26 / 153
第3章 異常なまでに求愛されて
6
しおりを挟む
仮に半分でなくても先祖あたりにいるのではないだろうかと思わずにはいられない。
どう考えても次元が違うのだ。
(ほんとに…何者だったんだろうか…)
もしも自分と同じ逆行者であるのならば、記憶を奪われて過去を思い出せていないはずだ。
どういった人生を歩んでいたのか。
何をして罪人となったのか。
家族はいたのか。
番いも本当はいたのではないのだろうか。
(いないはずがないよなぁ…)
鍛え抜かれていることを一目で感じさせられる肉体美と美貌とそして知性と。
さらに時折全身から放出される気の質と量と。
誰かと比較したわけでもなく、また比較できるほど多くとは接していないが桁違いのような気がしてたまらない。
(これほどまでの男が一体なにをして…監獄に…?)
問いただしたくとも、記憶と過去を清算した元囚人であるのならば得られるものなどない。
そして、この男に問いかけたい質問は自身にも当てはまるのだ。
自分もまたどういう理由で投獄されていたのか。
「どうした?」
「えっ…いや…べ、別に…なんでもない」
心ここにあらずであったことを悟られて、わずかばかり居心地の悪さを感じながら応じれば、的外れな問いかけをされた。
「もしかして宿に泊まりたかったのか?」
いや、それはない、さすがにない…とつい笑いが漏れる。
どういうわけだか感覚が妙にズレている時がある。
「このあたりは質の悪い売春宿しかない。近くで温泉とその宿を探してもいいが、行きたいか?」
「えっと、あの…だから…そういうことじゃなくって…今のままでも…充分なわけなんだしさ…」
いつだって目が覚めると水辺か井戸のある村かに到着していて、水浴や身を拭くことだってできているのだ。
それに寝心地だって悪くない――と毎晩の寝場所に想いを寄せた横でピィイィッとオルフェウスが指笛を吹いた。
「ブルルルルッ」
と町外れの鬱蒼とする雑木林の中から応じるようにいななきが聞こえてくる。
ザワザワ、ザワザワと暗い木陰が妖しく呼応した。
スォン、スォン、スォン、スォン…とまるで地を滑るようにして一台の大きな獣車が現れた。
四輪の黒い幌で四方を覆われた荷台を引くのはヒッポスホースと呼ばれる大型の獣だ。
容姿は馬に似ているが一回りは大きい。
ピンと立った耳に前に長い鼻面と。
灰色がかった青毛は触るとモフモフとしていて柔らかい。
そしてその走る様も霊獣のように軽やかだ。
魔気を纏っているせいだろう。
その魔獣が甘えるように頭を差し出してきた。
撫でてくれとばかりに近づいてきた額へとオルフェウスが手をのせた。
「アレイ、餌は自分たちで見つけて食べたか?」
「ブルルッ」
「クゥィィーッ」
途端に自分もここにいるぞとばかりに小さい塊が御者台から突進してきた。
「わぁっ」
肩に降り立ったのはキルケーイーグルと呼ばれる小型の魔鳥だ。
アレイと同色の翼でバサバサと頬を撫でられて、くすぐったいよ、イオンと首をすくめた。
どう考えても次元が違うのだ。
(ほんとに…何者だったんだろうか…)
もしも自分と同じ逆行者であるのならば、記憶を奪われて過去を思い出せていないはずだ。
どういった人生を歩んでいたのか。
何をして罪人となったのか。
家族はいたのか。
番いも本当はいたのではないのだろうか。
(いないはずがないよなぁ…)
鍛え抜かれていることを一目で感じさせられる肉体美と美貌とそして知性と。
さらに時折全身から放出される気の質と量と。
誰かと比較したわけでもなく、また比較できるほど多くとは接していないが桁違いのような気がしてたまらない。
(これほどまでの男が一体なにをして…監獄に…?)
問いただしたくとも、記憶と過去を清算した元囚人であるのならば得られるものなどない。
そして、この男に問いかけたい質問は自身にも当てはまるのだ。
自分もまたどういう理由で投獄されていたのか。
「どうした?」
「えっ…いや…べ、別に…なんでもない」
心ここにあらずであったことを悟られて、わずかばかり居心地の悪さを感じながら応じれば、的外れな問いかけをされた。
「もしかして宿に泊まりたかったのか?」
いや、それはない、さすがにない…とつい笑いが漏れる。
どういうわけだか感覚が妙にズレている時がある。
「このあたりは質の悪い売春宿しかない。近くで温泉とその宿を探してもいいが、行きたいか?」
「えっと、あの…だから…そういうことじゃなくって…今のままでも…充分なわけなんだしさ…」
いつだって目が覚めると水辺か井戸のある村かに到着していて、水浴や身を拭くことだってできているのだ。
それに寝心地だって悪くない――と毎晩の寝場所に想いを寄せた横でピィイィッとオルフェウスが指笛を吹いた。
「ブルルルルッ」
と町外れの鬱蒼とする雑木林の中から応じるようにいななきが聞こえてくる。
ザワザワ、ザワザワと暗い木陰が妖しく呼応した。
スォン、スォン、スォン、スォン…とまるで地を滑るようにして一台の大きな獣車が現れた。
四輪の黒い幌で四方を覆われた荷台を引くのはヒッポスホースと呼ばれる大型の獣だ。
容姿は馬に似ているが一回りは大きい。
ピンと立った耳に前に長い鼻面と。
灰色がかった青毛は触るとモフモフとしていて柔らかい。
そしてその走る様も霊獣のように軽やかだ。
魔気を纏っているせいだろう。
その魔獣が甘えるように頭を差し出してきた。
撫でてくれとばかりに近づいてきた額へとオルフェウスが手をのせた。
「アレイ、餌は自分たちで見つけて食べたか?」
「ブルルッ」
「クゥィィーッ」
途端に自分もここにいるぞとばかりに小さい塊が御者台から突進してきた。
「わぁっ」
肩に降り立ったのはキルケーイーグルと呼ばれる小型の魔鳥だ。
アレイと同色の翼でバサバサと頬を撫でられて、くすぐったいよ、イオンと首をすくめた。
9
あなたにおすすめの小説
流れる星は海に還る
藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。
組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。
<登場人物>
辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。
若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。
中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。
ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。
表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️
竜人息子の溺愛!
神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。
勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。
だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。
そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。
超美形竜人息子×自称おじさん
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
こんにちは、付喪神です。
江多之折(エタノール)
BL
すみません、息抜き用に連載に昇格しました。そっと連載してる。
背後注意のところに※入れる感じでやります
特に大切にされた覚えもないし、なんならUFOキャッチャーでゲットしてゲーセンの袋に入れられたまま年単位で放置されてたけど、神、宿りました。 見てください、人型です。…なんで?
あ、神といっても特別な能力とかないけど、まぁ気にせず置いといて下さいね。宿ったんで。って汚?!部屋、汚ったな!嘘でしょ?!
え?なんですか?ダッチ…?
社畜気味リーマン(Sっ気有)×付喪神(生まれたての家政婦)の短編。じゃなくなった。でもゆるめ。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
さかなのみるゆめ
ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる