アルファの戦士はオメガにされて愛される~オメガバース・ギリシャ神話~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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第3章 異常なまでに求愛されて

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 仮に半分でなくても先祖あたりにいるのではないだろうかと思わずにはいられない。
 どう考えても次元が違うのだ。

(ほんとに…何者だったんだろうか…)

 もしも自分と同じ逆行者であるのならば、記憶を奪われて過去を思い出せていないはずだ。
 どういった人生を歩んでいたのか。
 何をして罪人となったのか。
 家族はいたのか。
 番いも本当はいたのではないのだろうか。

(いないはずがないよなぁ…)

 鍛え抜かれていることを一目で感じさせられる肉体美と美貌とそして知性と。
 さらに時折全身から放出されるアルケーの質と量と。
 誰かと比較したわけでもなく、また比較できるほど多くとは接していないが桁違いのような気がしてたまらない。

(これほどまでの男が一体なにをして…監獄に…?)

 問いただしたくとも、記憶と過去を清算した元囚人であるのならば得られるものなどない。
 そして、この男に問いかけたい質問は自身にも当てはまるのだ。
 自分もまたどういう理由で投獄されていたのか。

「どうした?」
「えっ…いや…べ、別に…なんでもない」

 心ここにあらずであったことを悟られて、わずかばかり居心地の悪さを感じながら応じれば、的外れな問いかけをされた。

「もしかして宿に泊まりたかったのか?」

 いや、それはない、さすがにない…とつい笑いが漏れる。
 どういうわけだか感覚が妙にズレている時がある。

「このあたりは質の悪い売春宿しかない。近くで温泉テルメとその宿を探してもいいが、行きたいか?」
「えっと、あの…だから…そういうことじゃなくって…今のままでも…充分なわけなんだしさ…」

 いつだって目が覚めると水辺か井戸のある村かに到着していて、水浴や身を拭くことだってできているのだ。
 それに寝心地だって悪くない――と毎晩の寝場所に想いを寄せた横でピィイィッとオルフェウスが指笛を吹いた。

「ブルルルルッ」

 と町外れの鬱蒼うっそうとする雑木林の中から応じるようにいななきが聞こえてくる。
 ザワザワ、ザワザワと暗い木陰が妖しく呼応した。
 スォン、スォン、スォン、スォン…とまるで地を滑るようにして一台の大きな獣車クーペが現れた。
 四輪の黒いほろで四方を覆われた荷台を引くのはヒッポスホースと呼ばれる大型の獣だ。
 容姿は馬に似ているが一回りは大きい。
 ピンと立った耳に前に長い鼻面と。
 灰色がかった青毛は触るとモフモフとしていて柔らかい。
 そしてその走る様も霊獣のように軽やかだ。
 魔気を纏っているせいだろう。
 その魔獣が甘えるように頭を差し出してきた。
 撫でてくれとばかりに近づいてきた額へとオルフェウスが手をのせた。

「アレイ、餌は自分たちで見つけて食べたか?」
「ブルルッ」
「クゥィィーッ」

 途端に自分もここにいるぞとばかりに小さい塊が御者台から突進してきた。

「わぁっ」

 肩に降り立ったのはキルケーイーグルと呼ばれる小型の魔鳥だ。
 アレイと同色の翼でバサバサと頬を撫でられて、くすぐったいよ、イオンと首をすくめた。
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