中島と暮らした10日間

だんご

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43 旅行に行こう

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 ……午前6時起床。
 準備して、荷物を持ち、6時半出発。
 咲ちゃんと待ち合わせの駅まで移動だ。
 離れたお互いの調度真ん中位で待ち合わせだ。

 今回、咲ちゃんは始発電車で来るから、だいたい8時半には着く。
 自分は車でその時間を目安に移動だ。
 ジャストタイムで設定したつもりだけど、一応高速を使うか。
 不測の事態が起きると困るし。
 何か夕べの金縛りが残っていて、ウダウダしそうだから、高速道路に集中したい気持ちでいっぱいだから。

 よし。
 ドライブ曲もかけて行こうか。
 洋楽で「ポゥッ!!」とか言いつつ行こう。
 ノリ良く行こう。
 もぅポゥポゥ連発して進むよ?
 怖いなぁ~な曲だって、歌って行こう!
 恐怖の夜を吹っ飛ばすよ?
 陽気に歌うよ?
 はい、出発っ!

 窓を開けていたら『ポゥポゥ』叫んでいる変人だと思われた事だろう。
 ふはははは。
 冬だから問題なし。
 誰に聞こえるかね?
 冬だぜ?
 雪がチラつく季節ですぜ?
 ロマンスが歌われる季節に窓なんか……

 …………

 あ~……
 タバコ吸ってる助手席の人が……
 『信じられない!』な顔しながら遠退いたなぁ~……
 追い越し車線側を走ってる人なら……
 気付かれるかぁ……
 
 「ポゥ……」

 ほら。
 ポゥの勢い落ちちゃったじゃん……

 衝撃的な瞬間を目撃した人の顔って、ああなるのな。
  『えっ?!』な顔でさ。
 ガッツリ見られたわ。
 なんかゴリッと削られた気分。
 うん。
 大人しく函館のグループに切り換えよう。
 聖地巡礼する訳だし。
 やっぱりそっちにしよう。
 他の曲に手を出してごめんなさい。
 大人しく口ずさみます。
 本当に大人しく歌うだけなんで。
 出来れば、さっきの彼の記憶から自分を抹消して下さい……

 ……無理だよねぇ。

 しかも、大人しくしてられなかったし。
 ガンガン歌ってしまった。
 フロントガラスにビシビシ当たる雪。
 咲ちゃんとの距離が離れるかもしれない不安。
 ……ゆうべの金縛り。
 全て混ぜてグチャグチャな気持ち。
 一緒に歌うと泣きそうだ。
 激しく雪に打ち付けられながら、彼女との別れを歌う曲。
 
 ……いや、まだ別れてないから。
 まだ早いから。
 いや、別れると決まった訳でもないから。
 
 ……次、行ってみようか?

 1人ノリ突っ込みを繰り返しつつ、合流地点に到着。
 咲ちゃんが駅に着くまで、1時間はあるな。
 ならば、プランの見直しだ。
 朝御飯は2人揃ってから食べる予定だ。
 コンビニにするか否かは、その時決める。
 まぁ、オレンジのコンビニで美味しいおにぎりを買って、食べながらドライブするんだと思うけどね。
 
 ここからだと高速使っても5時間位か……
 昼ご飯に有名ハンバーガーショップかな?
 いや、焼き鳥弁当っていうのもあり?
 よく学生時代に聞いてたラジオでコマーシャルされてたヤツ。
 あまりにも頻繁に出て来てたから、食べたくて食べたくて……
 咲ちゃんも言ってたな。

 『1回は絶対食べたいっ!!じゅるりっ』

 って。
 自分達は、基本的に食べ物メインで出かけているからなぁ……
 『旨い』と噂の所に行ってみたい欲求に忠実に従っている感じだ。
 思えば学生時代から会話の内容が変わってないような……


 高校の同級生だった自分と咲ちゃん。
 高校時代は、お付き合いする事なく、普通の友達だった。
 座席が近く、ちょくちょく話をしたものだ。
 ……ほぼ購買のパンについて真剣に語り合ってた気がするが。
 
 『チャイムと同時に走っても、焼きそばパンが手に入らない……』

 『甘いわね。購買のおばちゃんとの親交を深めた私に不可能は無いわ』

 咲さんは、購買のおばちゃんとの仲を深めて、お取り置きして貰ってるらしい。
 順番も何もない購買のゴチャゴチャの中で『いつもの!』と叫ぶだけでパンは飛んで来るらしい。
 第3希望まで可能と言う事。

 『えっ?!咲さん、それ卑怯じゃない?』

 『チョコまみれパンを手に入れる為なら、その称号は甘んじて受けます』

 『じゃぁ、ついでに焼きそばパンも……』

 『そこは自身の努力に期待する事ね?』

 『甘党のくせに辛い……』

 『自分で掴みとるチョコまみれこそ、至高の1品だよ?焼きそばパンもしかり』

 『き……厳しい……』  

 思えば、社会の厳しさをそこで学んだきもする。
 いかに人心を把握する事が回り回って自身の為になるか……
 そこに真理があったのか……

 ささやか出来事も楽しい時間で……
 お互い違う大学に行ったけどバッタリ会ったんだったな。

 『咲さん、ここでバイト?』

 『そうそう。練習で食べ放題なの』

 ピザ屋だった。
 甘くなかった。
 甘党がいる場所じゃなかった事に衝撃を受けた。

 『ケーキ屋さんとかじゃないの?』

 『だってケーキ食べれないって……ここ、食べれるし』

 食べれるか食べれないかだった。
 動機が不純過ぎだった。

 『これ、試しに作ったけど食べてみて?』

 そして気付けば餌付けされてた……
 自分も動機が不純過ぎだった。

 「あ~……お付き合いのキッカケって、ピザだったなぁ……」

 美味しいピザで餌付けされ、いつの間にか一緒の時間も増えて……
 夜景を見に行った先で告白したんだよなぁ。

 『わぁ~……夜景が凄く綺麗だね!』

 『そうだねぇ……』

 『あのオレンジ色の灯り……イクラみたい……じゅる……』

 『……まるでイクラの宝石箱だぁ~……確かに』

 『あれだけ盛り盛りのイクラ……美味しいだろなぁ~……』

 『食べに行ってみる?』

 『えっ?行くっ!』

 『泊まりがけになるけど……?』

 『行くっ!』

 『あぁ~……まず、お付き合いして貰ってからで……』

 『あれ?今もお付き合いしてるでしょ?』

 『いや、あの、こ、恋人として……』

 『あっ……喜んでっ!! どこのイクラに行くの?』

 『あれ……?イクラの方が重要事項……?』

 『大丈夫。たけさんは、イクラよりも大好きですよw』

 『あぁ、うん、良かったよ……』

 『で、イクラなんだけど』

 あれ?
 記憶の蓋を開けてみたら、イクラしかないかも?
 あれ?
 咲ちゃん?
 自分の事、イクラ以上とは言ったけど?
 カニ未満じゃ無かろうか……?
 ……かなり不安。



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