太陽を継いだキミに

dlltdlls

文字の大きさ
9 / 16
二章 炎の英雄

第9話 夜に炎は踊る

しおりを挟む
 微睡むシリウス。
 そこに鎖に縛られた強靱な身体の男が居た。
「小僧、お前が太陽を継いだのか」
 火口の様な熱さを男は纏う。
「火の扱いすらなっちゃいないとは、嘆かわしい」
 男はシリウスに告げる。
「どけ、俺が出る」
 男の炎はシリウスの意識を飲み込んでいく。

 辺りは夜闇に包まれ、太鼓の音が鳴り響く。
 祭りはここから本番を迎える。
 夜は恐ろしい鬼がやって来る。
 松明に炎を灯した人々が鬼に抗う。
 今宵は導かれる様にして夜の軍勢が現われる。
 夜の女王だ。夜の女王がいる。
「我が仇、夜の女王よ。待っていろ、必ずお前の元に向かう」
 イフリートは軍勢に向かって進み出る。
「火を恐れよ」
 鬼は退く。
「炎は揺らめく」
 影の刃を潜り抜ける。
 イフリートも無傷では無い。
 傷を負いつつ、それでも彼は進む。
 火の粉を纏いて、女王の元に辿り着いたイフリート。
 夜の女王はイフリートに擦り寄った。
 彼女の冷たい手がイフリートの頬に触れる。
 彼女は命に触れていた。
「そうよ。私が夜を駆け、人を恐怖に陥れる者」
「人を死に連れて行き、永遠の眠りに誘う者よ」
「ああ、来たのね。イフリート」
「また、一緒に踊りましょう」
 恐ろしい鬼だ。恐ろしい夜だ。
 しかし火もまた、人が携えし自然の猛威なり。

 イフリートはかつて人に火を与えた。
 夜に立ち向かう為。寒さを凌ぐ為。人を笑顔にする為。
 太陽に見捨てられた者達をイフリートは救った。
 だが、それは神々の調和を乱す行為だった。
 代償としてイフリートは鎖に縛られる様になる。

 夜は滅びぬ。
 だが、その度に火を掲げて人は立ち上がる。

 イフリートは唱えた。
「よく見ていろ、シリウス」
「これが、俺だ」
「我、炎也」
 現れたのは火霊王。それは炎と一体化した英雄。
 火と化した神の身体は激しく、熱く、際限なく燃え盛る。
「うふふ、あはは、あっはっはっ!」
 対するは夜霊王。それは滅びぬ夜と化した一体の鬼。
 闇を剥ぎ取られて尚、夜の神は毅然と立ち塞がる。
「良いわ。夜よ、牙を向け」
 炎の爪と影の刃がぶつかり合う。
 辺り一帯を焼き、最後は地面に爪痕を残すかの様に、炎の傷跡が付いた。
「お前の事は忘れない。安らかに逝け」
 何度、夜に別れを告げたか。
 煤に塗れた女王を抱えてイフリートは丘を降りて行く。
 悲しそうに、優しそうに。
「あれが、炎……」
 その姿を火の民は見ていた。
 その背中はシリウスの眼に焼き付いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『床下に札束を隠す金髪悪女は、毎朝赤いマットの上で黒の下着姿で股を開く』〜ストレッチが、私の金脈〜

まさき
恋愛
毎朝六時。 黒の下着姿で、赤いヨガマットの上に脚を開く。 それが橘麗奈、二十八歳の朝の儀式。 ストレッチが終わったら、絨毯をめくる。 床下収納を開けて、封筒の束を確認する。 まだある。今日も、負けていない。 儚く見える目と、計算された貧しさで男の「守りたい」を引き出し、感情を売らずに金だけを回収してきた。 愛は演技。体は商売道具。金は成果。 ブリーチで傷んだ金髪も、柔らかく整えた体も、全部武器だ。 完璧だったはずの計算が、同じマンションに住む地味な男——青木奏の登場で、狂い始める。 奢らない。 触れない。 欲しがらない。 それでも、去らない。 武器が全部外れる相手に、麗奈は初めて「演じない自分」を見られてしまう。 赤いマットの上で、もう脚を開けなくなる朝が来るまでの話。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...