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4章:返り咲いちゃいました~そしてカエルは王妃に~
泣いて嫌がる理由
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わぁっとまた泣き出して。
いや、そうだったのか、その隠し球はさすがに読めなかったなと苦笑いをする。
だが年齢を誤魔化していようともなんの障害にもならない。
「ほんとは二十七なのか…ふふっ…年上でもかまわない、好きだよ」
「ちがっ…ちがっ…じゃなく・・・って…見た…見た目が…ふっ…うっ…ケロロロ…」
「ヘケロ…おそらくはオレの霊感なのだろうが、時折ふわっと青い瞳の人間の顔が重なって視えることがあった。
それは何一つ問題がないどころか、むしろカエルの容姿とともにものすごく好きだ」
とうなだれている後頭部に優しく話しかける。
この言葉は慰めでもなんでもなくて真実であって。
初めて間近で対面した時に感じ取ってから心より惹かれているのだ。
嘘じゃない。
ただ今よくよく振り返ってみると確かに二十七には見えない。
一般的には成人の手前かといった年齢層の容貌だ。
(つまり…)
ヘケロが恥じている姿と自分が視ている姿が一致していない可能性がある。
そうでなくては気にしなくてもいい見た目を泣いて嫌がっている理由が思い付かない。
(おじさん…だから…か…)
そう口にするということは実際はもっと老けた容姿だったということか。
いや、謙虚な性格であることを踏まえると、この場合は年齢相応だったと考えるのが適切だろう。
おじさんというよりは若者として落ち着いた外見だったのだろう。
それか雄々しかったのではないかと推測できる。
だが、だとしたならば、自分がこの目に感知している愛くるしい姿はどういうことなのか。
年齢を詐称していただけあって、根底には若返り願望でもあるのか。
その若く見られたいという無意識下における欲求と理想像が表面化し、それを知覚しているということなのか。
それともこの先訪れるであろう未来の姿、つまり予知なのか。
(予知だな、これは…)
そうだ、そういうことにしよう。
こういう不確定要素が多い場合は一括りに予知にすればいい。
仮に今の時点でそうでなくても、現在をその望む未来へと寄せていけばいいだけの話だ。
そのためにはまず――
「ヘケロ、二つほど確認させてくれ。
いいか?」
と腕の中でまだ肩を震わせている、この上なく愛しい存在を抱え直した。
「は、はい…ふっ…っ…ケロロロ…」
「サバを読んでいた理由は若く見られたかったからなのか?」
「あっ…そ、それは、それは違いますっ…ケロ」
「では、どうして?」
「そ、それはその……ケロ」
わずかに躊躇するような様子を見せた後におずおずと口を開いた。
「その…前の…身元に繋がることのないように…です…ケロ」
「ん、なるほど、そうか」
反応を窺うように見つめてくる黒い瞳に微笑みで返す。
そんなことはたいした理由ではないと受け取った気持ちを示すためにだ。
けれども、その返答で確信に至る。
やはりこだわっているのは若さではない、元の自分だ。
元の自分には戻りたくないのだ。
「ぼ、ぼ、ぼくは…前の自分は…好きじゃない…です…ケロ」
「ん、そうなのか、なぜだ?」
「それは…その…つまりあの……ケロ」
そのまま黙りこんでしまった姿に呪いをかけられる前の人間だった頃に何かつらいことがあったのだろうと察する。
(約四年前の…聖地オカッシーからの帰路、確かブルルボン小国とモリーナ・ガ王国のちょうど国境沿いだったか…)
マブール村長から聞いた話では、巡礼街道でたまたま倒れかかっているところに出くわし、水を飲ませて介抱した時からの縁とのことだった。
(そうか…)
いや、そうだったのか、その隠し球はさすがに読めなかったなと苦笑いをする。
だが年齢を誤魔化していようともなんの障害にもならない。
「ほんとは二十七なのか…ふふっ…年上でもかまわない、好きだよ」
「ちがっ…ちがっ…じゃなく・・・って…見た…見た目が…ふっ…うっ…ケロロロ…」
「ヘケロ…おそらくはオレの霊感なのだろうが、時折ふわっと青い瞳の人間の顔が重なって視えることがあった。
それは何一つ問題がないどころか、むしろカエルの容姿とともにものすごく好きだ」
とうなだれている後頭部に優しく話しかける。
この言葉は慰めでもなんでもなくて真実であって。
初めて間近で対面した時に感じ取ってから心より惹かれているのだ。
嘘じゃない。
ただ今よくよく振り返ってみると確かに二十七には見えない。
一般的には成人の手前かといった年齢層の容貌だ。
(つまり…)
ヘケロが恥じている姿と自分が視ている姿が一致していない可能性がある。
そうでなくては気にしなくてもいい見た目を泣いて嫌がっている理由が思い付かない。
(おじさん…だから…か…)
そう口にするということは実際はもっと老けた容姿だったということか。
いや、謙虚な性格であることを踏まえると、この場合は年齢相応だったと考えるのが適切だろう。
おじさんというよりは若者として落ち着いた外見だったのだろう。
それか雄々しかったのではないかと推測できる。
だが、だとしたならば、自分がこの目に感知している愛くるしい姿はどういうことなのか。
年齢を詐称していただけあって、根底には若返り願望でもあるのか。
その若く見られたいという無意識下における欲求と理想像が表面化し、それを知覚しているということなのか。
それともこの先訪れるであろう未来の姿、つまり予知なのか。
(予知だな、これは…)
そうだ、そういうことにしよう。
こういう不確定要素が多い場合は一括りに予知にすればいい。
仮に今の時点でそうでなくても、現在をその望む未来へと寄せていけばいいだけの話だ。
そのためにはまず――
「ヘケロ、二つほど確認させてくれ。
いいか?」
と腕の中でまだ肩を震わせている、この上なく愛しい存在を抱え直した。
「は、はい…ふっ…っ…ケロロロ…」
「サバを読んでいた理由は若く見られたかったからなのか?」
「あっ…そ、それは、それは違いますっ…ケロ」
「では、どうして?」
「そ、それはその……ケロ」
わずかに躊躇するような様子を見せた後におずおずと口を開いた。
「その…前の…身元に繋がることのないように…です…ケロ」
「ん、なるほど、そうか」
反応を窺うように見つめてくる黒い瞳に微笑みで返す。
そんなことはたいした理由ではないと受け取った気持ちを示すためにだ。
けれども、その返答で確信に至る。
やはりこだわっているのは若さではない、元の自分だ。
元の自分には戻りたくないのだ。
「ぼ、ぼ、ぼくは…前の自分は…好きじゃない…です…ケロ」
「ん、そうなのか、なぜだ?」
「それは…その…つまりあの……ケロ」
そのまま黙りこんでしまった姿に呪いをかけられる前の人間だった頃に何かつらいことがあったのだろうと察する。
(約四年前の…聖地オカッシーからの帰路、確かブルルボン小国とモリーナ・ガ王国のちょうど国境沿いだったか…)
マブール村長から聞いた話では、巡礼街道でたまたま倒れかかっているところに出くわし、水を飲ませて介抱した時からの縁とのことだった。
(そうか…)
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