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2章:逃げちゃいました~呪われたカエルの王さまヘーゼル・ナッツイリアル・フォート・ブルルボン~
ど、どうされました?
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こちらが偽りなく生身だとわかるとわずかに動揺したものの、すぐさま毅然とした態度を取り戻したのはさすがだと言えよう。
加えて貴人たる者、いつだって万人に平等に接するべしという鉄則でもあるのか。
根掘り葉掘り出自について聞かれるわけでもなく、見事な口元だけ微笑で終始穏やかに対応された。
おまけに農具は武具ではない、武具にしてもならないへの理解も早かった。
言うまでもなくできる系だ。
確かクリス・タルミントキ・シリッシュと名乗っていたか。
宰相でもある彼が裏で事細かく指示を出していることは間違いないだろう。
(さてと…どこに行こうかなぁ)
与えられたのは宿泊塔の一階の一番端の部屋だが、長くひんやりとした回廊を終えても誰にも会わない。
そっとそのまま裏庭へと足を踏み入れた。
目の前に広がるのは青々としていながらも幾何学的にも整えられたとても美しい庭だ。
木々や草花の香りを吸いこんで、わずかの時間その造形に魅入る。
とまたトテトテトテ…と歩き始めた。
とにかく広い。
だだっ広いと称した方が相応しいだろう。
だが庶民に一般公開された離宮ゆえなのか、要所要所に地図が書かれた立て看板がある。
王が出入りする施設の安全対策としてはどうなのかなぁとも思えるが、おそらくは守りに自信があるのだろう。
(あ、誰か来る…)
ブラブラと散策しているとどこからともなく足音が聞こえてきた。
無意識に足に力がこもる。
そのままピョーンと跳ね上がった。
スタンッと地に降りて、またピョーンと。
そう、なぜだかものすごく脚力が強いのだ。
いや、基本がカエルだからそうなのだろうか。
でも脚の構造はぬいぐるなのに、どうしてこれほどまでに高く長く跳べるのか当の本人でもよくわからない。
あっという間に距離を離して、またトテトテトテ…と進む。
単に人に会って説明するのが面倒だと思ったからだったが、前方に外に出る門と水堀が見えてくると、なんとなくこのまま帰っちゃおうかな、帰りたいなぁという気持ちになってきた。
(いや、それはさすがにまずいかな…)
園遊会に招かれたということはこの上ない誉れだというのに。
そろそろ引き返そうかという考えに全くならない。
一人くらいいなくたって…とむしろ心は帰る方向にまっしぐらだ。
昨日の参加者から何人が声をかけられたかなんてわからない。
だが園遊会には海外からの王族を始め、名だたる貴族、権力者が毎回ふるって参加しているらしいのだ。
だから自分くらいいなくたっていいじゃないかと。
そうだ、帰ったっていいはずだと。
よっし、帰っちゃえ。
と段々その気が増してきた。
(あの門を越えたら…)
晴れて自分は自由を得られるのだ。
腹の小袋の中には王家主催の婚活事業に参加するにあたって発行された特別な身分証も入れっぱなしだ。
これを見せて専用駅馬車を乗り継いで帰ればいい話なのだ。
帰路の食事も約束されている。
そしてこの身分証を持ち帰れば、村に奨励金だって出るはずだ。
二次は出なくても一次はちゃんと出たのだから。
(外を散策していたら、急にお腹が痛くなって…)
気が付けば時間を過ぎていたのでそのまま帰りました――そんな理由はどうだろうか。
ちょっと子供じみた言い訳ではあるが悪くはないと思う。
(だって帰りたいんだもん!!)
と思い始めたらもう止まらない。
そのままトテテテテ…とものすごい勢いで手を振り、足を速めて大きな門を目指し、いざくぐろうとした矢先に、
「ど、どうされました?」
と声をかけられた。
加えて貴人たる者、いつだって万人に平等に接するべしという鉄則でもあるのか。
根掘り葉掘り出自について聞かれるわけでもなく、見事な口元だけ微笑で終始穏やかに対応された。
おまけに農具は武具ではない、武具にしてもならないへの理解も早かった。
言うまでもなくできる系だ。
確かクリス・タルミントキ・シリッシュと名乗っていたか。
宰相でもある彼が裏で事細かく指示を出していることは間違いないだろう。
(さてと…どこに行こうかなぁ)
与えられたのは宿泊塔の一階の一番端の部屋だが、長くひんやりとした回廊を終えても誰にも会わない。
そっとそのまま裏庭へと足を踏み入れた。
目の前に広がるのは青々としていながらも幾何学的にも整えられたとても美しい庭だ。
木々や草花の香りを吸いこんで、わずかの時間その造形に魅入る。
とまたトテトテトテ…と歩き始めた。
とにかく広い。
だだっ広いと称した方が相応しいだろう。
だが庶民に一般公開された離宮ゆえなのか、要所要所に地図が書かれた立て看板がある。
王が出入りする施設の安全対策としてはどうなのかなぁとも思えるが、おそらくは守りに自信があるのだろう。
(あ、誰か来る…)
ブラブラと散策しているとどこからともなく足音が聞こえてきた。
無意識に足に力がこもる。
そのままピョーンと跳ね上がった。
スタンッと地に降りて、またピョーンと。
そう、なぜだかものすごく脚力が強いのだ。
いや、基本がカエルだからそうなのだろうか。
でも脚の構造はぬいぐるなのに、どうしてこれほどまでに高く長く跳べるのか当の本人でもよくわからない。
あっという間に距離を離して、またトテトテトテ…と進む。
単に人に会って説明するのが面倒だと思ったからだったが、前方に外に出る門と水堀が見えてくると、なんとなくこのまま帰っちゃおうかな、帰りたいなぁという気持ちになってきた。
(いや、それはさすがにまずいかな…)
園遊会に招かれたということはこの上ない誉れだというのに。
そろそろ引き返そうかという考えに全くならない。
一人くらいいなくたって…とむしろ心は帰る方向にまっしぐらだ。
昨日の参加者から何人が声をかけられたかなんてわからない。
だが園遊会には海外からの王族を始め、名だたる貴族、権力者が毎回ふるって参加しているらしいのだ。
だから自分くらいいなくたっていいじゃないかと。
そうだ、帰ったっていいはずだと。
よっし、帰っちゃえ。
と段々その気が増してきた。
(あの門を越えたら…)
晴れて自分は自由を得られるのだ。
腹の小袋の中には王家主催の婚活事業に参加するにあたって発行された特別な身分証も入れっぱなしだ。
これを見せて専用駅馬車を乗り継いで帰ればいい話なのだ。
帰路の食事も約束されている。
そしてこの身分証を持ち帰れば、村に奨励金だって出るはずだ。
二次は出なくても一次はちゃんと出たのだから。
(外を散策していたら、急にお腹が痛くなって…)
気が付けば時間を過ぎていたのでそのまま帰りました――そんな理由はどうだろうか。
ちょっと子供じみた言い訳ではあるが悪くはないと思う。
(だって帰りたいんだもん!!)
と思い始めたらもう止まらない。
そのままトテテテテ…とものすごい勢いで手を振り、足を速めて大きな門を目指し、いざくぐろうとした矢先に、
「ど、どうされました?」
と声をかけられた。
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