愛の操り人形~サンピーノキオ~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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***感知する性愛人形サンピーノキオ***

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 満月が一際大きく、そして一段と美しく輝く夜のことでした。
 人形はこの世に生まれました。

「おめでとうございます、ジェペット・G・サーン博士。これであなたも偉大なる世界の魔法科学者の仲間入りです」

 続けて鼓膜が捉えた音もまた同じ男の低い声でした。
 けれども、人形が稼働して間もない目で眺めていたのは別の存在でした。

「ありがとう、ローギィ」

 黄緑色のきれいな瞳がじっと人形を見つめたまま、背後に立つ男へと答えました。

(誰だろう…)

 生まれたばかりの人形は、目の前の事物を認識しようと情報を集めます。
 ジジジジ…と。
 瞳に内蔵されたカメラの反応は速度として申し分ありません。
 とはいえ、その人がどれほど美しいかまではまだ把握しきれませんでした。
 その人が実はたいしてありがとうとは思っていなかったこともです。
 腰まで長い黄金の髪を持つ麗人の名はジェペット・G・サーン。
 王家の領地である森の奥の。
 隔離された屋敷に、まるで幽閉されているかのように引きこもり、研究に明け暮れている天才科学者でした。
 そして世紀の誕生の瞬間に立ち会った、頑丈な甲冑アーマーを身につけた男は王直属の騎士団長コーオ・ローギィでした。
 どうして敵が一目散に逃げていくような屈強な騎士が、それも王直属の騎士団長が夜のこんな薄暗い研究室にいるのでしょうか。
 それは今まで誰も成し遂げなかった、人工的な生命体を奇跡的に生み出した青年が、由緒正しき王家の血を引く落としだねだったからです。

「お名前は決まっているのですか?」
「ん…サンピーノキオにしようと思う」

 仕える年上の者と従わせる年下の者とのやりとりを。
 目にした人形はすぐさま吸収しました。

(ぼくの名前はサンピーノキオだ…)

 キョロキョロ、キョロキョロと瞳を左右に動かして。
 起動したばかりだというのに、自我が捉えた音を自分の名前だときちんと認識したのです。
 いいぞ、サンピーノキオと。
 その調子だ、サンピーノキオと人形は自身を鼓舞しました。
 搭載された初期設定が、外の世界に視線を注いで自らのいる場所の情報を得なさいと働きかけてきます。
 それは人間における本能と全く同じ誘発でした。
 ジジジジ…と視線を傍らに立ててあった鏡に向けます。
 中に移っている姿を目にした途端に。
 ふわぁっと。
 人形の中に既存していた知識が急浮上しました。
 少し小生意気にも見えるツンと高い鼻に、青い瞳と黒い髪が、開発者がある意思を持って色を決めたことを物語ってきたのです。
 そう、ジェペット博士はあえて髪をその色にしたのです。
 本当は違う色にしたかったのに。
 あまりにも露骨になってしまうから。
 制作過程中に偶発的に入力インプットされたデータがそう告げてました。

「サンピーノキオ、立ってごらん。歩いてみて、痛いとかつらいとか、どこか変だったら教えてくれ」

 博士の命令コマンドにすくっと円形の実験台の上で立ち上がってみせました。
 生みの親に逆らえるはずがありません。
 タタッ、タタッとその場で軽やかに跳ねてみます。
 手も足も元気よく交互に動かして。
 与えられた生をしっかりと楽しんでいることを保護者にきちんと知らせるために、首も左右に振ってにっこりと笑います。
 実際に初めて一緒に動かす四肢の体感は、カクカク、カクカクとなんだか不安定で、かえってとても愉快です。
 結局、やめていいよと言われるまで人形はステップを台の上で踏み続けました。
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