30 / 40

さぁ殿さまの登場です

しおりを挟む
 で終わるはずがなく。

 このように――
 お盆の四日間は、キングアルファであるおじいさんの半端ない性戯によってなだれこむようにして強制盆ヒートになってしまったおばあさん。
 おばあさんを寝具の上に沈めた状態でおじいさんは出かけます。
 予定を変えたくても、さすがに殿さまに日を改めてまた来て下さいとは言いづらかったからです。
 殿さま行進パレードも予定されています。

「すぐに帰ってくるからね」

 抱き潰した妻の髪を優しく撫でた後に甘く口づけて。
 手の届くところにはズラリと食べ物やら飲み物、日用品やら娯楽品などを全て並べて。
 戸締まりもしっかりして、要所要所に致死に至るトラップも仕掛けて、狂犬に近い番犬たちも庭に放って。
 万全な状態にして、おじいさんが、さぁ出発です。

「ん…?」

 愛馬のいる馬小屋にいけば、地面に玉手箱が置いてありました。
 朱色の紐が括られた、黒の漆に金色の唐草模様の豪華な箱には見覚えがあります。
 地面を見れば、なにやら文字が書かれていました。

―おじいさんへ
  殿さまを誘いこむ時に
   撒いて使って下さい―

 見れば、文字より遙かに広い幅を使って英数字記号絵アスキーアートが描かれています。
 誰からなのかがすぐにわかりました。
 ジゾーズです。
 六人しっかりとかなり上手に描かれています。
 意味は分かりませんでしたが、一応は仏さまの眷属なので持っていくことにしました。

「ここがいいかな…」

 仏の加護を受けた白馬を走らせてたどり着いた先は、街道になる予定の候補道と林道に別れる岐路でした。
 多分ここまではちゃんと来るよねと。
 おじいさんは少し思案します。
 本来の道ではなく家よりも遠くなる林道へと殿さまを誘導したいのです。
 前方にそっと視線を注いでみましたが、まだ誰もいない雰囲気なのです。
 道を間違えた可能性も否定できません。
 どうしようかなと思いながら。
 手持ち無沙汰だったので先ほどの玉手箱を開けてみました。

 すると、ぴゅうっと風が吹きました。
 ふわぁっと箱の中に入っていた白い粉が飛んでいきます。
 おじいさんが非合法の薬だったらどうしようと心配したその刹那、パンッと側の木に花が咲きました。
 続けて、パンパン、パンパンッと。
 あってるんだか、あってないんだかわからない音とともに。
 枝が次々と花を咲かせていきます。
 そのキラキラとしながら神秘現象が遠ざかり広がっていく様はまるで。
 仏風に吹きつけられて咲かせてゆくのさ、おじいさんの居場所。
 仏風に吹きつけれられて広がってゆくのさ、おじいさんの美しさのように。
 そんな風に思わずしっとりと歌いこみたくなるほどです。

「う、うつくしーーっ!!」

 遠くで誰かが叫ぶ声がしました。

「う、うつくしーーっ!!」

 さらに反射音エコーがかかったかのように続けて誰かがまた叫びました。
 その声は激しく同意しかないという同志の叫びへとさらに繋がり、そのまま繋がって繋がって繋がって。
 しまいには、

「う、うつくしーーっ!!」

 と駕籠かごから顔を出した殿さまが叫びました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~

大波小波
BL
 鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。  彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。  和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。  祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。  夕食も共にするほど、親しくなった二人。  しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。  それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。  浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。  そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。  彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...