中島と暮らした10日間

だんご

文字の大きさ
上 下
37 / 53

37 妹からの電話

しおりを挟む
 中島が薫に回収されて行ってから、普段の生活が戻って来た。
 ……と言う感じはしない。
 基本的に葉っぱ作業が減っただけである。
 朝もすんなり出勤の準備に入れるし、帰りもすぐ自宅に入れる。
 暗闇で中島の存在確認をする必要もなくなった。
 同時に話し相手もいなくなったのだが。
 ちょっと、物足りない。

 ……結構、中島の存在は大きかったかもな。

 セルフボケ突っ込みをする自分だが、何か対象がいると寂しくないと言うか、恥ずかしくないと言うか、虚しく……なりはした。
 まぁちょこっと寂しく思ってるって事かぁ。

 平凡な毎日が戻り、1週間程経過した頃、妹の薫から電話が来た。
 また金欠なのか?と思ったが、かなり慌てている様子。

 『兄ちゃん、兄ちゃん!どうしようっ』

 「どうした?明日食うメシが手に入らないのか?」

 『違うよっ!中島だよ!中島っ!!』

 「中島っ?! 中島がどうしたんだ?!」

 『今朝ご飯食べさせたら、大量に吐いてさ……今ずっと動き回って、ケースに身体ぶつけてんの……今も必死に葉っぱの下に潜りながらさ……』

 「なっ?!……まさか無理矢理食わせてないよな?」

 『……昨日全然食べなかったから、口元まで持っていった……』

 「薫。それは拷問だぞ……」

 『確かに……』

 何かの映画で見た事あるぞ?
 無理矢理食わせる拷問のヤツ。
 怖いわぁ……

 「今は食わせない方がいいだろ。少し様子見とけ」

 『でも、そろそろサナギになるから、たくさん食べないと……こんなに動き回ってるし…』

 「そっか……サナギになれる環境作ったか?」

 『うん。一応、石とか登れそうな木とか入れたよ……でも全然上に登らないんだよ……』

 「そっか……青虫がサナギになるのに、登って体を糸でくっ付けとくもんなぁ……なぁ薫、スズメガもサナギなのか?繭じゃなくて?」

 『多分そうだと思うんだけど……』

 サナギか……サナギ……
 思えば、カブトムシやクワガタだってサナギだな。
 偏見は良くないな。
 ……アイツら土の中でサナギになるな。

 「なぁ、試しに土入れてみたらどうだ?」

 『土……あっ!そっか!土タイプかもしれないもんね!』

 「土タイプって、○ケモンみたいだな。まぁ試してみろ?当たりかもしれないぞ」

 『うん!じゃっ!!』

 すぐ行動してるだろうな……
 てか、中島が不憫過ぎる。
 脱皮前も食わなくなって、ガサガサしてた……てゆーか、アクロバティックな体勢?だったもんな……
 生き物飼う時は、勉強してからかおうよ。
 ほんと、心底パニックに陥るから。
 何も知らないのが怖い。
 ほんと、すぐ調べものができる、便利な世の中にならんかねぇ……



 ……その希望が叶うのは5、6年先の未来だった……
 

 
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

プラカーシュの首

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

ちゃんと、幸を思っているのです!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

貧乏から貧困、その先。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

人はじゃがいも、社会はじゃがいも畑

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

Magical girl (male) who controls emotion

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...