騙されて異世界へ

だんご

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33 驚くって。マジで

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 ひとしきり買い出しをして、雑貨屋に寄る。
 入店の声を掛けるが、店主が奥に引っ込んでるから、仕上げはまだらしい。
 そりゃ、いくら縫うのが早いったって手縫いだからな?
 疲れもするだろうさ。
 なら、店の中でも見て回るか。

 アクセサリー系が結構あるな。
 みんな武骨なイメージだったから、リボンやらアクセサリーの需要が無いのかと思ってたが……

 水晶系の石が付いてるのは前の世界と同じ様なもんだな。
 値段は高い物で銀貨2枚位か。
 それ以上だと売れないんだろうな。

 金属系の物は錫か?
 鋳金ってやつだな。
 結構いい細工が施されてるな。
 植物のモチーフと抽象的な物っぽいな。

 リボン系はシンプルな物、刺繍がされた物、レースの物があるな。
 うん。やっぱりレース系が高いのか。 
 ん?いや、細かい刺繍が入っている方が上回ってるな。

 ほうほう。
 ネックレス、イヤリング、ブレスレットにブローチ、リボン系がメインに見える所にあるのな。
 おっ、指輪なんかもあるのか。
 そりゃあるか。
 他の商品は……ハンカチや手拭い、布製のカバン。
 エプロンなんかもあるのか。
 リックのヤツにオススメだな。
 タバサにちょっとしたプレゼントをするなら、この辺りで探せばいいさ。
 ガッチリした物は、残念ながらお高い店で探して貰うしかないがな。

 あっ……あれは白粉か?
 って、この合せ器に入ってるのが練り口紅。
 色の種類はあるが、化粧の種類はなし。と。 
 ほうほう。
 これは、異世界人からの知識も欲しくなるよな。
 もし化粧をバリっとした人間が来てご覧なさいよ。
 世の御婦人の目がギラギラになってしまうでしょうな。

 俺の職場でも、女子社員の化粧品話が凄かったぞ?
 話してる内容なんか、半分もわからねぇの。
 なのに俺に同意を求めるってどう言う事?
 俺、化粧詳しい様に見えんのか?
 いかにもオッサンなのに、女装でも趣味にしてそうとか?
 本気で考え込んじまったぞ?

 まぁ、アレだ。
 衣服系でも品質が高くて驚く所に、化粧。
 持ち物も漁れば、驚きの品々。
 しかもチートなスキルもワンサカあるとなれば……
 異世界人、狩られるわな。
 怖いわぁ……
 俺、スライムに突撃してよかったわぁ。
 死にかけたけども。
 社会的にも死にかけたけども。
 色々あって、今も生きてます。
 ……何いってんだ?俺。

 「おい。そこの不審者」

 「誰が不審者だ!」

 いきなりの不審者扱いに、思わず言い返しながら振り向く。
 すると、場違い感半端ない人間が立っていた。

 「んだよ、ビル。お前こそ激しく場違いじゃねぇかよ!」

 「俺は、いいんだよ!」

 「なんでだよ!」

 スキンヘッドの強面ガチムチゴリマッチョが居ていい店じゃねぇぞ? 
 まぁ、確かに俺みたいなオッサンが居ていい店でもないが。

 『※その認識(プツッ)』

 ……。そんなもんよ。

 「ここ、俺んちだし」

 「は?」

 「嫁さんの店だし」

 「は?」

 「普通に帰宅しただけだ」

 「は?」

 は?
 情報が頭に入って来ないんだが?
 は?
 ビルの家?
 嫁さん?
 嫁さんって何だっけ?
 あれ?
 ビルって仲間じゃ無かったっけ?
 嫁さんの件、冗談じゃ無かった?
 あれ?
 なんか目から水出て来そう……

 「まさか本気で俺に惚れてたのか?」

 「んな訳あるかっ!嫁さんいるの冗談だと思って、勝手に仲間だって安心してたんだよっ!裏切り者めっ!」

 「そんなのお前の勝手だろうがっ!?」

 「その通りだよっ!ちくしょうっ!……けどな、俺にはキナコが居るからな。キナコさえ居れば、嫁さんなんて……嫁さんなんて……グスンッ」

 「いや……まぁ……すまん?」

 つい本音が出てしまった。
 羨ましいって。
 でも、俺にはキナコが居るから。
 キナコが居るんだからな?
 くっ、寂しくなんかないやい。

 「いや、すまん。何か泣けてきただけだ」

 「お、おう。しかし、何でお前がうちに来たんだ?白粉なんか見て……やっぱりソッチ系か?」

 「ソッチってどっちだよっ?! しかも、やっぱりって酷いぞ?! 俺をどんな目で見てんだよっ!」

 「いや、冗談だよ。で?」

 「キナコの品が欲しくてな?そんで来たんだ」

 「あぁん?白粉をか?」

 「いや、違うし。店主に抱っこ紐を作って貰える様でな?時間空けてから来たんだけど、声掛けても出て来ないもんだからよ?適当に店の中見てたんだ」

 声掛けても出て来ないし。
 邪魔しちゃ悪いだろうし。
 俺が側に行ってビックリさせたら、刺されるかもしれないだろ?
 怖えんだよ。

 「そうなのか?なら、ちょっと見てくるぞ?」

 「頼む。中に入るのは、ちょっと気が引けてな……」

 「まぁ、そうだな。ボコボコにされたら困るもんな……」

 「やっぱりか……」

 「お前の感は正しいぞ」

 「何が正しいんだって?」

 「「ヒュッ?!」」

 店の奥から響いた声に、俺とビルは同時に真顔で息を飲んだ。
 やっちまった。
 地雷を踏み抜いちまった。
 怖っ。
 何か、負のオーラが漂って来るんだが?!
 ラスボス感が半端ない。
 ビルは……真顔が蒼くなって来てるんだがっ?!
 やっぱり怖いのかっ?!
 強いのかっ?!
 恐妻っ?! 

 「ビ……ビルが奥さんに、ベタ惚れって話だ……」

 「なっ?! ソブルッ?!」

 「……そんな話だったのかい?」

 ビルの顔が、蒼白から朱に変わって行く。
 俺、命大事に派だから。

 「そんな話、ビルは直接しないのか?」

 「ソッ……ソブルッ‼」

 ビルが茹でダコだな。
 そろそろ湯気でも上がるんじゃないだろうか?
 心配するな、ビル。
 ここからは、ガンガン行こうぜ!に変えて行くから。

 「見ての通り、不器用な人なんだよ。この人は。ベタ惚れの要素をこれっぽっちも匂わせないんだから」

 「そうなのか?……見ての通り、ベタ惚れみたいだぞ?」

 うん?
 どうしたんだ?
 ビルが陸に揚げられた魚みたいな口になってるぞ?
 肺呼吸忘れたのか?

 「ぶふっ……いやぁ、あたし、愛されてるのかねぇ?」

 「なっ、なっ、なっ……」

 「おい、ビル。奥さんに愛を伝えるのは、旦那の使命だぞ?不安にさせてると、逃げられるぞ?」

 「ソッ…ソッ…ソッ…」

 「そう言えば、あんたの口からハッキリ愛してる……なんて、言われた事は無かったねぇ」

 「なっ……?!」

 ビルが慌てとる、慌てとる。
 普段ニヒルなビルに、一撃食らわせた感じだな。
 こりゃ、ビルの弱点発見だな。

 「ほら、ビル。言っちゃえよ。直接さ。俺、ちょっと店の外にいるからよ?」

 「ソブルッ?!」

 気を利かせた俺は、キナコに振動を与えない様に、 そそくさと外に出た。
 案外イケるな、生け贄作戦。
 お陰で逃げ切れたぜ。
 長く掛かりそうだしな。
 帰ってしまった方がいいだろうな。

 窓から中を覗くと、ビルが百面相をしてるな。
 奥さんと目が合ったから、ジェスチャーで帰ると伝えると、苦笑いをして手を振ってくれた。
 こちらも振り返し、広場へ向かう。
 今日はきっとラブラブでしょうなー。
 羨ましいですなー。
 明日はこのネタをビルにすればいいな。
 ふはははは。
 ビルの焦る顔が目に浮かぶぜ。

 串焼き屋台の店主に、普通の串2本と、お猫様専用串2本頼んだ。
 いや、いつの間にか『お猫様専用串』ってのが出来ててビックリだ。
 商品にした方が、猫好きには売り付け易いからって事らしい。
 異世界の意識改革だな。
 俺も出来るだけ毎日買って、貢献して行こうと思う。
 こりゃあ、稼ぎ続けないとならんな。
 
 
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