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4章:返り咲いちゃいました~そしてカエルは王妃に~
まさかの前祝い
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「おそらくは陛下のことはお慕い申し上げているものの、とてもじゃないけれど王妃なんて…とご不安に思われていることでしょう。
だからこその遷都、だからこその遠距離婚なのです。
ご理解頂けますね?」
とすぐさま味方を増やそうと取り入っている姿には脱帽しかない。
「宰相、少し待ってくれ。
ヘケロが混乱している」
「陛下、混乱を避けるための家臣たちの案なのでございますぞ!!」
「いや、だから、いろいろと気持ちはありがたいが…検討および熟考が必要なのではないか」
「そういった諸々のご不安を取り除くための前祝いもご用意しております」
「前祝い?」
「はい、陛下、少々お待ち下さいませ。
お呼びしろ!!」
パンパン、パンパンと侍従長兼宰相歴六十年以上の老人が手を叩き、ザッと従者たちが動く。
えっほ、えっほと縦に長い箱型の、しっかりした屋根と中には座席が付いた大きな駕籠を運んで来た。
ドンッと目の前に置かれるや否や、パタンと壮麗な扉が開けられる。
「!!」
中から出てきた人物に目を見開いた。
「陛下、この度はご成婚、誠におめでとうございます」
跪いて恭しく祝辞を述べるのはまさかの老魔術師――イソップドゥ・ワーだ。
喉から手が出るほど、もれなく必要としていた存在が目の前に現れた。
(やられた…完全にやられた…)
この状況を掌中に収めているのは紛れもなく宰相クリス・タルミントキ・シリッシュだ。
完璧なまでに仕切られた。
「陛下、いつ何時も変わらずになんとも、お美しい。
お手にいつものように忠誠の証を示してもよろしいでしょうか」
「ん…かまわない」
動揺していることなど露とも感じさせまいと。
目をキラキラと輝かせている魔術師に手を差し出す。
とチュッ、チュッと口づけてきた。
正直気分のいいものではないが、利用価値の高い相手なのだ。
我が身の見てくれに骨抜きだというのなら活用しない手はない。
「それで前祝いとは?」
「はい、背後に控えまするジセイカ艦隊には王都を建築する資材が積まれておりまして、場所さえ確定すれば、すぐにでも着手可能です。
ただ、もし陛下とヘケロ妃殿下の婚姻の儀を新しい王都でとなりますとさすがに少々時間を要します。
いや、そもそも婚姻の儀に際して…そうだ、なにかしらのご用命が陛下からあるのではと推測し、イソップドゥ・ワー殿にもご同行して頂いた次第でございます」
(見事だ…実に見事だ…)
ほのめかしているのはヘケロの外見についてだ。
宰相にしてみれば、呪いがかけられていようがいまいが関係ないのだろう。
過去と現状はさておき、未来はどうするのだと突き付けている。
まさか、そのままで婚姻の儀をするつもりはないだろう、ではどうするかで先手を打った。
その先見の明、言うことなしだ。
「陛下、僭越ながら、お望みのままに祝福させて頂きます」
目尻を下げた老魔術師の言葉に微笑みで返す。
もはや取るべきスタンスは決まっている。
隣に座って、何がなんだかといった感で呆然としているカエル姿の腕を取ると一緒に立ち上がらせた。
そして高らかに告げた。
「偉大なる魔術師イソップドゥ・ワーよ、我と我が番のためにご足労頂き、心より感謝申し上げる。
またシリッシュ宰相を始めとする、我の忠臣たちの我々に対する熱意と尽力にもだ。
みな、誠にありがとう。
とても嬉しい」
もうこうなったら王に返り咲くしかなくって。
本当に開き直るしかない。
だからこその遷都、だからこその遠距離婚なのです。
ご理解頂けますね?」
とすぐさま味方を増やそうと取り入っている姿には脱帽しかない。
「宰相、少し待ってくれ。
ヘケロが混乱している」
「陛下、混乱を避けるための家臣たちの案なのでございますぞ!!」
「いや、だから、いろいろと気持ちはありがたいが…検討および熟考が必要なのではないか」
「そういった諸々のご不安を取り除くための前祝いもご用意しております」
「前祝い?」
「はい、陛下、少々お待ち下さいませ。
お呼びしろ!!」
パンパン、パンパンと侍従長兼宰相歴六十年以上の老人が手を叩き、ザッと従者たちが動く。
えっほ、えっほと縦に長い箱型の、しっかりした屋根と中には座席が付いた大きな駕籠を運んで来た。
ドンッと目の前に置かれるや否や、パタンと壮麗な扉が開けられる。
「!!」
中から出てきた人物に目を見開いた。
「陛下、この度はご成婚、誠におめでとうございます」
跪いて恭しく祝辞を述べるのはまさかの老魔術師――イソップドゥ・ワーだ。
喉から手が出るほど、もれなく必要としていた存在が目の前に現れた。
(やられた…完全にやられた…)
この状況を掌中に収めているのは紛れもなく宰相クリス・タルミントキ・シリッシュだ。
完璧なまでに仕切られた。
「陛下、いつ何時も変わらずになんとも、お美しい。
お手にいつものように忠誠の証を示してもよろしいでしょうか」
「ん…かまわない」
動揺していることなど露とも感じさせまいと。
目をキラキラと輝かせている魔術師に手を差し出す。
とチュッ、チュッと口づけてきた。
正直気分のいいものではないが、利用価値の高い相手なのだ。
我が身の見てくれに骨抜きだというのなら活用しない手はない。
「それで前祝いとは?」
「はい、背後に控えまするジセイカ艦隊には王都を建築する資材が積まれておりまして、場所さえ確定すれば、すぐにでも着手可能です。
ただ、もし陛下とヘケロ妃殿下の婚姻の儀を新しい王都でとなりますとさすがに少々時間を要します。
いや、そもそも婚姻の儀に際して…そうだ、なにかしらのご用命が陛下からあるのではと推測し、イソップドゥ・ワー殿にもご同行して頂いた次第でございます」
(見事だ…実に見事だ…)
ほのめかしているのはヘケロの外見についてだ。
宰相にしてみれば、呪いがかけられていようがいまいが関係ないのだろう。
過去と現状はさておき、未来はどうするのだと突き付けている。
まさか、そのままで婚姻の儀をするつもりはないだろう、ではどうするかで先手を打った。
その先見の明、言うことなしだ。
「陛下、僭越ながら、お望みのままに祝福させて頂きます」
目尻を下げた老魔術師の言葉に微笑みで返す。
もはや取るべきスタンスは決まっている。
隣に座って、何がなんだかといった感で呆然としているカエル姿の腕を取ると一緒に立ち上がらせた。
そして高らかに告げた。
「偉大なる魔術師イソップドゥ・ワーよ、我と我が番のためにご足労頂き、心より感謝申し上げる。
またシリッシュ宰相を始めとする、我の忠臣たちの我々に対する熱意と尽力にもだ。
みな、誠にありがとう。
とても嬉しい」
もうこうなったら王に返り咲くしかなくって。
本当に開き直るしかない。
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