18 / 27
無職もやし神、もやしを極めすぎて人型になりました(なお本人は想定外)
しおりを挟む
もやしは、奥が深い。
これは無職もやし神として祭り上げられた俺が、ここ数日で悟った真理だ。
「……品種、増えすぎじゃね?」
小屋――もはや小屋とは言えない、勝手に拡張された研究棟の中で、俺は並んだもやし畑を見下ろしていた。
白もやし。
太もやし。
細もやし。
発光するもやし。
風属性もやし。
火に強いもやし(なぜか燃えない)。
どれも俺の意図したものではない。
異種族の連中が「この品種には雷属性を」「発酵させた方が神聖では?」とか勝手に口出ししてきて、気づいたらこうなっていた。
「もやしは……野菜だぞ?」
何度言っても通じない。
ドワーフは言った。
「硬度が足りん」
エルフは言った。
「生命の流れが美しくない」
リザードマンは言った。
「もっと湿度」
結果――
全部盛りになった。
⸻
「で、なんで魔法陣まで描いてるんだ?」
床に描かれた円陣を見て、俺は嫌な予感しかしなかった。
「これは“生命安定陣”です」
真顔で答えたのは、いつの間にか常駐している人間の魔導学者だった。
「品種改良が進みすぎまして」
「もやし単体では存在が不安定に」
「不安定な野菜って何だよ」
「ですので――」
学者は、言ってはいけないことを言った。
「人型に固定しようかと」
「やめろ」
即答だった。
「もやしは野菜だ」
「人型にする必要は一切ない」
だが、周囲の反応は違った。
「神の御姿……!」
「ついに形を得るのか」
「これは信仰的に正しい流れ」
「正しくねえよ!」
誰一人、止まらなかった。
魔法陣が光る。
発酵槽が泡立つ。
なぜか納豆菌が追加投入される。
「待て待て待て待て!」
俺が止めるより早く――
もやしが、立ち上がった。
⸻
白い。
やたら白い。
細身だが、無駄がない。
人型だが、服は着ていない。
……いや、葉っぱが巻き付いている。
「……おい」
目が、開いた。
黄緑色の瞳。
無表情。
そして。
「……命令を」
俺を見て、そう言った。
「喋った!?」
研究棟が、沈黙する。
次の瞬間。
「神の眷属だ!!」
「もやしの化身!」
「聖なるホムンクルス!!」
「だからやめろって言っただろ!!」
俺の悲鳴は、完全に歓声にかき消された。
⸻
とりあえず、外に出した。
危険すぎる。
だが、もっと危険だった。
「……試しに、動いてみろ」
俺が言うと、もやしホムンクルスは一歩踏み出し――
地面が、陥没した。
「え?」
次の一歩で、十メートル先の岩が消し飛んだ。
殴っていない。
触れてもいない。
圧だけで粉砕された。
「……ステータス見せて」
魔導学者が震え声で言う。
表示された数値を見て、全員が固まった。
「……神話級」
「いや、測定不能です」
俺は頭を抱えた。
「なんで野菜がチート生物になるんだよ……」
⸻
その日のうちに、噂は広まった。
無職もやし神、
ついに自分の分身を作り出した。
王都サンクティアにも情報は届いたらしい。
「異端の自己神格化」
「神殿の教義に反する存在」
「即時討伐対象」
だが――
討伐隊は、境界に入った瞬間に撤退した。
理由は簡単だ。
もやしホムンクルスが、立っていたから。
何もしていない。
ただ、立っているだけ。
それだけで、誰も一歩も近づけなかった。
⸻
「……なあ」
俺は、本人(?)に聞いた。
「お前、名前あるのか」
少し考えてから、もやしホムンクルスは答えた。
「ありません」
「だよな……」
俺もない。
沈黙。
「……じゃあ、お前は――」
考えるのが面倒になった。
「もやし二号でいいか」
「了解しました」
即答だった。
その瞬間、周囲がざわつく。
「神が名を与えた……」
「第二の聖名……!」
「違う! 適当だ!」
もう遅かった。
こうして。
無職もやし神は、
チート級のもやしホムンクルスを生み出した張本人として、
さらに誤解されることになる。
なお本人は、ただこう思っていた。
「……これ、どうやって処分すればいいんだ?」
世界は、今日も勝手に一線を越えていく。
もやしのせいで。
これは無職もやし神として祭り上げられた俺が、ここ数日で悟った真理だ。
「……品種、増えすぎじゃね?」
小屋――もはや小屋とは言えない、勝手に拡張された研究棟の中で、俺は並んだもやし畑を見下ろしていた。
白もやし。
太もやし。
細もやし。
発光するもやし。
風属性もやし。
火に強いもやし(なぜか燃えない)。
どれも俺の意図したものではない。
異種族の連中が「この品種には雷属性を」「発酵させた方が神聖では?」とか勝手に口出ししてきて、気づいたらこうなっていた。
「もやしは……野菜だぞ?」
何度言っても通じない。
ドワーフは言った。
「硬度が足りん」
エルフは言った。
「生命の流れが美しくない」
リザードマンは言った。
「もっと湿度」
結果――
全部盛りになった。
⸻
「で、なんで魔法陣まで描いてるんだ?」
床に描かれた円陣を見て、俺は嫌な予感しかしなかった。
「これは“生命安定陣”です」
真顔で答えたのは、いつの間にか常駐している人間の魔導学者だった。
「品種改良が進みすぎまして」
「もやし単体では存在が不安定に」
「不安定な野菜って何だよ」
「ですので――」
学者は、言ってはいけないことを言った。
「人型に固定しようかと」
「やめろ」
即答だった。
「もやしは野菜だ」
「人型にする必要は一切ない」
だが、周囲の反応は違った。
「神の御姿……!」
「ついに形を得るのか」
「これは信仰的に正しい流れ」
「正しくねえよ!」
誰一人、止まらなかった。
魔法陣が光る。
発酵槽が泡立つ。
なぜか納豆菌が追加投入される。
「待て待て待て待て!」
俺が止めるより早く――
もやしが、立ち上がった。
⸻
白い。
やたら白い。
細身だが、無駄がない。
人型だが、服は着ていない。
……いや、葉っぱが巻き付いている。
「……おい」
目が、開いた。
黄緑色の瞳。
無表情。
そして。
「……命令を」
俺を見て、そう言った。
「喋った!?」
研究棟が、沈黙する。
次の瞬間。
「神の眷属だ!!」
「もやしの化身!」
「聖なるホムンクルス!!」
「だからやめろって言っただろ!!」
俺の悲鳴は、完全に歓声にかき消された。
⸻
とりあえず、外に出した。
危険すぎる。
だが、もっと危険だった。
「……試しに、動いてみろ」
俺が言うと、もやしホムンクルスは一歩踏み出し――
地面が、陥没した。
「え?」
次の一歩で、十メートル先の岩が消し飛んだ。
殴っていない。
触れてもいない。
圧だけで粉砕された。
「……ステータス見せて」
魔導学者が震え声で言う。
表示された数値を見て、全員が固まった。
「……神話級」
「いや、測定不能です」
俺は頭を抱えた。
「なんで野菜がチート生物になるんだよ……」
⸻
その日のうちに、噂は広まった。
無職もやし神、
ついに自分の分身を作り出した。
王都サンクティアにも情報は届いたらしい。
「異端の自己神格化」
「神殿の教義に反する存在」
「即時討伐対象」
だが――
討伐隊は、境界に入った瞬間に撤退した。
理由は簡単だ。
もやしホムンクルスが、立っていたから。
何もしていない。
ただ、立っているだけ。
それだけで、誰も一歩も近づけなかった。
⸻
「……なあ」
俺は、本人(?)に聞いた。
「お前、名前あるのか」
少し考えてから、もやしホムンクルスは答えた。
「ありません」
「だよな……」
俺もない。
沈黙。
「……じゃあ、お前は――」
考えるのが面倒になった。
「もやし二号でいいか」
「了解しました」
即答だった。
その瞬間、周囲がざわつく。
「神が名を与えた……」
「第二の聖名……!」
「違う! 適当だ!」
もう遅かった。
こうして。
無職もやし神は、
チート級のもやしホムンクルスを生み出した張本人として、
さらに誤解されることになる。
なお本人は、ただこう思っていた。
「……これ、どうやって処分すればいいんだ?」
世界は、今日も勝手に一線を越えていく。
もやしのせいで。
0
あなたにおすすめの小説
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる