1 / 65
1 ツアーに参加
しおりを挟む
『今度一緒に、パワースポット巡りに参加してみませんか?』
と。
会社の後輩から誘われていた。
忙しい時期も過ぎ、若干落ち着いて来たから、せっかくなので行ってみよう!
張り切って予約したものの、後輩は急な呼び出しで出張するはめになってしまったのだ。
『……パワースポットで御利益得てないからかなぁ……この出張……』
ぶつぶつと言い出したから、次の機会にしようかと話をするが、
『前金返って来ないんですよ……せめて先輩だけでも御利益貰って来てくださいよぉ……』
メソメソし出した後輩。
彼女が欲しいだのなんだのかんだの。
了解したから、メソメソグチグチを止めてくれ……また後輩の愚痴飲みに付き合わされるなんて、たまったもんじゃない。
何とか後輩を浮上させといた。
……けどな、最初も男2人の参加で肩身狭いなぁ~って考えてたけども。
実際、男1人で参加してみると……
ポツン
……浮いている。
オッサンが1人。
周りから、かなりの勢いで浮いているのだ。
ほぼ女性同士のグループかペア……カップルもチラホラいる中に、ボッチのオジサン。
涙が出そうだ。
……色々な事に負けないパワーが欲しい所です。
出来れば、即効性のある物が嬉しいです。
時折、こちらに向かってヒソヒソクスクスされると、地味に精神が削られて行くのだが……
パワースポットの御利益は、これを乗り越えたら得られるのだろうか?
かなりの苦行である。
「御次に向かいますのは、【聖龍の滝】です。【聖龍】の【聖】はヒジリ、セイントの字を書きます」
……聞いた事のない滝だ。
【青龍の滝】なら知っているんだが?
そちらの滝は知らない。
新しく造られた名称なのだろうか?
「こちらの滝は、地元でもほとんど知られておらず、近年荒廃する寺院を復元した事で発見されたと言うお話です」
地元の人達が知らないって、凄い話じゃないのか?
廃れてしまった寺の敷地でも、普通は入ってしまうもんだろ?
……いや、神域として入らない事もあるか?
もしくは祟り系。
そこ、入っていいのか?
「ひっそりと奥まった場所となりますが、澄んだ空気に滝から響く音は心が洗われ、滝壺は光の加減か青く、悪い物が吸い込まれる様だと言われています。清らかで神秘的な風景です」
……悪い物が吸い込まれるって、人まるごと吸い込まれるヤツ?
あれだ。
自殺の名所的なヤツだ。
奥まった場所、滝、滝壺。
事件も起きそうなヤツだ。
パワースポットで御利益じゃなく、背後に影をくっつけて帰るパターンっぽいぞ?
心霊ツアーじゃないのだろうか……?
「こちらはかなりの御利益があるそうで、前回参加された方のなかには、宝くじの高額当選をされた方がいるとかいないとか……」
……かけてもいい。
絶対に、いない。
……が、周りの目の色が変わったなぁ。
人間の欲は怖いもんだわ。
「ここで自由時間となりますが、滝に近寄ったり、水に入ったりしない様にお願いします。普通に危険です」
普通に危険って説明あるの?
最近はそんな説明でOK出ちゃうの?
……まぁ入らないけども。
自由時間か。
少し散策してもいいかもしれないが……
いかんせん祟りがチラついて、大胆に散策へ乗り出せない。
「すいません……こちらは地元の方々も来られない神聖な場所だったりはないのでしょうか?そこを勝手に歩き回るのはどうなのでしょうか……?」
おぉ……自分と同じ事考えている人がいたよ!
添乗員さんに質問してる。
どれどれ、一緒に聞かせて貰おうか。
同じ考えの人間がワラワラ集まっていく。
……だよね。
みんな同じ事考えるよね。
「あっ、そうですよね?心配になりますよね。説明が不足して申し訳ありません。地元の方々なんですが、住んでいらっしゃる方々は、こちら側の山は大昔、御寺があった所だから、管理の人が来るまでは遠慮しようと言われていたそうです。特別な伝承とかは無かったそうなので、大丈夫ですよ」
そうなのか。
祟りとか不思議事件が起きていた訳でもないのか。
……いや、詳しくはわからないから、なんともいえないが。
「最近は地元の方々も、こちらを散策されているそうで、少し行った所に休憩できるスペースもありますよ」
……なら、大丈夫なのかな?
みんなも納得した様子で、バラバラと散っていった。
せっかく来たからな。
滝に近寄らずとも、マイナスイオンは吸って帰ろうか。
散策をしようとして、1回止まる。
こちら側を歩いて行くと、さっき先に行ったカップルがいるはず。
歩くスピードは、こちらが上。
絶対に追い付いてしまう。
女性グループの方も同じ。
1人ボッチのオジサンが背後から来たら、どう思うだろうか?
ちょっとしたホラー体験になりはしないだろうか?
……それが自分の心に耐えられる範囲ならいいのだが。
多分、無理。
ガラスのオジサンハートが割れてしまう。
もう少し、滝を眺めてから行く事にしよう。
と。
会社の後輩から誘われていた。
忙しい時期も過ぎ、若干落ち着いて来たから、せっかくなので行ってみよう!
張り切って予約したものの、後輩は急な呼び出しで出張するはめになってしまったのだ。
『……パワースポットで御利益得てないからかなぁ……この出張……』
ぶつぶつと言い出したから、次の機会にしようかと話をするが、
『前金返って来ないんですよ……せめて先輩だけでも御利益貰って来てくださいよぉ……』
メソメソし出した後輩。
彼女が欲しいだのなんだのかんだの。
了解したから、メソメソグチグチを止めてくれ……また後輩の愚痴飲みに付き合わされるなんて、たまったもんじゃない。
何とか後輩を浮上させといた。
……けどな、最初も男2人の参加で肩身狭いなぁ~って考えてたけども。
実際、男1人で参加してみると……
ポツン
……浮いている。
オッサンが1人。
周りから、かなりの勢いで浮いているのだ。
ほぼ女性同士のグループかペア……カップルもチラホラいる中に、ボッチのオジサン。
涙が出そうだ。
……色々な事に負けないパワーが欲しい所です。
出来れば、即効性のある物が嬉しいです。
時折、こちらに向かってヒソヒソクスクスされると、地味に精神が削られて行くのだが……
パワースポットの御利益は、これを乗り越えたら得られるのだろうか?
かなりの苦行である。
「御次に向かいますのは、【聖龍の滝】です。【聖龍】の【聖】はヒジリ、セイントの字を書きます」
……聞いた事のない滝だ。
【青龍の滝】なら知っているんだが?
そちらの滝は知らない。
新しく造られた名称なのだろうか?
「こちらの滝は、地元でもほとんど知られておらず、近年荒廃する寺院を復元した事で発見されたと言うお話です」
地元の人達が知らないって、凄い話じゃないのか?
廃れてしまった寺の敷地でも、普通は入ってしまうもんだろ?
……いや、神域として入らない事もあるか?
もしくは祟り系。
そこ、入っていいのか?
「ひっそりと奥まった場所となりますが、澄んだ空気に滝から響く音は心が洗われ、滝壺は光の加減か青く、悪い物が吸い込まれる様だと言われています。清らかで神秘的な風景です」
……悪い物が吸い込まれるって、人まるごと吸い込まれるヤツ?
あれだ。
自殺の名所的なヤツだ。
奥まった場所、滝、滝壺。
事件も起きそうなヤツだ。
パワースポットで御利益じゃなく、背後に影をくっつけて帰るパターンっぽいぞ?
心霊ツアーじゃないのだろうか……?
「こちらはかなりの御利益があるそうで、前回参加された方のなかには、宝くじの高額当選をされた方がいるとかいないとか……」
……かけてもいい。
絶対に、いない。
……が、周りの目の色が変わったなぁ。
人間の欲は怖いもんだわ。
「ここで自由時間となりますが、滝に近寄ったり、水に入ったりしない様にお願いします。普通に危険です」
普通に危険って説明あるの?
最近はそんな説明でOK出ちゃうの?
……まぁ入らないけども。
自由時間か。
少し散策してもいいかもしれないが……
いかんせん祟りがチラついて、大胆に散策へ乗り出せない。
「すいません……こちらは地元の方々も来られない神聖な場所だったりはないのでしょうか?そこを勝手に歩き回るのはどうなのでしょうか……?」
おぉ……自分と同じ事考えている人がいたよ!
添乗員さんに質問してる。
どれどれ、一緒に聞かせて貰おうか。
同じ考えの人間がワラワラ集まっていく。
……だよね。
みんな同じ事考えるよね。
「あっ、そうですよね?心配になりますよね。説明が不足して申し訳ありません。地元の方々なんですが、住んでいらっしゃる方々は、こちら側の山は大昔、御寺があった所だから、管理の人が来るまでは遠慮しようと言われていたそうです。特別な伝承とかは無かったそうなので、大丈夫ですよ」
そうなのか。
祟りとか不思議事件が起きていた訳でもないのか。
……いや、詳しくはわからないから、なんともいえないが。
「最近は地元の方々も、こちらを散策されているそうで、少し行った所に休憩できるスペースもありますよ」
……なら、大丈夫なのかな?
みんなも納得した様子で、バラバラと散っていった。
せっかく来たからな。
滝に近寄らずとも、マイナスイオンは吸って帰ろうか。
散策をしようとして、1回止まる。
こちら側を歩いて行くと、さっき先に行ったカップルがいるはず。
歩くスピードは、こちらが上。
絶対に追い付いてしまう。
女性グループの方も同じ。
1人ボッチのオジサンが背後から来たら、どう思うだろうか?
ちょっとしたホラー体験になりはしないだろうか?
……それが自分の心に耐えられる範囲ならいいのだが。
多分、無理。
ガラスのオジサンハートが割れてしまう。
もう少し、滝を眺めてから行く事にしよう。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる