騙されて異世界へ

だんご

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12 笑わば笑え

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 【鑑定】
 名前    ビル
 種族    人族
 年齢    38歳
 職業    ギルド職員
 Lv        32
 スキル 【剣】【槍】【格闘】【解体】【鑑定】【アイテムボックス】
 魔法     【生活魔法】【火魔法(小)】

 スキンヘッドのガチムチマッチョ……
 ゴリゴリ戦えるじゃないか…… 
 スキルもいっぱい付いてるし。
 すげぇなギルド職員。

 「すまん。買い取りを頼む」

 「おぉ。癒やし草と痺れ草だな?」

 「あぁ~……聞こえてたか?」

 「まぁ、今時間は人も少ないからな。聞こえちまったな」

 「まぁ、どうって事ない話だけどな……」

 これ、変態行為とか働いてたら強制的に退場させられたヤツだな。
 紙一重、危なかったかぁ。
 とりあえず、オッサンズの前の台に【アイテムボックス】から直接出す。
 
 「少しでも足しにしないとなぁ……」

 「その様子じゃ、厄介事に巻き込またようだな?」

 「厄介なんてもんじゃねぇよ……たくっ、何度死にかけたか……」

 「痺れ草の手袋だけでも残って良かったじゃないか?」

 タバサも手袋つけて取ってたな……ビルも手袋つけ始めたし。
 手袋ないとヤバい草か。

 『※その認識でOKです』

 「それは、他のヤツからの御情けだよ……ありがたく頂いたさ……」

 「そいつは……だな。俺でも森で全裸を見つけたら、大笑……手を貸すからなぁ」

 「おい……本音が一瞬聞こえたぞ?もう少し優しくしてくれよ……」 

 「ふんっ……これも優しさだ」
 
 「だな……笑われた方が気が楽だからな」

 「だろ?俺って優しいなぁ~」

 「へ~へ~。お優しいこって……買い取り、少し色付けてくれないか?」

 「それはまた、別の話だな」
 
 「だよなぁ~……」

 ボロを出さない様な他愛無い話をしながら、ビルチェックを待つ。
 結構厳重チェックしてるな。
 1本ずつ見てるのな。
 癒やし草が1本銅貨2枚、痺れ草が1本銅貨3枚ってタバサが言ってたなぁ。
 タバサは、弓矢に痺れ草を使う事もあって、余れば売るとも言ってたな。
 一応、普段より丁寧に取ったと言っても、どうなるやら……
 
 「癒やし草が1本銅貨5枚、痺れ草が1本6枚で買い取れるな」
 
 「ホントか?」

 「ああ。丁寧に取られてるから、状態がすこぶるいいんだな」

 「助かるよ……ありがとう……」

 「いや、本当に良く取れてるんだよ。取ってすぐ【アイテムボックス】に入れたろ?鮮度が抜群なんだよ」

 「まぁ、それが俺の生活に直結だからな」

 「にしてもだ。ここに来る薬草の類いは殆どぐしゃぐしゃだぞ?それと比べると雲泥の差だ。錬金術師や薬師が専属で契約したがる位だぞ?」

 「おっ、おぉ……なんか照れるな……まぁ、痺れ草は、同行者の手柄だけどな」

 「しばらく採取中心だろ?コレ貸し出してやるから、またいいの頼むぞ?あと、予備の服、銅貨10枚でやるから着てこいよ」

 キュン。
 えっ?キュンと来るほど、いい奴じゃないかっ!!
 
 「なんだ……?どうした?」

 「いや、キュンとしたわ……」

 「……すまん。俺には女房が」

 「ないから。俺も好みは女だから……じゃなくて、俺、運が良かったみたいだな……ってな」

 「そんな目に会ってもか?」

 「あぁ。こんな目に会っても生きてたし。いい奴等に会えた……最強の運だろ?」

 「……そうか。すまんが、俺には女房が」

 「口説いてねぇからなっ?!……ったく、礼くらいいわせろよな……」

 「ふっ……馬車馬の如く働けばいいさ」

 「サラリとエゲツない事言いやがった……まぁ、ありがとう……な」
 
 オッサンズの爽やかな友情劇のやり取りを終えて、着替えてくる。
 ビルの古着だそうだが、デカいのでズボンの裾を折る事になった……早くブーツでも手に入れて、誤魔化したいな。
 なんか、オッサンの少年風味って痛い。
 目の毒的な組み合わせだ。

 「おぅ、着替えたか……早く靴、買える様になれよ?」

 「わざわざ言わんでも、自分が1番わかってるからな……?」

 「まぁ、強く生きろとしか言えんな」

 「わかったから……そろそろ本気で泣くぞ?」 

 「オッサンの本気泣きは……寒気がするな……」
 
 「世のオッサンが悲しむぞ?……ってか、そっちもオッサンだからな?」

 「だからだよ。キモいだろうが」

 「「…………」」

 「あ~……コレが今回の代金、銅貨85枚だ。服代10枚は引いといたぞ?」

 「あ~……すまん。助かったよ」

 「おぅ。また頼むわ。どうしても薬草系が足りなくなるからなぁ」

 「だよなぁ……まっ、微力ながら貢献してくから、期待しとけ」

 「おぅ」
 
 ここで、お互い手を上げて別れた。
 さて、金やマントの事もあるし、リック達でも探すか。 
 って、いないなぁ……帰ったのか?
 いや、さっきのでタバサにボコボコにされてる事も考えられるのか?
 とりあえず、誰かに聞いとくか。
 あっ、受付のララにでも……って対応中だな。
 キョロキョロしていると、階段からリック達が降りて来た。
 そう言えば、調査依頼って言ってたな。
 報告って事だな。
 
 「おっ、ソブル。買い取り終わったのか」

 「おう。お陰で、服も着れたぜ。2人には、感謝してるよ」

 「おっ……ヨカッタナ……」

 「言いたい事は、良くわかるが……目を見て言えよ?……タバサも?」

 2人して仲良く吹き出しやがった……

 「なんだよなんだよ……仲良しだなっ!ったく……」

 「いや、悪い……ズ、ズボンがブフッ!」

 「リック、男は誰しも心に少年がいるんだ。それが目に見える様になっただけだ」

 「ぶはっ!!」

 タバサが再度吹き出した。

 「フッ、俺の中の少年が、若干オッサンだったって事よ……」

 「やっ……やめてくれ……腹が……ぶふっ!」 

 どうやら2人共に笑い上戸らしいな。
 笑いの沸点が低いぞ?

 「あっ、そうだリック。しばらく金借りたままになるが、必ず返すからな?どこに返しに行けばいいか、教えておいてくれ。マントは、このまま返していいかな?」

 「「ぶはっ!!」」

 再び笑い始めたな……おいおい。

 「この……このタイミングで……」

 「酷いぞ……ソブル……」
 
 「そっちが酷いぞ?……食らえ、キメ顔!!︵キリリッ︶」

 「「ぶふぁっ!!」」

 余りに笑い過ぎて、2人共に膝をついてしまったな……
 こいつら真面目過ぎるからなぁ……
 だから、この歳まで焦れったい関係だったんだろうな。
 ん?
 なんだ、ララと対応中だった冒険者も震えてるな?
 被弾したか。
 どうやら、ここの連中は笑いの沸点が低いらしいな。
 ……俺が酷すぎるだけなのか?

 『※その認識でOKです』

 ……余裕で泣けそうだ。

 
 2人が落ち着いた所で、さっきの話。
 金は返せる時で構わないとの事。
 その気持ちがあるだけ嬉しいとも言われた。
 なんだよリック……いい奴過ぎるだろ。
 お前、悪いヤツに騙されないか心配になるレベルだぞ?
 と言えば、タバサがいるから大丈夫だと。

 「へいへい。ごちそうさまですよ~」

 「いや、そうだが、そうじゃなくてだな!」

 2人で真っ赤になって慌てんなって。
 俺が寂しさ噛み締めちゃうだろ?
 
 「あれか?ギルドに預けて置けばいいか?」
 
 「それでもいいんだが……ソブル、これから俺の家に来ないか?」

 「ん?タバサじゃなくて、俺か?」

 「いや、タバサも来るが……お前、泊まる所ないだろ?」

 「おいおい。俺が言う事じゃないが、今日会ったばっかの人間を泊めるの危ないぞ?リック、お前大丈夫か?」

 「タバサも大丈夫だって言ってるしな。俺もソブルは放っておけなくてな?」

 「リック……いい奴過ぎるぞ?けど、ありがたく泊まらせて頂くよ」

 「おう!まっ、遠慮しろよ?」

 「まかしとけ!夜は耳に詰め物しとくから、遠慮するなよ?」
 
 「「ばっ?!」」

 「……やっぱり邪魔か?」
 
 「そんなわけないからっ!」

 「そうだぞ、ソブル!むしろ助かるから!」

 「そうそう!助かるから!」
 
 あれか。距離感がわからなくなったパターンか。

 『※その認識でOKです』

 「いや、うん。何か、察した。お邪魔するぞ?」

 「「喜んでっ!」」

 どこの居酒屋だよ……


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