騙されて異世界へ

だんご

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36 漁夫之利?

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 薬草採取。
 キナコに教えたのは、癒やし草と痺れ草。
 その取り方と扱い方法。
 賢いキナコは理解したらしい。
 凄いぞキナコ。

 「おつ!これは、新しいヤツだ!」

 「にゃっ!」

 ちょっと森?林?が開けた場所。
 日光が届き易い所に、それはあった。

 【月追い草】
 ・花粉は強い眠気を誘う。薬の材料にもなる。

 睡眠導入剤の原料ってヤツだな。
 てゆーか、風に花粉が乗っていったらアウトなパターンじゃね?
 ここ、何本か映えてるけど……
 死の揺り籠ってヤツじゃね?
 来たら危ない場所じゃね?

 『※その認識でOKです』

 「うっわぁ……キナコ。この花の花粉は、強い眠気を誘うんだってよ。吸わない様に気をつけろよ?ちょっと抱っこ紐の方に避難してろ?」

 「にゃっ!」

 抱っこ紐に重みを感じたので、採取しますか。
 見た目は真っ直ぐに伸びた、鞠の様な丸い菊みたいだ。
 葉っぱ……いや、ガクだな。
 花を多数のガクで包み込む様に咲いているな。
 これ、どうすんの?
 花粉だけあつめんの?
 違うのか。

 花が付いてる部分を切り取るのか?

 『※その認識でOKです』

 切り取ってそのままギルドに出しても?
 駄目か。

 袋に入れるのか?

 『※その認識でOKです』

 ……了解。

 「キナコ。これは、花部分を切り取って袋に入れて行くやつらしいぞ」

 「にゃ」

 確かサービスで貰った巾着があったな。
 在庫処分だなんて思って、スマン。
 早速出番だ。
 なるべく花粉をバラ撒かない様に巾着を近付けてカットする。
 キングスライムに突撃しても無事だったから、それなりに色々な耐性とかあるんだろうが……
 イマイチ仮神を信用しきれないからな。
 絶対、力の過信はしないでおく。
 命大事に!だ。

 そろ~り、そろ~り採り続けて……結構な量が集まった。
 初めてのヤツだから、幾らになるかわからない。
 一応、いつもの薬草も探さないと安心できんな。
 最近、いいペースで出費がかさんでるし……
 まぁ、それとは反比例して満足度が上がってるから、良いっちゃ良いだが。
 今後の事を考えると、何か考えないとならないなぁ。

 「にゃっ!にゃっ!にゃんっ!」

 「うわっ?! どうした?! 」 

 「にゃっ!にゃっ!」

 キナコがいきなり頭に駆け上がり、片手を突き出してデコをペシペシ叩いてくる。

 「あっちに行けって事か?」
 
 「にゃんっ‼ 」

 「危なくないか?」

 ペシペシペシペシ……痛くないが、幸せ度合いが上限突破してスーハーしたくなるからヤバいな。
 叩かれても、煩悩は消える事なく。
 積もる事、山の如く……
 ダメだ。
 ダメだな俺。
 キナコ大事に!命大事に!ついでにお金大事に!
 よしっ。
 気合入ったわ。
 動く為の気合入った。
 切り替えて行こう。

 「わかったよ。危険を察知したら、即逃げるからな?」  

 「にゃんっ!」

 キナコを抱っこ紐に戻し、そっと進む。
 そっと、そ~っと……

 「くるる」

 「急げってか?」

 「にゃん」

 「……ごめん」

 「にゃっ」

 「……はい」

 キナコに怒られ、足を早める。
 ハッキリ言って、訳がわからない。
 キナコに急がされてるが、何があるのか、何故なのか……
 ……はっ‼
 あれか?!
 飼い主に危機的何かを伝えてるってヤツか?!
 本能……いや、野生の勘……そうだ‼【野生の勘】!!
 キナコのスキルにあったな!!
 キナコすげぇな!
 うちの子万能過ぎやしませんか?!
 
 「くるる!」

 「はい。スミマセン」 

 何かを察っして、怒られた。
 これは前の世界でも同じ……
 ……アレ?
 キナコ、前からスキル持ってたのか?
 すげぇな。

 「くるる」

 デコに爪を立てられ、グッと食い込んでくる。
 条件反射で謝ろうとして、慌てて口を閉じる。
 ……ナニ アレ ?

 「フスンッ」
 
 『どうよっ?』ってドヤ顔……可愛い。
 けどな、キナコ。
 なんだい? アレは?
 どう見ても『死の揺り籠』が発動してるんだが?

 さっきの、ちょっと開けた所から、小さい公園程度の広さになった。
 月追い草は、日当たりの多い場所を好むらしい。
 しかも、時折吹き込む風に花粉は舞い上がっている。
 目視できる程、濃厚に。
 さらに、風の加減か立地のせいか、花粉がこの場所に停滞している。
 ってか、渦巻いている。
 『死の揺り籠』発動中……怖っ!!

 さらにさらに、恐怖を誘う現場に彩りを添える光景が……

 【角兎】
 ・昏睡状態。その脚力を使い、角で突いてくる。
    肉は臭みがなく、柔らかい。脂味は少ないが淡白  
    で美味しい。

 あっ、食えるのか……
 ジビエにもあったな。
 ……この世界、ほとんどジビエだがな。

 【魔狐】
 ・昏睡状態。個体により、様々な魔法を使用する。
     核はそれぞれの個体により色、効果が違う。
     毛皮は手触りが良い。特に白・黒色は珍しく価値
     は高い。

 流石は異世界。
 狐だって、ファンタジー溢れている。
 まさか妖狐とかもいるのか?

 『※その認識(プツッ)』

 えっ?!
 いるの?! いないの?! どっち?! どっちなんだい?!

 『(プツッ)』 

 えっ?
 それは突っ込みなのか?!
 いや、気になるんだがっ?!

 【森ウルフ】
  ・昏睡状態。群れで狩りをする為、単体で居ても仲
      間を呼ぶ可能性が高い。牙に寄る噛み付きで獲物
      を窒息させるが、素早く爪も鋭い為、注意が必
      要。
      黒に近い緑色の毛皮。硬い手触りだが需要有り。 
      牙、爪は材料として需要有り。

 いや、まあ、ウルフだな。
 ただ、なんの材料か明確にしてないが……
 広範囲に使えるって事か?

 『※その認識でOKです』

 【ワイルドベア】
 ・昏睡状態。広範囲な縄張りを持ち、縄張りの主張
     が強い。体格の割りに素早く、鋭い爪と腕力で獲
     物を切り裂く。強靭な顎を持ち、岩をも噛み砕く
     程の威力がある。
     核を持ち【身体強化】している為、数人での討伐
     が望ましい。
     毛皮は硬くある程度の強度がある為、需要有り。
     骨、牙、爪は材料として需要有り。
     内臓は適切な処理を施せば需要有り。
     肉は臭みが強いが食用可。

 熊の魔物ねぇ……
 ファンタジーあるあるだよなぁ……
 ってか、食物連鎖感が半端ないな?!
 怖えよっ!!
 『死の揺り籠』なんて恐ろしい場所だ……

 しかし、考え様によってはラッキーだ。
 今の所、俺のステータスに状態異常は付いていない。
 勿論、キナコにも。
 と言う事は、戦わずして獲物が手に入ると言う事だ。
 キナコを抱えているが、敵は昏睡中。
 やるべきだ。

 「すまんが……俺達の糧になってくれ」

 覚悟を決めて、角兎の首に切り掛かる。
 事切れたのを確認し、手を合わせてから回収。
 念の為【消臭】をかける。
 魔狐、森ウルフ……と順番に回収。
 最後にワイルドベアな訳なんだが……
 複数で討伐しなきゃならんのだよな?
 
 『※その認識でOKです』

  俺の力だけで大丈夫なのか?
 
 『※…………………………です』

  えっ?なんて?聞こえ無かった……
 ってか、初めての反応なんだがっ?!
 さっきのもだけどっ?!
 どういう事っ?!
 下手したら危ないよって事?!

 『※その認識でOKです』

 ぐっ……
 一撃で決めなきゃならんって事か……

 『※その認識でOKです』

 ……ならば、やる事は決まったな。
 このまま、帰宅だ。

 「キナコ……こいつは危険らしいから、帰るぞ?」

 「にゃん」

 ワイルドベアが起きない様、月追い草には手をつけず退却した。
 キナコ大事に!命大事に!がモットーの俺にはデカ過ぎる獲物だ。

 町に向かう途中にあった癒やし草を10本前後回収して帰った。
 きっと今日は、良い稼ぎになったと思う。
 キナコと共に、ホクホクしながらギルドへ急ぐのだった。

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