中島と暮らした10日間

だんご

文字の大きさ
上 下
1 / 53

1 中島君?さん?

しおりを挟む
 北の大地に暮らす自分は、しがない会社員だ。
 三十路に届くかな?という所。
 別段、誇る所もない普通の人間だと思っている。

 周りからは『ちょっと変』と言われているが、みんな自分が中心にいて人を見ると、そう思うんじゃないかなと思う。
 自分と全く同じ人間なんていないでしょ?
 みんな違って、みんないいでしょ?
 まぁ、そんなもんです。

 今日は、北の大地の旨い物が集まる秋の祭りに参戦するべく、彼女と待ち合わせをしていたのだよ。
 フスン。
 今日は美味しい物をたくさん食べる為に、お財布を満たして来たからね!
 そう言う自分に、彼女は苦笑してたけど。
 君もカニの甲羅焼きを狙っているの知ってるからね?

 あれこれ話ながら、主だった店をピックアップしていく。
 久々に会う彼女との会話は、楽しい。
 たとえ内容がカニ・ウニ・串焼きだらけだとしても、そこに彼女の笑顔があるだけで、どれほど心が華やかになるか……君は知ってるかな?

 あっ、うん。
 カニね。カニの甲羅焼き。
 それ美味しいもんね。
 並ばなきゃね。
 えっ?8枚も?
 えっ?いや、2人でならね?
 4・4で分けて……
 えっ?3・5なの?
 ……うん。自分、今幸せだなぁ~……

 9月も終わりに近付いてるのに、今日は目茶苦茶暑い。
 彼女が頬に当てて来たお茶のペットボトル……よく冷えてて気持ちがいいんだけど、水滴がダラダラと服に流れ込んで来る。
 ペチョペチョになっているんだけど?
 あぁ……イイ顔してる……狙い通りでしたか。

 カニの行列に彼女と並びながら、最近の話を聞く。
 彼女が最近見つけたパスタのお店が面白い事。
 ちねったお米みたいなパスタを出して来て驚いた事。
 美味しい豚丼屋を見つけた事。
 焼き肉屋が多いけど、美味しい所しか行かない事。
 レースに参加する事。
 ……8割食べ物の話だった。
 充実した日々を過ごしているらしい。

 自分も、最近の事を話した。
 父親が転勤になって、母親と弟がついて行き、自分が空いた実家に戻った事。
 通勤が遠くなった事。
 妹が大学の寮から帰って来るかも?って言ってた事。
 妹の食事状態が悪い事等々。

 「一国一城の主ね?」

 ぶふぅっと吹き出しながら言われても……微妙な気持ちでいっぱいですけど?
 
 「あっ、妹さんも呼んじゃえば?寮生って、美味しい物に飢えているんじゃない?カニ出ないし」

 カニは出ないね。
 でも、確かにそうだよね。
 朝・夕はご飯出るけど、昼は出ないって言ってたっけ。
 昼代ケチって、木の実食べた~とか、ウグイ釣って食べたけど、泥臭くて無理だったとか……あれ?夏季休暇で食事出なくなったんじゃなかったっけ……?

 「えっ?妹、ヤバくない?!」

 即刻、妹に連絡。

 『アレ?兄ちゃん、どうしたの?』

 「いや、今さ大通りの出店で咲ちゃんと買い食いしているんだけどさ。お前も来ないかと思って」

 『マジで?!行く行く!!中島も連れて行っていい?』

 「うん?そっちがいいならな。大学から来るのか?」

 『近くにいるから、すぐ行くよ!!』

 「お~……気を付けてなぁ~」

 通話を切って、彼女にすぐ来るらしいと伝えた。

 「あと、中島君?さん?も連れて来るんだってさ」

 「いいんじゃない?2人位、どぉんと任せなさい!!お財布、2つあるし?」

 「ありがたいですよ……どぉんと助けて下さいませ」

 「おまかせあれっ!!」

 と、同時に2人で吹き出した。
 この空気間がたまらない。
 彼女と長く続いている事に感謝だな。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

プラカーシュの首

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

猫と私の不思議な生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

サウザンド・ジョブ・オンライン ~あるみならい僧侶の話~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:48

人はじゃがいも、社会はじゃがいも畑

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...