中島と暮らした10日間

だんご

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45 美味しいが1番

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 「んっはぁ~っ!旨いっ!!」

 「咲ちゃん。内に潜んだオッサンが出て来てるよ?」

 「あっ、ズレてた?」

 「なぜヅラを直そうとするのかね?」

 「ほら、ササッと」

 「なぜ地毛がそんなに動くの?!」

 「結構動くよ?」

 「やっ、本当にヅラっぽいから辞めようか?!」

 主だった観光を終えて、現在居酒屋でくつろぎ中。
 咲ちゃんの一発芸を酒の肴にしております。
 
 「いやぁ~……流石に冬を感じたよねぇ」

 「だねぇ……耳ちぎれるかと思ったわ」

 お昼に待望のハンバーガーを食べ、ウロチョロし、ロープウェイで夜景を……
 の手前で吹雪ましてね?
 手袋とダウンだけじゃ生き延びれない事態になって。
 雪少ないからって、ちょっと舐めてた事を反省。
 慌てて耳当てや帽子を購入して、やっとロープウェイだぁ~……と思ったら、強風でしばらく停止。
 山の中腹辺りでずっとユラユラ煽られて来ましたよ。
 案の定、夜景はホワイトアウトでした☆

 「夜景見て『宝石箱やぁ~』って言ってみたかったよ……」

 「まぁね。でも生還出来た事を喜ぼうよ……」

 「まぁ、確かに。危うく遭難する所だったもんねぇ」

 2人で熱燗をチビチビしながら、しみじみとしてしまう。
 
 「生きてるって素晴らしいよ……」

 「生きてるってだけで美味しいよねぇ……あむっ」

 咲ちゃんが厚切りマグロを頬張る。
 ……食えるか食えないかか。

 「咲ちゃん、イカソーメン頼む?」

 「うん!」

 「地鶏も頼んでいい?」

 「勿論!」

 お刺身や煮物を食べながら、お酒が進む。
 あぁ美味しい~……
 旅先で美味しい思いする為に、ちょっと切り詰めて来たから、余計に沁みるわぁ……

 「やっぱりイカの鮮度が全然違うねぇ」

 必死にモキュモキュしながら食べてるなぁ。
 ……ハムスター的な生き物に近い気がする。
 モキュモキュしながらも、次の獲物はロックオンしているから面白い。
 ソッとマグロを差し出してみると『いいのっ?!』な顔をして……頷くとヒョイパク。

 ……面白い生き物だ。

 「……なんか観光って言ってたけど、ここに全てが揃っていそうで怖いねぇ」

 「……確かに。マグロもイカソーメンもあるからねぇ」

 ここでほぼミッション終了な気がしないでもない。

 「美味しいお酒もあるし……」

 「うん……」

 お酒もしっかり美味しい。
 新たに店を開拓する気が失せる程に。

 「スパニッシュ料理の店、気になってたんだけど……」

 「……うん」

 「刺身が1番満足かなぁ……って」

 「……うん」

 鮮度抜群の刺身は、それだけで最強でしたよ。

 「それにこの地鶏……パク……もうコレ美味し過ぎだわ……」

 「パク……だねぇ」

 散々飲み食いして、日付が変わる頃に外に出た。
 ほんのりちらつく雪が火照った身体にちょうどいい。

 「咲ちゃん、お腹は?」

 「かなり満腹だけど、シメのラーメンは食べたい!! 函館ラーメンっ!!」

 「あははははっ!行こうっ!」

 「了解っ!」

 どこまでも食欲が湧いて来る。
 まだもう1泊あるって言うのにねぇ。

 「たけさん……残したら、助けて?」

 「うん、わかったよ」

 こんな事言うけど、結局完食するの知ってるよ?
 『食べれたみたい!』って、信じられない顔するのが面白い。
 食べ過ぎて後悔するのわかっているのにね?
 ……本当に咲ちゃんといると楽しいな。

 「たけさん!席空いてるよぉ~」

 「咲ちゃん、速すぎだって」

 「ほらほらほらほら」

 「そんなに急いだら転『ズベシッ』……んだねぇ……」

 「タイルが滑ったよ……」

 あんまり笑うと悪いけど……
 思わず笑ってしまう。

 「もぅ……さっ行こう?」

 「はいはい」

 寒い空気に湯気で包まれた店がホッコリ浮いて見えたが、他のお店もそんな感じだ。
 ほんわかと温かく見える。
 

 函館ラーメン、塩で。
 あっさりとスルリと入ってくるよっ?!
 あんなに満腹だったはずなのにっ?!
 驚きだよ!
 それでいてコクがある……
 恐ろしい事に、すぐ完食してしまった。
 これを食べたんじゃ、馴染みの店付近のラーメンはもう無理だな。

 あそこの塩ラーメン『塩と湯で出来てます』って感じだもんなぁ……
 マスターなんか『海水使ってんじゃないかと疑ってる』って言ってたし。
 けど、シメにラーメン食べたいし。
 醤油たのんだら『まさに醤油汁だった』ってね。
 ダシを感じさせない、純粋な醤油汁。
 逆に怖い店だよ。
 せめてラードでも入れて貰いたい所だ。

 「……たけさん。食べれたみたい」

 「うん、良かった」

 咲ちゃんも完食。
 そうだと思ってたよ。
 けど、本当に旨かった。
 これなら、もう1杯食べても平気そう。
 いやいや、ご馳走さまでした。


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