浮かび上がる。

 それなら、何故、俺が犯人じゃないと知っていると、俺にわざわざ言いに来たのか。

 普通、嫌いな奴のところにわざわざそいつがホッとするようなことを言いに来るのだろうか?

 「カエアンさん。あなたがここへ来た目的は?」

 俺がそう尋ねると、カエアンは、ため息をついて、

 「わからない?もしそうなら、君はとんだ大馬鹿者さ。紫苑君が、深く傷ついてるというのに。君は本当に自分のことしか考えていないんだね。」

 「あ」

 「紫苑君に『大ッキライ!!』って言われただけで、ゲー吐いて、気を失うなんて。どんだけ豆腐メンタルなのさ!あの後、紫苑君はずっと君のこと心配してた。」

 え、

 紫苑さんが?

 俺のことを心配してた?!

 「僕も最初は蓮花君のこと、犯人ってことで放っておいて良いと思ってたんだけどね、実際は君は紫苑君のことを突き落としていない。ってことは、君の他にこの学校に紫苑君を階段から突き落とした犯人がいるってことじゃない?」

 「そうですね。」

 「だから、真犯人を捕まえて紫苑君に土下座させないとって思ったのさ!蓮花君もそうは思わないかい?」

 カエアンは俺にニッコリと笑ってそう言った。

 だが、目は笑っていなかった。

 、、、、真犯人、。

 そうだ!真犯人をつかまえれば、紫苑さんとの誤解が解ける!

 そうだ!

 全部そいつのせいなんだ!

そいつのせいで紫苑さんと俺がこんなに苦しめられているんだ!

 
「そうですね。捕まえましょう!真犯人を!」

 ゴッ!

 俺達は、拳を合わせ、紫苑さんを階段から突き落とした犯人を捕まえることを誓った。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 そうだ、、、、悪いのは全部そいつだ!

 そいつのせいで俺は、、、、
 
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