8 / 157
魔王の誘い
⑧
しおりを挟む
らせん状に波打つ円形の陣を作り終わると、ラシュレスタがそのまま宙で優美に人差し指を躍らせた。指先から出る銀色の光が宙という石版に勅令を刻みつけるがごとく、魔陣の上部でツラツラと文字を綴っていく。
『一.行為は今からニの刻までに終わらせ、射精は一度のみ。体外で出す。
二.容姿は今の姿のままで。内なる獣の表層化を禁ず。口づけも不可。
三.上記の内容で一度想いを遂げた後は、二度と口に出さない、しないと誓う。
四.条件と約束を破りし時は契約時にかけた倍の制裁をその身で受け、
契約者であるラシュレスタの希望を叶える』
制限を具体的に設けなくては果てしなく付き合う羽目となる。そんなリスクを回避するための文言。
自らの体液と上質な魔気を使ってまでの正統儀式。自分の本気は見せた。さぁ、どうでる? とラシュレスタが魔王に視線で問いかける。
「おぅおぅ・・・これはこれは・・・なんともやたらと一方的で細かいではないか・・・フフフ・・・口づけは嫌よぉ~ とは、どこぞの高級娼婦のようではないか・・・フフフ・・・内なる獣はやめてぇ~ とは、そなたは初夜に臨む気位の高い処女の姫君か? フフフ・・・ん~?」
いちいち声に出して読んで終えた魔王が、愉快げに茶化す。
「この爺の姿でニの刻までに一度のみときたか・・・しかも外へ出せとはのぅ・・・フフ・・・我としてはそのように早漏に思われても困るがのぅ・・・フフフ・・・・・・だが・・・」
魔王が赤い舌で黒く乾いた上唇をペロリと濡らすと立ち上がった。
「そなたの蜜は飲み放題ときたか・・・フッ・・・そこは太っ腹か・・・」
突如、その瞳にギンッとした赤光が宿った。
「かつて四枚羽の上級天使、寵愛を一身に受けていた者よ。堕天の身でありながら、なおも繋がり続ける者よ。ラシュレスタ・・・・・・我はそなたの条件を飲み、そなたを味わい尽くしてやろうぞ。このゼフォー、この契約、しかと受け入れる。この力を持ってして」
瞬時にして正気を取り戻し、嫉妬をまぶしたかのような低い声音。バシュッ!! と長く黒い爪が老躯を装う手首をかっ切た。溢れ出た黒い体液をまき散らかすかのようにして手を大きく振る。
バチバチバチバチッ・・・・・・ボワッッ!!
魔陣と接触した箇所が火花を派手に散らし、間髪入れずに天上まで上がった漆黒の炎と煙が禍々しい黒龍を型取る。
ボボボボボボォォォォーーーブォォオオオオォォォォーーー
大きく口を開けた龍が低いうなり声を上げて飲みこむがごとく、ラシュレスタの魔陣を覆い尽くした。
『一.行為は今からニの刻までに終わらせ、射精は一度のみ。体外で出す。
二.容姿は今の姿のままで。内なる獣の表層化を禁ず。口づけも不可。
三.上記の内容で一度想いを遂げた後は、二度と口に出さない、しないと誓う。
四.条件と約束を破りし時は契約時にかけた倍の制裁をその身で受け、
契約者であるラシュレスタの希望を叶える』
制限を具体的に設けなくては果てしなく付き合う羽目となる。そんなリスクを回避するための文言。
自らの体液と上質な魔気を使ってまでの正統儀式。自分の本気は見せた。さぁ、どうでる? とラシュレスタが魔王に視線で問いかける。
「おぅおぅ・・・これはこれは・・・なんともやたらと一方的で細かいではないか・・・フフフ・・・口づけは嫌よぉ~ とは、どこぞの高級娼婦のようではないか・・・フフフ・・・内なる獣はやめてぇ~ とは、そなたは初夜に臨む気位の高い処女の姫君か? フフフ・・・ん~?」
いちいち声に出して読んで終えた魔王が、愉快げに茶化す。
「この爺の姿でニの刻までに一度のみときたか・・・しかも外へ出せとはのぅ・・・フフ・・・我としてはそのように早漏に思われても困るがのぅ・・・フフフ・・・・・・だが・・・」
魔王が赤い舌で黒く乾いた上唇をペロリと濡らすと立ち上がった。
「そなたの蜜は飲み放題ときたか・・・フッ・・・そこは太っ腹か・・・」
突如、その瞳にギンッとした赤光が宿った。
「かつて四枚羽の上級天使、寵愛を一身に受けていた者よ。堕天の身でありながら、なおも繋がり続ける者よ。ラシュレスタ・・・・・・我はそなたの条件を飲み、そなたを味わい尽くしてやろうぞ。このゼフォー、この契約、しかと受け入れる。この力を持ってして」
瞬時にして正気を取り戻し、嫉妬をまぶしたかのような低い声音。バシュッ!! と長く黒い爪が老躯を装う手首をかっ切た。溢れ出た黒い体液をまき散らかすかのようにして手を大きく振る。
バチバチバチバチッ・・・・・・ボワッッ!!
魔陣と接触した箇所が火花を派手に散らし、間髪入れずに天上まで上がった漆黒の炎と煙が禍々しい黒龍を型取る。
ボボボボボボォォォォーーーブォォオオオオォォォォーーー
大きく口を開けた龍が低いうなり声を上げて飲みこむがごとく、ラシュレスタの魔陣を覆い尽くした。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
その男、ストーカーにつき
ryon*
BL
スパダリ?
いいえ、ただのストーカーです。
***
完結しました。
エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。
そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。
ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】余四郎さまの言うことにゃ
かずえ
BL
太平の世。国を治める将軍家の、初代様の孫にあたる香山藩の藩主には四人の息子がいた。ある日、藩主の座を狙う弟とのやり取りに疲れた藩主、玉乃川時成は宣言する。「これ以上の種はいらぬ。梅千代と余四郎は男を娶れ」と。
これは、そんなこんなで藩主の四男、余四郎の許婚となった伊之助の物語。
【完結】奪われて、愛でられて、愛してしまいました
* ゆるゆ
BL
王太子のお飾りの伴侶となるところを、侵攻してきた帝王に奪われて、やさしい指に、あまいくちびるに、名を呼んでくれる声に、惹かれる気持ちは止められなくて……奪われて、愛でられて、愛してしまいました。
だいすきなのに、口にだして言えないふたりの、両片思いなお話です。
本編完結、本編のつづきのお話も完結済み、おまけのお話を時々更新したりしています。
本編のつづきのお話があるのも、おまけのお話を更新するのもアルファポリスさまだけです!
レーシァとゼドの動画をつくりました!(笑)
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから飛べます!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる