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1章:恋に落ちちゃいました~呪われたオメガの王カール・オージー・サンデス・メイ・ジセイカ~

アソコが上がっては下がっての…

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 とその理由に想いを寄せた途端にバタンッと左肩の黄金の肩章エポレットを整えていた衣装係の一人が倒れた。

「救護班!!」

 宰相が大声で叫び、バタバタと医療用の防護服を身に着けた従者たちが駆けつける。
 とバタンッと右側でもひっくり返った。

「後は自分でやる」

 担架で運ばれていく姿を溜め息をつきつつ見送りながらその場から離れる。
 と傍らに置いてあった棺のように大きい収納箱チェストからシリッシュ宰相が豪華な正装用の外套マントを取り出すと、両手に恭しく抱えて持ってきた。

「昨日の高揚がまだ収まらないご様子ですが…」

 と尋ねられて袖口のサファイアが付いたカフスボタンを留めながらわずかに眉を寄せる。
 そりゃそうだ。
 なに一つ解消していない。
 なぜこれほどまでに心も下半身も滾るのか。
 これは運命の番に間違いない。
 そう噛みしめ、脳内で好き放題に愛してやろうと荒ぶるソコに集中したところで相手はカエルもどきなのだ。

 あの身体はどうなっているのだ――という現実的な壁にすぐさま突き当たる。
 服は脱げるのか、どうなのか。
 前にアレは付いているのか、どうなのか。
 後ろにアレはあるのか、どうなのか。
 となまじ感情的知性が高いだけでなく現状認識能力も想像力も長けているものだから。
 それはそれはシューンと勢いよく萎える。
 そして、

(でも、例えようもなく愛らしかった…)

 と思い起こしてはギュゥンと見事に反り返り――
 結果、上がっては下がって、下がっては上がっての言わばエゴと理性の遊具シーソーゲーム状態だ。
 発散なんてできるわけがない。

(けれども後ろはあるだろうな、食事はしているようだからな)

 偵察に行かせた者によると大広間に用意された豪勢な食事を辞退したため、付き添いの従者がすかさず食べられる物を尋ね、部屋にパンと果物と野菜を運んだらしい。
 完食したとのことだから動力源は明らかに食物だ。
 つまりはネジ巻きなんかではない。
 だから愛し合えるはずだ。

「陛下…ン、コホン」

 問いかけを無視スルーされていた宰相の咳払いで現実に引き戻された。

「あぁ、すまない。
 考え事をしていた。
 それより問題なく準備はできているだろうな?」

 内側は白く柔らかな羊毛ウールに、外側は深紅の天鵞絨ベルベットの。
 床に付くほど長く立派な外套マントを宰相の手を借りながら左肩にかけ、左腕に巻くようにして赤い肩ベルト脇に挟み、流すようにして後ろは地に落とす。
 言うまでもなく王としての正装だ。

「はい。全ての参加者に呪符のこもった天蓋てんがい付きの個室をご用意しました」

 長髪と同色の金色の剣帯にスッと同じく金の鞘に入ったサーベルを差し入れながら頷いた。

 いつもなら各々がテーブル席に座っていても隔たりなど一切ない。
 集った者の互いの顔や場の状態が全て見渡せる。
 それを今回はあえて中庭に円卓と椅子を運ばせ、仕切りを用意させた。

 昨晩遅くまでかかっただろうが致し方ない。
 記念すべき初顔合わせになるのだ、失神者続出となっててんやわんやになる展開は避けたい。
 当然、例のあの不格好も避けたい。

「彼は…ヘケロは最後だろうな」
「はい。一番端の席を設けております」


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