中島と暮らした10日間

だんご

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12 中島3日目。まさか?

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 ……中島、葉っぱぶち込んだ時、嫌がらなかったな。

 庭から収穫してきた葉っぱを、ケースのフタを開けてバサバサ入れたのだが。
 身体に触れる物があれば、ブンブンと大きく嫌がる中島が、今朝は動かなかった。

 思えば、昨夜もそうだったんじゃないか?

 帰宅して、中島確認の際も動かなかった。
 寝てるんだろうと思ってたけど……
 あれ?
 アイツ、昨日の場所から動いてないんじゃないか……?
 えっ?
 まさか、知らない内に『御臨終だった』なんて事には、なってないよな……?
 ヤベェ……心配になってきた。
 もし何かあったら、自分のせいだよな……

 手から直接葉っぱを食べさせてないから?
 それともウチの葉っぱが合わなかった?

 ヤベェ……薫にも怒られるな……
 青虫って、動物病院だっけ……?
 早く仕事終わらせて帰ろ。



 「君、また来たの?」

 「はい……すいません。また、少しお話させて頂きます」

 「いや、ウチも忙しいからさぁ?あんまり時間取れないんだよね?それでもいいの?」

 「ありがたいです」

 「はぁ……じゃあ、少しだよ?入って」

 「ありがとうございます。失礼します」

 中島……仕事終わらせて帰るからな。
 時短説明……開始だっ!!





 ……何か知らんが、契約取れてしまった。
 新商品と去年のシリーズを端っこのスペースに置いて貰える事になった。
 なんだろう、この状況。
 時短が効果的だったって事?
 まさかまさか。
 今回は、たまたま効果的だったって事か?

 はっ?!
 まさかっ?!
 中島の恩返しっ?!
 まさかっ……中島……どうにかなっちゃったんじゃあ……?
 最期の力を振り絞った的な……?

 なっ……中島ぁーーーっっ!!

 早く帰らねばっ!!
 ダッシュだっ!!

 「課長っ!! 今日、定時で上がりますっ!!」

 「おっ……おぉ……?」

 「お先、失礼しますっ!!」

 『パタンッ』

 「おぉ……?……ねぇ佐々木さん。田中君なにかあったのかな?」

 「いいえ……特になにも聞いてませんが……」

 「……そっかぁ。まぁ、こんな日もあるって事かな?」

 「ですねぇ……」



 あぁ~……電車の時間がもどかしい。
 急いでいるから余計にだ。

 けど、急いで駆けつけたからと言って、自分にどうこう出来る可能性はあるんだろうか?
 生態を完全に把握しているわけでもない、自分が。
 かと言って、専門の人間がいるんだろうか?
 近場に専門の人間がいたとして、中島はただのスズメガの幼虫。
 大量にいるスズメガの幼虫を、わざわざ治療させたいなんて考えている人間なんていない。
 絶対に退治したい人間の方が多い。
 てゆーか全員が全員、退治を願っている状況。
 そんな状況で、自分には何ができると言うのか?

 ……何も出来ないんだよな。
 
 それでも、せめて側にいるべきだろう。
 それが、命を預かった自分の義務だろうから。

 ……ただの青虫なんだけどな。
 中島……なんて名前つけるから、見捨てられないだろう。
 ……まったく、酷い妹だ。


 
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