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2章:逃げちゃいました~呪われたカエルの王さまヘーゼル・ナッツイリアル・フォート・ブルルボン~
唯一の独身カエル
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ところが悲しいかな。
タケノコーノ・サト島の唯一の居住区オラーガ村には伴侶なしがいなかったのだ、そう自分を除いて。
独身であればバース性や身分、年齢は問わないというお触れではあったものの、みなが既に若い内に伴侶を得て農作業に携わっている。
もしくは年老いてもなおもバリバリ現役の農夫であるじいさまかばあさまか、はたまた婚姻なんか論外の乳幼児かの世界だ。
だから中央から通達を毎年受け取っても、うちには関係ないよねぇといった立ち位置だったのだが、ここに来て悲劇が起きた。
そう、なんと本土と島を結ぶ橋が壊れたのだ。
これにはまいった。
修理する金がない。
隣のモロコーシムーラ州からこちらに面した側の半分は負担するが全部の距離はさすがに出せないと言われ、王国に助成金を申請すれど審査にどのくらいかかるかわからないと返され、とにかく金が必要になった。
そこでマブール村長が目を付けたのがゴゥートゥーキャッスルキャンペーンだ。
高額な奨励金が得られるからと。
島で唯一の独り者である自分がなにとぞ頼むと土下座されて懇願されたのだ。
だが実を言えば、自分はオラーガ村出身者ではない。
(散歩でも行こうかなぁ)
フゥと溜め息をつくと立ち上る。
と美しい葉の紋様の金工象嵌が施された衣装家具へと近寄った。
棺のように長くて重たい蓋を持ち上げてずらすと中に入っているのは鍬一本だ。
替えの下着と短いズボンはお腹の半月状の小袋の中に入っている。
靴を履いて、鍬を背負って紐でしっかりと固定するとキィィと扉を押して開けた。
ひょいと外に顔を出せば、シーンとした薄暗く静かな廊下では扉のすぐ横で小さな従者が椅子に座ったまま眠りこけている。
名前はコパン。
参加者優遇の国営専用駅馬車を乗り継いで乗り継いで、十三の州を越えて越えて、はるばるやってきた自分に付いた専属の接待係だ。
来訪者には一人ずつ従者が配置されていて。
一昨日、王都到着時に迎えに来た時からの付き合いだ。
(起こしたら悪いよなぁ)
初対面の際に被り物ではないと理解した時の驚愕ぶりからしても、担当が自分になったためにいろいろと神経をすり減らしているに違いない。
ガーガーと背もたれに頭をのせてふんぞり返って寝ている姿からそう察した。
(ん…?)
ずり下がっている膝掛けを直してやろうとした時、ふと手帳とペンが床に転がっているのに気が付いた。
間際まで記入していたものの眠けに負けたのか、ダラリと垂れた手から落ちたのだろう。
それにしてもどういうわけだか、この王都では誰もが手のひらサイズの紙の束と小さな羽根ペンとインク壺を腰の巾着に入れて持ち歩いている。
備忘録らしいが、まめだ、とにかくまめだ。
さらにほとんどの者が懐中時計を持っていて。
従って、びっくりするほど時間に正確だ。
(そうだ…ここに書いていくか)
目が覚めた時に自分がいなかったら驚くだろうと思い、サラサラサラと散歩に出る旨を書いて床に置いた。
トテトテトテ…と廊下を歩き始める。
(さすがに誰もいないかぁ)
時間帯もあるだろうが、他の来訪者とあえて離れた場所にしてもらえている、そんな配慮を感じるのは気のせいか。
(いや、きっとそうだろうなぁ)
大広間での食事を辞退すると食べられる物を聞かれ、わざわざ部屋まで運んでくれたのだ。
脳裏に事前面接時に出会った老侍従長のきりりとした顔を思い出した。
タケノコーノ・サト島の唯一の居住区オラーガ村には伴侶なしがいなかったのだ、そう自分を除いて。
独身であればバース性や身分、年齢は問わないというお触れではあったものの、みなが既に若い内に伴侶を得て農作業に携わっている。
もしくは年老いてもなおもバリバリ現役の農夫であるじいさまかばあさまか、はたまた婚姻なんか論外の乳幼児かの世界だ。
だから中央から通達を毎年受け取っても、うちには関係ないよねぇといった立ち位置だったのだが、ここに来て悲劇が起きた。
そう、なんと本土と島を結ぶ橋が壊れたのだ。
これにはまいった。
修理する金がない。
隣のモロコーシムーラ州からこちらに面した側の半分は負担するが全部の距離はさすがに出せないと言われ、王国に助成金を申請すれど審査にどのくらいかかるかわからないと返され、とにかく金が必要になった。
そこでマブール村長が目を付けたのがゴゥートゥーキャッスルキャンペーンだ。
高額な奨励金が得られるからと。
島で唯一の独り者である自分がなにとぞ頼むと土下座されて懇願されたのだ。
だが実を言えば、自分はオラーガ村出身者ではない。
(散歩でも行こうかなぁ)
フゥと溜め息をつくと立ち上る。
と美しい葉の紋様の金工象嵌が施された衣装家具へと近寄った。
棺のように長くて重たい蓋を持ち上げてずらすと中に入っているのは鍬一本だ。
替えの下着と短いズボンはお腹の半月状の小袋の中に入っている。
靴を履いて、鍬を背負って紐でしっかりと固定するとキィィと扉を押して開けた。
ひょいと外に顔を出せば、シーンとした薄暗く静かな廊下では扉のすぐ横で小さな従者が椅子に座ったまま眠りこけている。
名前はコパン。
参加者優遇の国営専用駅馬車を乗り継いで乗り継いで、十三の州を越えて越えて、はるばるやってきた自分に付いた専属の接待係だ。
来訪者には一人ずつ従者が配置されていて。
一昨日、王都到着時に迎えに来た時からの付き合いだ。
(起こしたら悪いよなぁ)
初対面の際に被り物ではないと理解した時の驚愕ぶりからしても、担当が自分になったためにいろいろと神経をすり減らしているに違いない。
ガーガーと背もたれに頭をのせてふんぞり返って寝ている姿からそう察した。
(ん…?)
ずり下がっている膝掛けを直してやろうとした時、ふと手帳とペンが床に転がっているのに気が付いた。
間際まで記入していたものの眠けに負けたのか、ダラリと垂れた手から落ちたのだろう。
それにしてもどういうわけだか、この王都では誰もが手のひらサイズの紙の束と小さな羽根ペンとインク壺を腰の巾着に入れて持ち歩いている。
備忘録らしいが、まめだ、とにかくまめだ。
さらにほとんどの者が懐中時計を持っていて。
従って、びっくりするほど時間に正確だ。
(そうだ…ここに書いていくか)
目が覚めた時に自分がいなかったら驚くだろうと思い、サラサラサラと散歩に出る旨を書いて床に置いた。
トテトテトテ…と廊下を歩き始める。
(さすがに誰もいないかぁ)
時間帯もあるだろうが、他の来訪者とあえて離れた場所にしてもらえている、そんな配慮を感じるのは気のせいか。
(いや、きっとそうだろうなぁ)
大広間での食事を辞退すると食べられる物を聞かれ、わざわざ部屋まで運んでくれたのだ。
脳裏に事前面接時に出会った老侍従長のきりりとした顔を思い出した。
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