最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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会いたくて

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 「あ、はい。白い光の鳩がどこからともなくバルコニーに降りてきて鳴いて知らせ、ドアを開けると入ってきて手紙に変化します」

 サツが自分の存在をアピールするために、インより先に口を開いた。

 「どこに保管してある?」

 「あ・・・それは・・・えっと・・・」

 サツが言い澱むと、自分が話していたのに・・・と内心ムッとしていたインが素早く割りこんだ。

 「手紙を開封すると光の文字が宙に浮かび上がるのですが、ゼフォーさまが読み終えられると、その闇の強大なお力の前に光の属性の維持ができないのでしょう。役目を終えたとばかりにいつも消え去るので、保管しておくことはできません」

 説明に納得がいくと同時に、内容が気になる。過去に何度受け取り、どういった中身だったのか。自分に隠していたことから推測しても、かなり私的な―――? 

 そう考えた途端、チリ・・・とした苦い感覚が湧いた。それはあからさまな嫉妬。どうしようもないほどの。ラシュレスタが自嘲気味に、わずかに眉をひそめた。

 「イン、サツ・・・・・・ここに」

 名前を呼ばれた上、手招きされて、淫魔たちが顔を嬉々としてほころばす。サササッ・・・と駆け寄り、魔陣の手前で両手両膝をついてキラキラした瞳で見上げた。

 「なんでございましょうか。魔王妃さま」

 「・・・・・・魔王妃とは呼ぶな。魔王代理だ。いいな?」

 「も、申し訳ございません」
 
 インの空気の読めなさをサツがそつなく詫びた。

 「あるじ不在の城の管理をよろしく頼む。なにかあったら連絡を。特に、天界から書簡が届いたら、すぐさま知らせろ」

 「はい!!」

 「立て」

 「はい!!」

 淫魔たちがすかさず立ち上がり、ラシュレスタが親指の爪でピッと人差し指の腹を弾く。出てきた体液をペロリと舐めると、まずはインの額に指をあて、もう一度舐めるとサツの額にのせた。

 「ハァァ~~アァァ~~」

 二体が大きく息を飲んで、そのまま、へにゃへにゃ~ と床に尻をつく。憧れの存在からの、香り立つような天界属性がまぶされた魔霊気。

 上級魔族によるマーキング行為。それは低俗な下等魔族からすれば、極上の振る舞い。天界における祝福に近い。

 魔王の手垢がついた下僕たちには過ぎたる行為だが、何かの折に役に立つかもしれないとあえて与えて、手なづけておく。

 「では、城に帰る」

 ぽやんと放心状態の二体に向けて告げ、ラシュレスタがバサリとケープを片手で優雅に持ち上げて振った。

 途端に、その美姿と魔鏡、そして魔陣がスッと大気に溶け込むようにして消え去った。


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