騙されて異世界へ

だんご

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61 燃料投下

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 「なっ……何だよ。俺は気分を和ませようと」

 「リック……少し黙っとけよ。嫁からの評価が下がるぞ?」

 「「なっ?!」」

 リックが赤面して黙ったが、タバサにも流れ弾を浴びせてしまったな。
 まぁ、仲良く黙っとけよ。

 「何か面白い話は後でゆっくり聞かせて貰うとしてだ」

 「後でリックからでも聞いてくれや」

 頷いたビルが、大きめの溜息を吐いてから話し出した。

 「教会側に協力を頼もうと思うんだ」

 「教会か……少し面倒だな」

 「そうなんだよな……あんまり仲が良く無いところだからな。だがな?凄腕の除霊師がいるとなりゃ、仕方ないだろ?」

 「いるんだな。凄腕」

 「ああ。だだ、ちょっとばっかし虫系が……な?」

 「……何か聞いた事がある話だぞ?」

 「まぁ、多分それだ」

 じゃあ間違いないな。
 スミスさんの所だ。
 あの汚屋敷だ。
 てっきり、虫系が苦手なだけの自称除霊師かと思ってたよ。
 うわっ。
 って事は、あそこにって事?

 『※その認識でOKです』

 うわぁ……危なかったって事?

 危なくは無かったって事?

 『※その認識でOKです』

 えっ?それってどう言う事?
 わかんねぇよぉ~!!
 害の無い系の奴?

 害あんのかよっ!

 『※その認識でOKです』

 OKさんの出方がわからん……
 加わってくる仕様もわからん……
 若干、気分次第でOKしてるみたいな感じがビンビンする。

 『※(プツッ)』

 っっ?!
 やべぇ……確信犯ってヤツだ……

 『※(プツッ)』
 
 ……こいつぁ身の内に愉快犯を飼ってる様なもんだぜ。

 『※その認識(プツッ)』

 あぁぁ……はぁぁぁ……

 思わずソファに座りながら、ガッツリと頭を抱え込んだ。 
 何か視界もボヤケて来てるし。
 俺、多分、弄ばれてる……
 
 弄ばれてない?

 どっちなんだっ!コンチクショーっっ!!

 「おい、ソブル。大丈夫か?」

 あぁ……ビルと会話中だったわ。
 脳内バトルで酷い事なってたわ。

 「すまん……色々頭で考えて、わぁ~ってなったわ」

 ホント、わぁ~って。

 「いや、うん、まぁ。そうなるな……」

 違う方面でだけども。

 「あぁ、うん……」

 しょぼんとしてしまった。
 ついでにビルも。
 対面式のオッサンがしょぼん。
 そんな絵面は誰も求めて無いだろうが。

 「まぁ、終わった話だ。今回は早目に依頼出しておくから、虫系は頼むって事だ」

 「了解だ。ただ、伝声管が通ってるのが3階か屋上の櫓かわからんのだが……」

 「あぁ。あれは櫓に繋がってる方だと思うぞ。3階の部屋にも櫓からの伝声管があるはずだ。2階に直通のただの配管と蓋付きの伝声管だな」

 「丁寧な説明だな……」

 「入った記憶が無いって聞いてたからな。丁寧にしとくのが良いだろ?」

 「うわっ、会話まで報告に上がんのかよ……」

 見張り門番兵とのやり取り筒抜けじゃねぇか!

 「いや、噂程度だな。ほれ、嫁さんの店の話もあったしな?」

 嫁さん経由で『存在自体が気に食わない』話も広く知られていくのか。
 恐ろしいな。

 「ビルよ。娯楽がなさ過ぎるのは問題だと思うんだ」

 「その貴重な娯楽源には、頑張って貰いたい所だ」

 そんな、いい笑顔見せられても……

 「とりあえず、今回の件はギルド長に伝えておく。除霊師との連携は連絡つき次第だな。まっ、多分櫓までは安全なはずだから、引き続きよろしく頼む」

 「多分か……怖すぎるだろ……まぁ、塔内部は頑張ってやるさ。討ち洩らしがいるだろうしな……」

 リックの家で体験済みのイエナイ討ち洩らし。
 洩らしと言うか未討伐か?
 ハッキリ言って恐怖体験だ。
 言ってしまえば、彼奴等の力を見誤ったんだが……
 しっかりと討っておかなければ、酷い目に遭うのだ。
 一晩中【清浄】かけたのに、そっこらじゅぅ、煤とホコリだらけになっちゃうのよぉ。(アレな感じで)
 寒気がしてきたな。

 「あっと。そうだ、ビル。回収したイエナイ樽が、もう一杯でな?処分したいんだが、どうすればいい?もう、食材も入らなくなっちまってな……」

 「だろうな。相当だろ?空の樽も見張りから随時出せとは言ってるが、かなりの量になってるはずだもんな……」

 おぅ。
 ギリギリセーフの辺りか。
 回収量の制限が無いとバレたらヤバい所だったなぁ。
 俺って案外人から見張られてたんだなってのもわかったし。
 親切か、疑いか、娯楽か……色々な意味の注目を浴びている事を意識しとかなきゃならんな。

 「なら外壁の外の処理場だな。リック達に案内して貰うといい。リック達は今日空いてるんだろ?」

 「おっ、ありがたい。リック、頼むな?」

 「「はっ?!」」

 えっ?
 まだ黙ってたのか?
 
 「おいおい……妄想が暴走でもしてたのか?」

 「「んん?!」」

 「なんだ、図星かよ……」

 「いや、なんだ、ソブルの話は終わったのか?」

 タバサが聞いて無かったなんて、珍しく飛んだなぁ。

 「いや、2人に外壁の外の処理場に連れて行って貰いたいって話だよ」

 「んああ!そうか!外壁な!処理場な!」

 リックめ……顔を作り治したが、ニヤけてたな。

 「リック、子供は何人だった?」

 「男・男・女の3人だな!」

 「末っ子が女の子かぁ……さぞや可愛い事だろうなぁ?」

 「そうなんだよな。タバサにそっくりで可愛くてなぁ……はっ?!」

 「「ほほ~ん」」

 俺とビルはニヤニヤしながら、2人を交互に見ると。

 タバサは真っ赤になって固まり、リックはアワアワと言い訳を並べ……
 その後、30分程してからやっと部屋を出れたのだった。

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