2 / 15
***感知する性愛人形サンピーノキオ***
しおりを挟む
満月が一際大きく、そして一段と美しく輝く夜のことでした。
人形はこの世に生まれました。
「おめでとうございます、ジェペット・G・サーン博士。これであなたも偉大なる世界の魔法科学者の仲間入りです」
続けて鼓膜が捉えた音もまた同じ男の低い声でした。
けれども、人形が稼働して間もない目で眺めていたのは別の存在でした。
「ありがとう、ローギィ」
黄緑色のきれいな瞳がじっと人形を見つめたまま、背後に立つ男へと答えました。
(誰だろう…)
生まれたばかりの人形は、目の前の事物を認識しようと情報を集めます。
ジジジジ…と。
瞳に内蔵されたカメラの反応は速度として申し分ありません。
とはいえ、その人がどれほど美しいかまではまだ把握しきれませんでした。
その人が実はたいしてありがとうとは思っていなかったこともです。
腰まで長い黄金の髪を持つ麗人の名はジェペット・G・サーン。
王家の領地である森の奥の。
隔離された屋敷に、まるで幽閉されているかのように引きこもり、研究に明け暮れている天才科学者でした。
そして世紀の誕生の瞬間に立ち会った、頑丈な甲冑を身につけた男は王直属の騎士団長コーオ・ローギィでした。
どうして敵が一目散に逃げていくような屈強な騎士が、それも王直属の騎士団長が夜のこんな薄暗い研究室にいるのでしょうか。
それは今まで誰も成し遂げなかった、人工的な生命体を奇跡的に生み出した青年が、由緒正しき王家の血を引く落とし胤だったからです。
「お名前は決まっているのですか?」
「ん…サンピーノキオにしようと思う」
仕える年上の者と従わせる年下の者とのやりとりを。
目にした人形はすぐさま吸収しました。
(ぼくの名前はサンピーノキオだ…)
キョロキョロ、キョロキョロと瞳を左右に動かして。
起動したばかりだというのに、自我が捉えた音を自分の名前だときちんと認識したのです。
いいぞ、サンピーノキオと。
その調子だ、サンピーノキオと人形は自身を鼓舞しました。
搭載された初期設定が、外の世界に視線を注いで自らのいる場所の情報を得なさいと働きかけてきます。
それは人間における本能と全く同じ誘発でした。
ジジジジ…と視線を傍らに立ててあった鏡に向けます。
中に移っている姿を目にした途端に。
ふわぁっと。
人形の中に既存していた知識が急浮上しました。
少し小生意気にも見えるツンと高い鼻に、青い瞳と黒い髪が、開発者がある意思を持って色を決めたことを物語ってきたのです。
そう、ジェペット博士はあえて髪をその色にしたのです。
本当は違う色にしたかったのに。
あまりにも露骨になってしまうから。
制作過程中に偶発的に入力されたデータがそう告げてました。
「サンピーノキオ、立ってごらん。歩いてみて、痛いとかつらいとか、どこか変だったら教えてくれ」
博士の命令にすくっと円形の実験台の上で立ち上がってみせました。
生みの親に逆らえるはずがありません。
タタッ、タタッとその場で軽やかに跳ねてみます。
手も足も元気よく交互に動かして。
与えられた生をしっかりと楽しんでいることを保護者にきちんと知らせるために、首も左右に振ってにっこりと笑います。
実際に初めて一緒に動かす四肢の体感は、カクカク、カクカクとなんだか不安定で、かえってとても愉快です。
結局、やめていいよと言われるまで人形はステップを台の上で踏み続けました。
人形はこの世に生まれました。
「おめでとうございます、ジェペット・G・サーン博士。これであなたも偉大なる世界の魔法科学者の仲間入りです」
続けて鼓膜が捉えた音もまた同じ男の低い声でした。
けれども、人形が稼働して間もない目で眺めていたのは別の存在でした。
「ありがとう、ローギィ」
黄緑色のきれいな瞳がじっと人形を見つめたまま、背後に立つ男へと答えました。
(誰だろう…)
生まれたばかりの人形は、目の前の事物を認識しようと情報を集めます。
ジジジジ…と。
瞳に内蔵されたカメラの反応は速度として申し分ありません。
とはいえ、その人がどれほど美しいかまではまだ把握しきれませんでした。
その人が実はたいしてありがとうとは思っていなかったこともです。
腰まで長い黄金の髪を持つ麗人の名はジェペット・G・サーン。
王家の領地である森の奥の。
隔離された屋敷に、まるで幽閉されているかのように引きこもり、研究に明け暮れている天才科学者でした。
そして世紀の誕生の瞬間に立ち会った、頑丈な甲冑を身につけた男は王直属の騎士団長コーオ・ローギィでした。
どうして敵が一目散に逃げていくような屈強な騎士が、それも王直属の騎士団長が夜のこんな薄暗い研究室にいるのでしょうか。
それは今まで誰も成し遂げなかった、人工的な生命体を奇跡的に生み出した青年が、由緒正しき王家の血を引く落とし胤だったからです。
「お名前は決まっているのですか?」
「ん…サンピーノキオにしようと思う」
仕える年上の者と従わせる年下の者とのやりとりを。
目にした人形はすぐさま吸収しました。
(ぼくの名前はサンピーノキオだ…)
キョロキョロ、キョロキョロと瞳を左右に動かして。
起動したばかりだというのに、自我が捉えた音を自分の名前だときちんと認識したのです。
いいぞ、サンピーノキオと。
その調子だ、サンピーノキオと人形は自身を鼓舞しました。
搭載された初期設定が、外の世界に視線を注いで自らのいる場所の情報を得なさいと働きかけてきます。
それは人間における本能と全く同じ誘発でした。
ジジジジ…と視線を傍らに立ててあった鏡に向けます。
中に移っている姿を目にした途端に。
ふわぁっと。
人形の中に既存していた知識が急浮上しました。
少し小生意気にも見えるツンと高い鼻に、青い瞳と黒い髪が、開発者がある意思を持って色を決めたことを物語ってきたのです。
そう、ジェペット博士はあえて髪をその色にしたのです。
本当は違う色にしたかったのに。
あまりにも露骨になってしまうから。
制作過程中に偶発的に入力されたデータがそう告げてました。
「サンピーノキオ、立ってごらん。歩いてみて、痛いとかつらいとか、どこか変だったら教えてくれ」
博士の命令にすくっと円形の実験台の上で立ち上がってみせました。
生みの親に逆らえるはずがありません。
タタッ、タタッとその場で軽やかに跳ねてみます。
手も足も元気よく交互に動かして。
与えられた生をしっかりと楽しんでいることを保護者にきちんと知らせるために、首も左右に振ってにっこりと笑います。
実際に初めて一緒に動かす四肢の体感は、カクカク、カクカクとなんだか不安定で、かえってとても愉快です。
結局、やめていいよと言われるまで人形はステップを台の上で踏み続けました。
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる