最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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陰謀 出現 そして・・・

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 「西の?」

 「えぇ・・・そのうち北も南も作りそうで嫌になります・・・唯一の座だからこそいいのに・・・そう思いませんか? 東の魔王妃ラシュレスタさま」

 そういうことかとラシュレスタが即座に合点する。

 リリートゥがねだることで、あわよくば魔王妃の解除に至ればと思っていたが、追加ときたか。なんとも、みみっちい。なにが東の魔王妃だ。西も東もあるものか。本当に忌々しい。

 「それでね、ラシュレスタさま・・・お会いしたら、お渡しするように言われてますの・・・コボルト、アレを」

 「はっ」

 この者にとってプライドなんて元より不要なのだろう。すがすがしいまでに下僕に徹するコブ公爵が右手に黒い渦を作り上げると、ラシュレスタに向けてヒュンッと放った。

 バシッ

 ルーカを魔霊気で宙に固定したまま、飛んできた白い物体を片手で掴む。目を大きく見開いた。

 (まさか・・・そんな・・・)

 こんなことが許されるはずがない―――持つ手に震えが走る。

 「わたくしたち、お揃いですのよ・・・うふふ・・・」

 コボルトから恭しく差し出された物体をリリートゥがバサッと開いて、煽ぐ。天使の羽根でできた扇子。ところどころ体液でキラキラと光っている。

 「極上の質でしょう? 軽くて本当にきれい・・・コボルト、ほら、どんな鳥さんなのか、見せて差し上げないと」

 「はっ、ただいま」

 コボルトが愕然として身動きのできないラシュレスタにニヤリと笑みを向ける。魔獄谷一万魔族を掲げると、これ見よがしに高らかに口にした。

 「魔王妃さまが所望しております。羽根の元をお出し下さいませ」

 ブワンッと黒く大きな竜巻が鏡面から天井近くまで高く上がるとともに、そのまま渦を巻きながら床の上に降り立った。ビュルルル・・・と黒い気流がひけると同時に現れた物体。

 「!!」

 縦も横も身長の倍はあるだろう幅の、金属でできた鳥かご。中に、翼をもがれた天使が倒れている。

 「そんなバカな・・・」

 見覚えのある容貌。鳥かごの下にたまっていた体液が床へと流れ落ち、広がっていく。

 (あぁ・・・ネミルバ・・・)

 なぜ、こんな目に―――思った途端に、ラシュレスタの中で腑に落ちる。ルーカの守護天使はネミルバだったのだ。

 ネミルバが襲われ、ルーカの守護が弱まったところを狙われた。それは計画的な蛮行。だが到底、考えられない愚行。

 「・・・なにをしたのか、わかってるのか・・・」

 問いかける声も震える。

 天使を襲撃し、痛めつける。報復といった概念がない天界でも、さすがにそんな悪事を許すはずがない。

 一介の魔族ごときができる勇気もなければ、力もあるはずがない。つまり、この現実が意味することは―――

 呆然とするラシュレスタの前で、場にそぐわない無邪気な声が響いた。

 「これでそろったの? 生け贄の血と願い出る者の血・・・で魔陣を作って~ それから・・・後は、なんて言われてたかしら・・・もぉ、コボルト、やってちょうだい」

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