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番外編
EX1-1 俺たち付き合ってるんだよな?
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(遅くなりましたが、番外編始まります。本編ラストからの続きです。)
「ねえ、しげる」
クルスに話しかけられ、ひと寝入りした後も相変わらずケツやら腰やら内腿やらが痛い俺は、ベッドの上で顔だけ動かした。
ベトベトになった身体は綺麗に拭いてもらったが、奥の奥まで抉られ激しく肉をぶつけられた痛みは原状回復してもらえず、ダメ元で自分に回復術を掛けたが、いたずらにMPを減らしただけに終わった。
それもこれも全部、クルスのせいだ。
「ああ? ……なに?」
「これ、昨日食べられなかったから今食べてもいいかな?」
不機嫌気味に相槌を打つと、クルスはベッドから起き上がり、普段食事を摂っているテーブルから紙袋を持って戻ってきた。
――なんだあいつ、いつの間にパンツ履いたんだ?俺にも履かせろ。
紙袋の中に入っていたのは、俺が作った、愛と狂気の賜物ともいえるアラザン製クルスのお名前入りアルミカップチョコ……と、本来ならエドワードの手元に渡っていたはずのチョコレートだ。
「そっちの箱のほう、エドワードに渡さなかったんだな」
「昨日生徒会の書記とくっつけてきたって言っただろ。それなのに僕が渡す訳がない」
「ごーどん」
エドワードのお相手の名前を聞いて某青い機関車を思い浮かべていると、俺に向かい合うようにするりとベッドに入り込んだクルスが、箱に入った方のチョコレートのほうを、俺の顔近くに持ってきた。
「殆どしげるに作ってもらっちゃったけど……これ。一緒に食べようよ」
「……おう、」
クルスが箱を開けると、愛嬌のある出来のものがちらほら混ざっていて、思わず「ふっ」と笑みがこぼれた。
ココアパウダーが淋しい量しか掛かっていない生チョコに手を伸ばすと、「これね」と言ってクルスに取られてしまった。
「それ、俺が食べようとしてたやつ」
狙っていたチョコレートを取られて恨み節を吐くと、チョコレートを咥えたクルスの口角が微かに上がった。なぜか奴が俺を覗き込み、後頭部に手を添えたかと思った瞬間、わずかに柔らかくなったチョコレートがねろりと入り込み、口の中を塗りたくるように動いた。
「……んっ、……ふ」
安っぽくて甘い味のチョコレートがゆっくりと溶け、喉奥に流れてこくりと飲み込むと、甘い余韻が残る舌が俺の歯並びを探るようにわずかに動き、すっと引き抜かれた。
「お味はどう?」
「……ほとんど俺が作ったんだから、まずい訳ないだろ。
というか普通に手は動かせるから」
頬杖をつきながら意地悪な笑みを浮かべるクルスからパッと目を逸らして、ほとんど自分が作ったチョコレートの感想を述べた。
「確かに美味しかった。チョコレートもしげるも」
チョコレート並みに甘く気障な台詞を平然とのたまうクルスに、恋愛経験値が圧倒的に乏しい、というかゼロの俺が機知に富んだ返しができるはずもなく。
「なっ、なんて事言うんだ、このキス魔め!」
顔の火照りを感じながら、乏しい語彙で奴を罵るのが精一杯だった。
「おかわり、いる?」
「いらん!」
口元にチョコレートを近づけてにやつくクルスを無視して一粒ひょいと摘み上げると、わざとらしいほど大きく口を開けて頬張った。
「そのアルミカップ、食べられるの?」
すっかり動揺した俺は、アルミカップごとチョコレートを口の中に入れてしまったようだ。カップのギザギザが口蓋にちくりと刺さって「いぎっ」と言う悲鳴を漏らした。
愉快だと言わんばかりの「くくく」という腹立たしい笑い声の傍で、顔を顰めながら口の中をモゴモゴさせていると、
「ほら、これに吐き出しなよ」
と言ってクルスがティッシュを数枚重ねたものを持ってきた。
「……はひはほ(ありがと)」
チョコレートを口の中で舐め溶かして、アルミカップをぺっと吐き出した。
このティッシュどうすっかな。ゴミ箱に捨てたいけど身体痛いしなァ……と逡巡していると、それは青紫色のオーラをふよふよと纏いながら、ゴミ箱へと旅立っていった。日頃から無闇に魔力を使うなと説教垂れてる奴とは思えぬ、魔力の無駄遣いだ。
「ふつーに立って歩いて、捨てに行った方が良かったんじゃない?」
思わず突っ込むと、さっきのふよふよオーラ(仮)が今度はA4サイズの紙2枚とペンを運んで、クルスの手元に戻ってきた。
「しげる」
「なに?」
「これ書いて。学園に届け出る義務があるんだ」
そう言ってクルスは2枚のうち1枚の紙を、俺の前に差し出した。
紙には「交際届」と書かれていた。……クルスは俺の事を恋人だとは言ったが、特に付き合おうとかの言及はされていない。
「俺たち、付き合ってる……って事でいいんだよな?」
激重感情を抱えるセフレみたいな言い草になってしまったが、他に訊ねようがない。
「何を言ってるんだ? 交際は勿論、お互い好きなんだし、月桂樹の雫を飲み干した時点で婚約も成立しているんだから」
もう一枚の紙が、俺に差し出された。片方の欄にはクルスの署名入りの……
「ついでにこっちも書いちゃって。
……しげる、学園を卒業したら正式に結婚しよう」
結 婚 誓 約 書。
3秒ほどフリーズした後、俺は素っ頓狂な叫び声を上げた。
「ハァァアァァァァァ‼︎⁉︎」
「ねえ、しげる」
クルスに話しかけられ、ひと寝入りした後も相変わらずケツやら腰やら内腿やらが痛い俺は、ベッドの上で顔だけ動かした。
ベトベトになった身体は綺麗に拭いてもらったが、奥の奥まで抉られ激しく肉をぶつけられた痛みは原状回復してもらえず、ダメ元で自分に回復術を掛けたが、いたずらにMPを減らしただけに終わった。
それもこれも全部、クルスのせいだ。
「ああ? ……なに?」
「これ、昨日食べられなかったから今食べてもいいかな?」
不機嫌気味に相槌を打つと、クルスはベッドから起き上がり、普段食事を摂っているテーブルから紙袋を持って戻ってきた。
――なんだあいつ、いつの間にパンツ履いたんだ?俺にも履かせろ。
紙袋の中に入っていたのは、俺が作った、愛と狂気の賜物ともいえるアラザン製クルスのお名前入りアルミカップチョコ……と、本来ならエドワードの手元に渡っていたはずのチョコレートだ。
「そっちの箱のほう、エドワードに渡さなかったんだな」
「昨日生徒会の書記とくっつけてきたって言っただろ。それなのに僕が渡す訳がない」
「ごーどん」
エドワードのお相手の名前を聞いて某青い機関車を思い浮かべていると、俺に向かい合うようにするりとベッドに入り込んだクルスが、箱に入った方のチョコレートのほうを、俺の顔近くに持ってきた。
「殆どしげるに作ってもらっちゃったけど……これ。一緒に食べようよ」
「……おう、」
クルスが箱を開けると、愛嬌のある出来のものがちらほら混ざっていて、思わず「ふっ」と笑みがこぼれた。
ココアパウダーが淋しい量しか掛かっていない生チョコに手を伸ばすと、「これね」と言ってクルスに取られてしまった。
「それ、俺が食べようとしてたやつ」
狙っていたチョコレートを取られて恨み節を吐くと、チョコレートを咥えたクルスの口角が微かに上がった。なぜか奴が俺を覗き込み、後頭部に手を添えたかと思った瞬間、わずかに柔らかくなったチョコレートがねろりと入り込み、口の中を塗りたくるように動いた。
「……んっ、……ふ」
安っぽくて甘い味のチョコレートがゆっくりと溶け、喉奥に流れてこくりと飲み込むと、甘い余韻が残る舌が俺の歯並びを探るようにわずかに動き、すっと引き抜かれた。
「お味はどう?」
「……ほとんど俺が作ったんだから、まずい訳ないだろ。
というか普通に手は動かせるから」
頬杖をつきながら意地悪な笑みを浮かべるクルスからパッと目を逸らして、ほとんど自分が作ったチョコレートの感想を述べた。
「確かに美味しかった。チョコレートもしげるも」
チョコレート並みに甘く気障な台詞を平然とのたまうクルスに、恋愛経験値が圧倒的に乏しい、というかゼロの俺が機知に富んだ返しができるはずもなく。
「なっ、なんて事言うんだ、このキス魔め!」
顔の火照りを感じながら、乏しい語彙で奴を罵るのが精一杯だった。
「おかわり、いる?」
「いらん!」
口元にチョコレートを近づけてにやつくクルスを無視して一粒ひょいと摘み上げると、わざとらしいほど大きく口を開けて頬張った。
「そのアルミカップ、食べられるの?」
すっかり動揺した俺は、アルミカップごとチョコレートを口の中に入れてしまったようだ。カップのギザギザが口蓋にちくりと刺さって「いぎっ」と言う悲鳴を漏らした。
愉快だと言わんばかりの「くくく」という腹立たしい笑い声の傍で、顔を顰めながら口の中をモゴモゴさせていると、
「ほら、これに吐き出しなよ」
と言ってクルスがティッシュを数枚重ねたものを持ってきた。
「……はひはほ(ありがと)」
チョコレートを口の中で舐め溶かして、アルミカップをぺっと吐き出した。
このティッシュどうすっかな。ゴミ箱に捨てたいけど身体痛いしなァ……と逡巡していると、それは青紫色のオーラをふよふよと纏いながら、ゴミ箱へと旅立っていった。日頃から無闇に魔力を使うなと説教垂れてる奴とは思えぬ、魔力の無駄遣いだ。
「ふつーに立って歩いて、捨てに行った方が良かったんじゃない?」
思わず突っ込むと、さっきのふよふよオーラ(仮)が今度はA4サイズの紙2枚とペンを運んで、クルスの手元に戻ってきた。
「しげる」
「なに?」
「これ書いて。学園に届け出る義務があるんだ」
そう言ってクルスは2枚のうち1枚の紙を、俺の前に差し出した。
紙には「交際届」と書かれていた。……クルスは俺の事を恋人だとは言ったが、特に付き合おうとかの言及はされていない。
「俺たち、付き合ってる……って事でいいんだよな?」
激重感情を抱えるセフレみたいな言い草になってしまったが、他に訊ねようがない。
「何を言ってるんだ? 交際は勿論、お互い好きなんだし、月桂樹の雫を飲み干した時点で婚約も成立しているんだから」
もう一枚の紙が、俺に差し出された。片方の欄にはクルスの署名入りの……
「ついでにこっちも書いちゃって。
……しげる、学園を卒業したら正式に結婚しよう」
結 婚 誓 約 書。
3秒ほどフリーズした後、俺は素っ頓狂な叫び声を上げた。
「ハァァアァァァァァ‼︎⁉︎」
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