中島と暮らした10日間

だんご

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目黒ですって

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 「兄ちゃん、東京土産持って来た!」

 「……また唐突に東京行って来たのか」

 今回は全てにおいて無事のようだ。
 薫も。
 自分の財布も。
 ……バナナの方か。
 ピヨピヨの方が好きだが、若干残酷なイメージがあるので、こっちの方がいいな。

 「んじゃ、茶淹れるから、お菓子開けといて」

 「了解!食べたかったんだよねぇ」

 ……兄ちゃんへの土産じゃなく、自分で食う事織込み済みだな?
 まぁ、いっか……

 「ホイ、お茶」

 「ありがとうぅ」

 ずずずずず……はぁ~……落ち着く。

 「んで?なんで東京に行ってたんだ?」

 「モグモグ……あれ見に行ったんだよ」

 「あれ?」

 「うん。寄生虫」

 「ぶふっ!」

 思わずお茶を吹き出してしまった。

 「汚いなぁ~」

 「おまっ……仕方ないだろっ?!」

 いきなり寄生虫とか言われたら吹くだろ?
 薫の事だから、ソレ系を育てたいとか言い出しそうだし……ってマサカ?
 自分の手にあるバナナ菓子をジトリと見てしまった。

 「どうしたの?兄ちゃん?」

 「……まさか、コレに仕込んでないよな?」

 「……ナニを?」

 「……寄生虫」

 「…………あはははは☆まっさかぁ~」

 「今の間が怪しい」

 「いや、それもアリだったかと思って☆」

 「っ?!って事は、何かやったのかっ?!」

 「いや、今回は何にもしてないから」

 今回は。
 過去を振り返れば様々な悪行の数々が走馬灯の様に流れるよ。

 「ただ博物館を見て来ただけだよ?専門の所だったから、面白かったんだ」

 「ほっ……そうだったんだな」

 「確かに、自分でサナダムシとか育ててみようかな?ってチラッと考えたんだけどね?」

 「やめろよ、そういうの……」

 「いや、やめたよ?食費とか診療代の事考えて」

 「お前の健康の事だけを考えろよ……」

 なんで食費?
 そりゃいくら食っても腹が減るから?
 診療代?
 虫下し貰うだけだろ?!
 どんだけ長くなるまで育てる気だったのか…… 

 「兄ちゃん、そっちのタイプも苦手だわぁ」

 「うにょうにょ系ね」

 「だな……ああいうの、心の底から無理って叫びたい位に苦手だな」

 本当に無理。
 うにょらーは本当に駄目。
 力加減わからず潰しそうだし。
 もう、本当に無理。

 「けど蝶とか蛾とかは平気だよね?」

 「あぁ。あれは硬さがあるから平気だな」

 掴む所があるのは平気。

 「変なの」

 「変わってる所は人それぞれだろ?」

 「まぁねぇ」

 自分から見たら、薫の方が変人なんだから……いや、万人が思う事かもしれない?

 「まぁ、あれだ。今回は妙な事も無くて良かったよ」

 「妙なって酷いなぁ~」

 「だってさ?前回は中島もいて、かなり大変だったんだぞ?」

 「中島、可愛いヤツだったなぁ……」

 「……兄ちゃんには、可哀相なヤツに見えてたがな」

 「兄ちゃん、なんだかんだ言って、中島の事可愛がってたじゃん?」

 「仕方なく面倒見てただけだし?」

 「ツンデレ?」

 「デレは皆無だが?」

 「ちぇ~……」

 「まぁ今回は生き物関係が無くてホッとしたよ」

 心底ホッとしたね。
 これで何か出たら、死ねるよ?
 ショック死。
 間違いないね。

 「あっ……忘れてた。いるよ?いるいる」

 「えっ……」

 ……マジかよ。
 ナニ持って帰って来たの?
 えっ?えっ?
 まさか?
 まさかの寄生虫っ?!
 うわっ無理っ!!
 無理無理無理無理無理無理無理っ!!
 薫っ?!
 お前、何て事しでかしてんのっ?!

 「紹介します!『目黒』です!!」

 ……またそんな名前つけて。

 「ん?えっ?目黒?何コレ?蝉?いや、蜂?」

 「スズメガだよ?」

 「はぁっ?! コレが蛾なのかっ?!」

 見た目は全然蛾に見えない。
 羽は透明だし。
 おしりには黄色と黒のフワフワがある……若干海老みたいな形の尻尾?みたいだ。
 頭と背中の方も薄い黄緑で目の回りが白く縁取りされている。
 どこが『目黒』だね?
 お腹の方も白い。
 そして全体的にコロンとしている。
 ちょっとお洒落な蝉か蜂にしか見えない。
 しかもコレ。
 蝶にしか無いと思っていたコレがある。

 「ちょっと薫ぃ?ストローついてるけど?」

 花の蜜を吸う為のクルクルストローがある。

 「花の蜜吸ってるみたいだよ?ホバリングして吸ってたし」

 「ホバリングっ?!」

 「ハチドリみたいだったよ?ぶぅ~んって。思わず捕まえちゃったよねぇ」

 ……目黒、不憫な子。

 「目黒は『オオスカシバ』っていうスズメガの一種なんだって」

 「スズメガ、幅広いなぁ……」

 「羽化したてだと鱗粉がついてて、羽は真っ白らしいよ?」

 「へ~……なんか、可愛いなぁ……」

 「でしょでしょ?妖精みたいで可愛いんだよ?」

 あっ……良かった。
 薫も妖精は可愛いって感性がしっかりあったわ。

 「フワッとした所を網でとるの!」

 妖精狩りっ?!
 ヤベェ、妖精狩りだ!
 逃げてっ!妖精さんっ!

 「けど、さすがは本州だな。こっちにはいない昆虫が普通にいるんだもんなぁ……ホバリングするってなぁ。驚きだわ」

 「だよねぇ……あっ、でも、こっちにもホバリングするのいるみたいだよ?」

 「そうなのか?」

 「ホシホウジャクってヤツ」

 「へぇ~……見た事あるかなぁ?」

 「普通にぶぅ~ん言うから蜂と間違っているのかもね。止まっている時は茶色いから、まんま蛾だし」

 「あっ、なるほどな。そりゃわからんわ」

 「羽を広げると黄色が見えるんだって。蜂に擬態してるって聞いたよ?」

 「へぇ~……どこで聞いたんだ?」

 「目黒の博物館」

 「えっ?」

 「『目黒』を捕まえた時に色々聞いたんだ」

 「……持って帰って来て、良かったのか?」

 「生態系が狂ったら困るから、逃がさない事、お墓を作って埋めない事って言われたかな?」

 「そっか……お世話になったのか……」

 「しっかりお礼言って来たよ?」

 「うん。そうか……」

 生き物と暮らすって難しい事なんだな。

 「兄ちゃん、見て!飛ばしてみた!」

 「はぁっ?!」

 今、しみじみと回想しようと思ってたのにぃ?!
 ちょ、ちょっと?!
 目茶苦茶速いんだけど?!
 
 ……その日、目黒が花に近寄るまで2人で網を振り回し続けた。
 後日、目黒のトップスピードが時速50km程もあると聞いて、遠い目をしてしまったのは……別のお話。


 
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