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第9章 ハデス神殿での求愛
3 元より抱かれる側の…
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それどころか、これほどまでに申し分のないアルファの男にこんなにも求められている身なのだと満ち足りていて。
(オレは…オレは…結局は…)
男に股を開かされて、荒々しく挿入されては喘ぐ側の肉体だったのだと観念して受け入れる。
元より抱かれる側の性だったのだと。
そうだ、元より――と逞しい胸に身を任せながらぼんやりと繰り返したその時、ふと思い起こされた。
『おめえぇえ~、ただのオメガ堕ちじゃねぇなぁあ~?』
ハッと目を見開き、どういう意味だと邪悪な怪物に吐かれた言葉を振り返った。
オメガ堕ちなどとは聞こえが悪いが、オメガだとあの時点で見抜かれていたのか。
確かに秘部が濡れるのだから認めたくはないがオメガ属性なのだろう。
けれども元は違っていたとでも言いたかったのか。
噛まれたことによって何かを感知されたというのか。
(それに…そうだ…)
精霊族くずれどもとも叫ばれていたような気がすると時間を巻き戻す。
それらの発言は状況から考えても自分に向けて発せられたとしか考えられない。
だが本当に自分のことなのかと掘り下げようとした矢先に美声に遮られた。
「ディケ、どうした?」
「えっ…」
「やはり怒っているのか」
「いや…その…あっ…」
両腕を強く掴まれて真っ正面から覗きこまれたはずみで、パサリと上半身を隠していた毛布がはだけ落ちた。
「どうしても許せないか?」
「いや、ちょっ…そういうことじゃなくって…」
さんざん弄られた胸の先を嬲った本人に見られたくなくてアタフタと手で毛布を上げながら、まずは服が着たいんだと、か細い声で訴えた。
男同士で何をと思われても、抱く側と抱かれる側の明確な性差をまざまざと思い知らされた以上は恥じらわずにはいられない。
「オレの服は…どこにあるんだ…それに…ここは…どこなんだ…」
自分の裸体は性的に見られる対象なのだ――と過剰に意識していることを悟られないように平静を装って尋ねた。
「あぁ、服ならアレイにすぐに取ってこさせる。ここはハデス神殿の中庭だ」
(ハデス神殿の…中庭だって…?)
神殿の庭に小川が流れて林があるというのかと、その規模にたじろいだのがわかったのだろう。
岸の向こう側で待機する大型の魔獣に指示を出した後に続けられた。
「アルペイオス河沿いにあるハデス神殿はとりわけ特異だ。レテの幽水を地上に導き循環させているだけでなく、愛する王妃のために再生の泉が取り入れられている」
(愛する王妃のために…再生の泉が…)
その名称には記憶の中に知識があると。
確かナフプリオの地が発祥だったと思うが、どういった霊力があっただろうかとおぼろげな情報をたぐり寄せようとした刹那、やはり許せないかと尋ねられた。
「えっ…」
「どうしたら怒りを解いてもらえるだろうか」
「いや、怒ってなんか…」
ないと言いかけて慌てて口をつぐんだ。
(オレは…オレは…結局は…)
男に股を開かされて、荒々しく挿入されては喘ぐ側の肉体だったのだと観念して受け入れる。
元より抱かれる側の性だったのだと。
そうだ、元より――と逞しい胸に身を任せながらぼんやりと繰り返したその時、ふと思い起こされた。
『おめえぇえ~、ただのオメガ堕ちじゃねぇなぁあ~?』
ハッと目を見開き、どういう意味だと邪悪な怪物に吐かれた言葉を振り返った。
オメガ堕ちなどとは聞こえが悪いが、オメガだとあの時点で見抜かれていたのか。
確かに秘部が濡れるのだから認めたくはないがオメガ属性なのだろう。
けれども元は違っていたとでも言いたかったのか。
噛まれたことによって何かを感知されたというのか。
(それに…そうだ…)
精霊族くずれどもとも叫ばれていたような気がすると時間を巻き戻す。
それらの発言は状況から考えても自分に向けて発せられたとしか考えられない。
だが本当に自分のことなのかと掘り下げようとした矢先に美声に遮られた。
「ディケ、どうした?」
「えっ…」
「やはり怒っているのか」
「いや…その…あっ…」
両腕を強く掴まれて真っ正面から覗きこまれたはずみで、パサリと上半身を隠していた毛布がはだけ落ちた。
「どうしても許せないか?」
「いや、ちょっ…そういうことじゃなくって…」
さんざん弄られた胸の先を嬲った本人に見られたくなくてアタフタと手で毛布を上げながら、まずは服が着たいんだと、か細い声で訴えた。
男同士で何をと思われても、抱く側と抱かれる側の明確な性差をまざまざと思い知らされた以上は恥じらわずにはいられない。
「オレの服は…どこにあるんだ…それに…ここは…どこなんだ…」
自分の裸体は性的に見られる対象なのだ――と過剰に意識していることを悟られないように平静を装って尋ねた。
「あぁ、服ならアレイにすぐに取ってこさせる。ここはハデス神殿の中庭だ」
(ハデス神殿の…中庭だって…?)
神殿の庭に小川が流れて林があるというのかと、その規模にたじろいだのがわかったのだろう。
岸の向こう側で待機する大型の魔獣に指示を出した後に続けられた。
「アルペイオス河沿いにあるハデス神殿はとりわけ特異だ。レテの幽水を地上に導き循環させているだけでなく、愛する王妃のために再生の泉が取り入れられている」
(愛する王妃のために…再生の泉が…)
その名称には記憶の中に知識があると。
確かナフプリオの地が発祥だったと思うが、どういった霊力があっただろうかとおぼろげな情報をたぐり寄せようとした刹那、やはり許せないかと尋ねられた。
「えっ…」
「どうしたら怒りを解いてもらえるだろうか」
「いや、怒ってなんか…」
ないと言いかけて慌てて口をつぐんだ。
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