騙されて異世界へ

だんご

文字の大きさ
56 / 65

56 淡々と

しおりを挟む
 隣の塔にバル◯ン設置してから、最初の塔の階段の掃除をした。
 2階から3階、屋上のドア手前まで。
 結構な量の廃棄物がありました。
 内容物はほぼアレだ。
 もう、多くは語るまい……
 階段を下りながら灯りを消して行く。
 こちらの塔は本日終了にさせて頂くよ……
 もうね……気力の問題。
 本当はあっちも止めたい所だけども。
 残しておいても餌になるだけだからな……

 「はぁ……このまま外にいたい……てゆーか帰りたい……」

 外に出ると澄んだ空気に、身も心も洗われる……
 空気美味しいぃ。
 風気持ちいぃ。
 猫吸いてぇ。

 動かなくなった自分の足に、何とか喝を入れて次の段階へ進む。
 ドアを開け、煙を追い出し、回収作業。
 ただそれだけの作業。
 ちょっと回収物に目をつぶれば、とっても単純なお仕事のはずなんだが……
 何故に塩漬けちょっと前な依頼になってるんだ?
 まぁ……イエナイだから嫌だってのもあるか。 
 あと、今の俺みたいにひたすら同じ動作に飽きがくるのかもな。
 永遠と続くイエナイお仕事。
 うん。
 嫌だ。
 本格的に嫌なお仕事だったわ。
 
 階段を上まで掃除して、3階の部屋にバル◯ンを放り込んで本日の仕事は終了です。
 だって、そろそろ夜なんだよ?
 夜の部まで初日に通したら、明日から死んじゃうよ?
 それに、キナコが家でションボリしてる姿が頭にチラついて……
 俺的には、もう限界なんだわ。

 一応門番役に本日は終了の報告をして帰宅。 
 門番達からの尊敬の眼差しがウザ過ぎてシンドい。
 微かに「ステキ……」と聞こえた声に全身鳥肌が出たが……
 聞こえない。
 聞こえないったら聞こえない。
 足早に帰宅。

 今日はリック達も遅くなるって話しだったから、串焼きを買って帰る予定だ。
 キナコも許してくれるだろう。
 多分。
 ……あやしいかもしれない。

 「キナコ~、ただいま~」
    
 ……あれ?
 キナコが駆け寄って来ない……だと?

 「キナコ~?」

 ……おかしい。
 前世(キナコの)だと感動の再会とばかりに飛び付いて来たキナコが来ない。
 まさかっ?!
 攫われたかっ?!
 いやっ、退屈で外にっ?!

 「キナコっ?!」

 慌てて家へ駆け込む。
 椅子の上、棚の隙間、台所の窯の中……
 隙間という隙間を探し回るが、キナコが居ない……

 「キナコっ?! キナコ~!!」

 あっ……デジャヴ……
 前世(キナコの)でもあったな……

 子猫時代のキナコ。
 仕事行く時、余りにも心配でケージに入れて留守番して貰ってたが。
 しっかり閉めたか確認しないで出た日だ。
 帰ったらケージが開け放たれていて。
 キナコがどこにも居なかったんだ。
 呼んでも出て来ないし、見渡しても居ない。
 目に付く隙間を探しまくっても居ない……
 お気に入りのおもちゃ、棒にポンポンと鈴、キラキラの長い吹き流し尾の付いた物と猫じゃらしを両手に持ち、ブンブン振り回しながらキナコを探す不審者になったっけ。
 ……キナコ、振り回しにじゃれつくから……つい。
 んで『窓もドアも閉まった密室からイリュージョンで外へ?!』って考えた時に出て来たんだよな……
 仕事のファイルの上の隙間から……
 しっかり寝てましたな顔で……

 今回もそれであってくれっ。
 子猫だしっ。 

 「キナコ~!」

 むっ?!
 俺の寝室の隙間が僅かに開いているっ?!

 「キナコ~!」

 いたっ!
 寝てたっ!
 枕の所で、うつ伏せ伸びの状態でっ!!
 可愛よっ!!
 何その体勢っ?!
 可愛いぃ!!
 子猫可愛いぃ!!
 キナコ可愛いぃ!!
 やべぇ、語録が死んだ。
 落ち着けぇ……落ち着け、俺。
 深呼吸……深呼吸だ……

 「はす、はす、はす……!!」

 何故っっっ?!
 深呼吸が出来ないだとっ?!

 「はす……はす……はぁ~……」

 はぁ……深呼吸、深呼吸……
 やべぇ、変態になる所だったわ……

 『※その認識(プツッ)』

 ……涙も出て来たな。
 やべぇ……キナコ可愛いぃ……

 起こすのが可哀想だが、余りにも可愛いのでソッとなでる。
 勿論【清浄】を全身にかけてから。
 変な菌やら何やらキナコに付けてたまるかっ!

 「んにゃ……?」

 起こしちゃったか……
 寝惚けたキナコも可愛いなぁ。

 「ただいま、キナコ」

 「にゃ……」

 むにゃむにゃしながら二度寝。
 可愛いいが過ぎるぞ!キナコ!
 やべぇ……なでる手を止められねぇ……

 その後、完全に覚醒したキナコにウザがられるまでなで回してしまったのは……
 仕方ない……よな?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...