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愛し合う

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 絶え間なく零れ落ちる涙をシャルスティーヤの唇が優しくすくう。

 「そなたは何も悪くない…全ては我のいたらなさだ。すまなかった…本当に」

  (あぁ…シャルスティーヤさま…そんな…そんな…)

 こういう方だから。この方だから。愛しいのだ。ラシュレスタが強く抱きつき、シャルスティーヤもまたしっかりと抱き返す。

 (あぁ、好きです。好きです。大好きです…愛しています…愛しています)

 愛と言うには激しくて。恋と言うには足りなくて。言葉にはできない感情がこみ上げて止まらない。好きで好きでたまらない。

 「我もだ」

 心の中の告白に。しっかりと耳元で答えられて、ラシュレスタの身体に悦びが走り抜けた。

 そっと両腕を取られて、泣き顔を覗きこまれた。フッと微笑まれる。

 優しい指があごにかかる。黄金の睫毛を伏せながら、美しい顔が近づいてきた。

 (ぁっ…)

 シャルスティーヤの唇がラシュレスタの唇に重なった。 

 それはまるで羽毛が舞い降りたような口づけ。わずかな時間だけで離れてしまった唇をラシュレスタが切なげに見送る。

 唇から頬を。指先で愛おしげに何度も何度も撫でながらじっと見つめてくる。

 (シャルスティーヤさま…)

 ラシュレスタもまた潤んだ瞳で見つめ返す。シャルスティーヤがラシュレスタの手を取って、その指先に口づけた。想いのこもった熱い唇に。心が震えた。

 「ラシュレスタ、まずは除去すべきモノを取り除く……いいな?」

 (えっ…)

 言われた言葉の意味が一瞬わからなかったものの、持ち上げられた自分の手を見て、ハッとした。

 黒ずんだ肌に長い爪と。そうだ。自分の身体は完全な魔族にまで堕とされていたのだ。そう自覚した途端に、伸びた歯牙の感覚に、汚された身体の状態を思い起こした。

 (あぁ…)

 こんな姿だから。こんな不浄な身体だから困惑されているのだろうか。不快に思われたのだろうか。

 だから、あれだけで触れるのをやめてしまったのだろうか――じわっと涙ぐむ。そんなラシュレスタの両脇に手をそえて、シャルスティーヤがふわりと持ち上げた。

 キラキラと穏やかな白光を放つ寝具の。中央に、ふわふわとした大きな白いクッションが置かれている。

 その上へ、上半身がのるようにラシュレスタをそっと寝かせた。パサリと長い髪を広げて、驚いた顔で見上げている相手に優しく告げる。

 「そなたの肉体的、心情的負担を考えれば、光の浄化による消滅が最善の方法だとはわかっている。だが…我はどうしても取りたいのだ」

 (えっ…)

 「この我欲を許せ」

 我欲…およそ似つかわしくない言葉に。発した相手の顔をじっと見つめた。一体、何をどうしたいのか。どうして、許せ…なのか。意図がわからずに首を傾げる。

 シャルスティーヤがラシュレスタの身体をくるんでいる白い布の中に手を入れた。

 片足しか履いてなかった銀色のブーツが足からスッと引き抜かれた。パサッ…とそのまま床に落とされて。

 「シャ、シャルスティーヤさま!?」
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