最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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会いたくて

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 「我の魔鏡に目をつけるとはのぅ・・・やれやれぇ~ ほんとに抜け目のない奴よのぅ・・・ここまで育て上げるのに、ど~れだけかかったと思っているのだぁ・・・まるごと、そなたに与えるとなると、また契約で結構な力を使うしのぅ・・・ふぅ・・・我の回復が長引くではないかぁ・・・ん~?」

  一種のもったいつけなのか。渋る魔王にラシュレスタが腹立たしげに心の中で問いかける。

 それならそれで、繋がりをまたより長く深く実感できて、なおさらいいだろうに―――

 だが、そんな本音は絶対に口には出さない。面白くない感情と内面で向き合いながら、相手の出方を待つ。

 「まぁ、そなたの気持ちもわからなくもないからのぅ・・・フフフ・・・そりゃ~ なにがなんでも見たいモノがあるよのぅ・・・フフフ・・・ま、でも、アレはめったに降臨はせぬがのぅ・・・」

 そう告げたきり「あぁ~」だの「ぅん~」だの、ぼやくように繰り返している鏡面を忌々しく見つめ続ける。こちらの心情をわかってて、わざと時間をかけているのだ。重ね重ね、許しがたい。

 「一つにせぬかぁ~ 鏡も欲しいのぉ~ だの、解いてぇ~ だの、ねだりすぎだと思わぬのかぁ~? ただでさえ、さっきのことで? 回復に百五十年はかかるというのに、ここでさらに新しい契約と鏡の再生利用? 我はどうなるのだぁ~? ん~?」

 「・・・・・・仮に結果、三百年かかることになろうと、人間界での換算時間など・・・・・・魔界では取るに足らない刻。老体慰労休暇にはもってこいなのでは?」

 いかにも魔界における経過速度で話しているようで、実はそうではない。やり方がいやらしいのだ。とにかく。

 「ふん・・・言ってくれるのぅ・・・・・・確かに人間界での三百年だがのぅ・・・ん~・・・まぁよい・・・実によき味に、よき締まり具合、それによき働きだったことは確かだからのぅ・・・ラシュレスタよ・・・まったく、そなたは・・・フフフ・・・我を満足させてくれた褒美をやらねばのぅ・・・褒美をのぅ・・・」

 泥沼の湖面が張り付いたような鏡面の向こうで、バチュッ!! と音がする。ダラダラと黒い体液を垂らしながら、黒煙をまとわりつかせた片腕がぬうっと現れた。

 バンッ!!

 宙でキラキラと待機していた陣に、汚れた手を叩きつける。そのまま、べったりと液をこびりつけた。

 さらに伸び上がると、魔鏡の縁をぐちょぐちょと今にも溶け落ちそうな手で撫でていく。あまりにも強烈な邪気と腐臭に、ギャァァッ・・・と本体と分身たちが身をよじらせた。

 「ラシュレスタ・・・・・・我は此度のそなたの働きに免じて・・・これらの条件を飲んでやろうぞ。このゼフォー、この契約、しかと受け入れる。この力を持ってして」
 
 バチバチバチバチッ・・・・・・ボワッッ!!

 接触した部分から火花が派手に上がり、漆黒の炎と煙が禍々しい黒龍を型取る。

 ボボボボボボォォォォーーーブォォオオオオォォォォーーー

 大きく口を開けた龍がラシュレスタの陣と魔鏡を覆い尽くした。

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