花恋甘檻物語

緑山紫苑

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第三章

逃げて

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もう、あと2分、、、」

 元の世界に戻れなくなるのは嫌なので、紫苑はもう、シルバーさんのことは無視して帰ることにした。

 ガバッ

 「?!」

 後ろからシルバーさんが急に抱きついてきた。

 「あるところに、一人で暮らしている少年が居たんです。その少年は、とても孤独でした。」

「はいぃ?」

 いきなり何?怖いんだけどっ!

 紫苑は慌てて、シルバーさんの腕から抜けようともがく。

 「ある日、その少年は綺麗な緑色の小鳥を見つけました。だけど、何故か逃げられてしまいました。」

 シルバーさんは紫苑のことを抱きしめたまま、話し続ける。

 「あの、話してください、シルバーさん。」

「それから少年は、小鳥が逃げないくらい楽しい檻を作ろうと努力しました。」
 
シルバーさんは、紫苑のことを無視して話し続ける、、、

 「ある日、やっとあの緑色の小鳥が成長して、戻ってきたんです。でも、その小鳥の隣にカラスがいました。」

 これは、話が終わるまで紫苑のこと帰らせてくれなそうだ。

 でも、紫苑には話を聞いている余裕などない!

 誰かっ!

 
ドカッ!!!


 「え?」

 シルバーさんの腕が、紫苑から離れた。

 後ろに振り向くと、赤毛の女の子がシルバーさんの顔面を足で踏んでいた。

 「早く逃げて!元の世界に帰れなくなります!」

 赤毛の女の子が紫苑に向かって叫んだ。

 「ありがとう!」

 紫苑はお礼をいい、来た方向へ全力で走る。

 「そのため、カラスが邪魔をして、小鳥を逃してしまいましたぁ!」

シルバーさんが、ムクリと起き上がった。

 「ですが、小鳥はやくそくを守って、また、私の手の届く距離に戻ってきたんです!!!」

 シルバーさんは叫びながら、紫苑のことを追いかけてくる、、、

 は、速い、、、

ものすごい勢いで紫苑のことを追いかけてくる
 
 「また、逃げられてたまるかぁ!!!」
 
「ぎゃゃァァァァ!!!ついてこないでぇぇぇ!!!」

 走っていると目の前に、光のアーチが見えた

 きっとあれだ

 あそこをくぐればきっと、元の世界に戻れる!!

 紫苑の直感がそう告げていた。

 あと一歩で紫苑が光のアーチをくぐり抜けられそうって所で、後ろから、必死な願うようなシルバーさんの叫び声が聴こえてきた、

 『一人にしないで』

 「、、、、、。」

 『お願いっ、、、一人にしないで!!』

 「っつ、、、!!」

 紫苑が、行ってしまったら、シルバーさんは(月夜神様は、)また、一人で孤独に生きることになる?

 誰だって人は一人では生きられない

 紫苑は、帰るべきなのだろうか?

 紫苑の一瞬のためらいが命取りであった。

 光のアーチはスゥっと消えてしまった。

 「あっ、、、、」

 12時になってしまったのだ。

 「捕まえた♡」

 後ろから声が聞こえた




 
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