最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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陰謀 出現 そして・・・

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 (リリートゥ・・・)

 なぜ、ここにいるのか―――驚きのあまりに声が出ない。ラシュレスタが無言のまま凝視する。

 緑がかった褐色の肌がやや黒みを増したように見えるのは、身につけている服装のせいなのか。だが、爛々とした瞳にこもった魔気の力強さは、確実に以前とは異なる。

 「うふふ・・・」

 祭壇の傍らに立つリリートゥが、赤々とした唇に笑みを浮かべた。

 黒をベースにした、紅蓮の炎のように赤いレースや刺繍、装飾玉がふんだんに使われた衣服。

 その胸元はピンと尖った乳首が、大きく開いた孤のラインで下から持ち上げられるようにして、卑猥に露出されている。

 左の腰からスリットの入ったドレスの、花びらのような幾重のフリルが隠すのは右足のみだ。

 左脚では、ガータで留めた黒の網タイツは元より、陰部を隠す下着ですらチラチラと見えている。 

 おまけに、深紅で統一した髪飾りに高いヒール、長い爪―――とくれば、相手の品位に合わせて服装を選んでいたことを踏まえても、今、誰の嗜好に合わせているのかなんて一目瞭然だ。

 もしかして・・・と周囲に探りを入れた途端に、リリートゥが床に転がっていた小動物の干からびた死骸をつま先で蹴った。

 「美しくないのは嫌いなの、どけて。あと、うめいててうるさいし・・・それもどうにかして」

 「はい、魔王妃さま」

 祭壇の陰に隠れていた醜悪な魔族が姿を現した。

 「では、お力をお借りして・・・」

 コボルトがブワンッと手のひらから黒い炎を出し、手鏡よりやや大きい物体をその中から取り出す。

 魔獄谷一万魔族らしき鏡を、サニキニウスを殴り続けている風の戦士へと向けた。

 「魔王妃さまが嫌がっております。片付けて下さいませ」

 ビュォォォォーーーーーッ!!

 鏡の表面が黒い渦を巻いて、気流を吸いこむようにして取りこむ。小動物のミイラもあわせて、一気に消えてなくなった。

 (つながっているのか・・・)

 おそらく魔界で魔鏡本体を使って見ているだろう存在。そして魔王妃という言葉に、媚びを売るようなコボルトの態度。

 状況を察したラシュレスタが、それら全てに舌打ちしたくなる。

 「お久しぶりです、ラシュレスタさま・・・この男、ほんと、バカですのよ。正帝になりたいだの、権力と金が欲しいだの、ある男と猛烈にヤりたいだの・・・欲求だけはすごいくせに、肝心な儀式はできないし、何度となく誘導してやっても、下手くそで、本当にいらつきました」

 ぼやく相手の動向に細心の注意を払いながらも、ラシュレスタが魔霊気のこもった手をルーカの瞳の上に置く。小声で呪を唱えた。

 ふわっと意識を失った身体を自分のマントでくるんで、抱え上げる。魔鏡が出てきてから、一気に増した邪気。

 今からなにが起こるか、まったく予想も油断もできない。だが、ルーカは守らなくてはならない。

 「お変わりはなくて? わたくし、その後、魔王妃になりましたのよ」

 「それはなによりです。実に相応しい。心よりお祝い申し上げます」

 警戒していることなどつゆとも感じさせずに、ラシュレスタがにこやかに応じた。

 「ありがとうございます。でも・・・西のですの・・・」

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