転生したのに女神がもやし栽培キットしかくれなかったので、無職即追放されましたが、育ててたら貴重品でした

ワイケー

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無職もやし神の分身(もやし二号)、英雄として祭り上げられるが本人は無言

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 もやし二号は、何もしていなかった。

 境界線の少し内側。
 石畳の上に立ち、風に葉っぱを揺らしているだけ。

 ただそれだけで――

「見ろ……」
「あれが……」
「白き守護者……!」

 人々が跪いていた。

「やめろォ!!」

 俺の叫びは、今日も届かない。

「英雄様だ!」
「神の右腕!」
「もやし神の化身!」

「だから違うって言ってんだろ!」

 だが噂は、事実より速い。

 もやし二号が境界で立っていた。
 → 王国騎士団が撤退した。
 → 血が流れていない。
 → つまり“完全勝利”。

 結果。

 英雄誕生。

 本人は無言。
 俺は頭痛。



 そして。

 やってくるのが――
 本物の勇者パーティーだ。

 王都サンクティア公認。
 神殿祝福付き。
 テンプレ通りの構成。

 剣の勇者。
 聖女。
 賢者。
 斥候。

 全員、自信満々。

「異端の神造物を討伐せよ、との勅命だ」

 勇者が、もやし二号を指差す。

「……あれ?」

 聖女が首を傾げた。

「思ったより……細い?」

「見た目に惑わされるな」

 賢者が眼鏡を押し上げる。

「神話級反応が……いや、測定不能?」

「討てばいいんだろ!」

 勇者、剣を抜く。

 その瞬間。

 もやし二号が、初めて動いた。



「……敵性行動、確認」

 淡々とした声。

 そして、一歩前進。

 地面が、波打つ。

 勇者の足が止まる。

「な……?」

 もやし二号、腕を上げる。

 殴らない。
 触れない。

 ただ、振り下ろす。

「【圧砕掌プレッシャー・クラッシュ】」

 空間が歪み、衝撃波が走る。

 勇者パーティー、全員吹き飛ぶ。

「ぐぁっ!?」
「防御結界が紙みたいに!?」
「聖女様!?」

 着地すらできない。

 もやし二号、首を傾げる。

「……弱い」

 追撃。

 足を踏み出し、地面を蹴る。

「【瞬歩しゅんぽ・芽吹】」

 視界から消える。

 次の瞬間。

「【一閃いっせん・白茎断はっけいだん】」

 剣を使わずに威圧だけで、勇者の剣が粉砕された。

「な……俺の聖剣が……!?」

 聖女が叫ぶ。

「や、やめてください! 話し合いを――」

 もやし二号、首を振る。

「敵性存在。排除対象」

 掌を掲げる。

「【生命干渉ライフ・リセット】」

 ――発動未遂。

「ストップ!!」

 俺が割り込んだ。

「それ以上やると死ぬ!!」

 もやし二号、即停止。

「……了解しました」

 勇者パーティーは、震えながら後退する。

「ば……化け物……」
「いや、神……?」
「無理……勝てない……」

 逃げた。

 全力で。
 誇りも使命も置いて。



 静寂。

 民衆が、息を呑む。

 そして――

「英雄だ……」
「勇者を退けた……」
「もやし二号様……!」

「やめろォ!! 二号でいいから様つけるな!!」

 誰も聞いていない。

 もやし二号は、俺を見た。

「……問題、ありましたか」

 俺は、遠い目をした。

「問題しかねえよ……」

 こうして。

 無職もやし神の分身は、
 正式に“勇者以上の英雄”として認識された。

 なお、本人は無言。
 俺は胃痛。

 次に来るのは、たぶん――

「……神殿、だよな」

 世界は、今日も勝手に盛り上がっていく。

 もやしのせいで。
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