128 / 157
忘却の河のほとりには
3
しおりを挟む
止まらない指がそのまま奥へと進み、
「ンッ・・・」
と甘い声がつい上がった。指先に感じたもの。今もまだ潤みきって、流れ出ているそれは、中にたんまりと出された聖精。
「ハァァァ・・・」
全身に歓喜が走り巡った。ここで、どれほど愛されたか。
なにもかもがわからなくなってしまうほど激しく抱かれて、そして、たくさん、愛の印を注がれた―――
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
ラシュレスタがギュッと両腕で自分を抱きしめた。嬉しくて嬉しくてたまらない。幸せで幸せでたまらない。
(大好き・・・好きです、好きです・・・愛しています・・・)
何度も何度も心の中で問いかける。夢でも見ているのではないかと堂々巡りする気持ち。
でも、この寝具で本当に愛し合ったのだ。確かめるように、滑らかなシーツの上に手を滑らせる。
(あんな風に・・・あんなに激しく・・・されるなんて・・・)
信じられない。本当に信じられないと、また思い浮かべた途端に、ふと疑問が湧いた。シーツを撫でていた手がピタリと止まる。
(もしかして・・・既に・・・どなたかとご経験なさっていたのだろうか・・・)
自分が天界を出て行った後に、誰かと? それとも、いた時にも、自分が気がつかなかっただけで、実は既に?
性愛とは無縁の方と勝手に思いこんでいただけで、愛し合うという行為を経験されていた? だとしたら、それは誰と?
(あぁ・・・)
ラシュレスタが眉根を寄せる。愛し合えたのに。愛し合ったばかりだというのに、すぐ、これだ。すぐ心が乱れるのだ。
シャルスティーヤのこととなると、どうしても嫉妬や不安、疑念が浮上してしまう。本当に情けない。
(もっと、ちゃんとしないとダメだ・・・)
自分に言い聞かせる。けれども、気になって仕方がない。だって、あんなにも・・・と。経験があったとしか思えない。
(あぁ、シャルスティーヤさま・・・どなたかと既にご経験があったのですか?)
宙に向かって、切なげに問いかける。そうでないといいと願いながら。
『無性生殖が可能なのも、この世界で愛を確かめ合うためだ』
告げられた言葉がふいとよぎった。そうだ、あの時―――
(愛を確かめ合うために・・・と、ごく自然と言われてた・・・)
まるで当たり前のことのように。かたや視野が狭かったのか。天使と性愛行為がまったく結びつかなかった自分。
果たして、どれほどの天使が、その欲を持ち合わせているだろうか。
慈愛と調和の光で満ち足りた天界で。おそらくは霊気の強い上位の天使が、望んだ時のみに生殖も可能なのだろうが、そもそも性愛に対しての欲などあるのか。
(自分が気がつかなかっただけなのだろうか・・・)
汚れた行為だとずっと思いこんでいたが、他の天使たちはどうだったのだろうか。無償の愛や同胞愛以外で、愛し合っている者が他にいるのだろうか。
だが考えてみれば、シャルスティーヤに関しては、経験があっても当然なのだ。あれほどまでに美しく、あれほどまでに麗しい方なのだから。
(あぁ・・・)
湧き上がる嫉妬に。ギュッと布を握りしめる。
でも今、愛してくれているのは自分なのだから。気にしなくていいのだ―――と言い聞かせる。
(情けない。すぐにこんな風に・・・落ちこんで・・・)
だから、不出来なのだ。涙ぐみそうになった途端、ツクン・・・と下腹部に小さな違和感を覚えた。
(えっ・・・)
「ンッ・・・」
と甘い声がつい上がった。指先に感じたもの。今もまだ潤みきって、流れ出ているそれは、中にたんまりと出された聖精。
「ハァァァ・・・」
全身に歓喜が走り巡った。ここで、どれほど愛されたか。
なにもかもがわからなくなってしまうほど激しく抱かれて、そして、たくさん、愛の印を注がれた―――
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
ラシュレスタがギュッと両腕で自分を抱きしめた。嬉しくて嬉しくてたまらない。幸せで幸せでたまらない。
(大好き・・・好きです、好きです・・・愛しています・・・)
何度も何度も心の中で問いかける。夢でも見ているのではないかと堂々巡りする気持ち。
でも、この寝具で本当に愛し合ったのだ。確かめるように、滑らかなシーツの上に手を滑らせる。
(あんな風に・・・あんなに激しく・・・されるなんて・・・)
信じられない。本当に信じられないと、また思い浮かべた途端に、ふと疑問が湧いた。シーツを撫でていた手がピタリと止まる。
(もしかして・・・既に・・・どなたかとご経験なさっていたのだろうか・・・)
自分が天界を出て行った後に、誰かと? それとも、いた時にも、自分が気がつかなかっただけで、実は既に?
性愛とは無縁の方と勝手に思いこんでいただけで、愛し合うという行為を経験されていた? だとしたら、それは誰と?
(あぁ・・・)
ラシュレスタが眉根を寄せる。愛し合えたのに。愛し合ったばかりだというのに、すぐ、これだ。すぐ心が乱れるのだ。
シャルスティーヤのこととなると、どうしても嫉妬や不安、疑念が浮上してしまう。本当に情けない。
(もっと、ちゃんとしないとダメだ・・・)
自分に言い聞かせる。けれども、気になって仕方がない。だって、あんなにも・・・と。経験があったとしか思えない。
(あぁ、シャルスティーヤさま・・・どなたかと既にご経験があったのですか?)
宙に向かって、切なげに問いかける。そうでないといいと願いながら。
『無性生殖が可能なのも、この世界で愛を確かめ合うためだ』
告げられた言葉がふいとよぎった。そうだ、あの時―――
(愛を確かめ合うために・・・と、ごく自然と言われてた・・・)
まるで当たり前のことのように。かたや視野が狭かったのか。天使と性愛行為がまったく結びつかなかった自分。
果たして、どれほどの天使が、その欲を持ち合わせているだろうか。
慈愛と調和の光で満ち足りた天界で。おそらくは霊気の強い上位の天使が、望んだ時のみに生殖も可能なのだろうが、そもそも性愛に対しての欲などあるのか。
(自分が気がつかなかっただけなのだろうか・・・)
汚れた行為だとずっと思いこんでいたが、他の天使たちはどうだったのだろうか。無償の愛や同胞愛以外で、愛し合っている者が他にいるのだろうか。
だが考えてみれば、シャルスティーヤに関しては、経験があっても当然なのだ。あれほどまでに美しく、あれほどまでに麗しい方なのだから。
(あぁ・・・)
湧き上がる嫉妬に。ギュッと布を握りしめる。
でも今、愛してくれているのは自分なのだから。気にしなくていいのだ―――と言い聞かせる。
(情けない。すぐにこんな風に・・・落ちこんで・・・)
だから、不出来なのだ。涙ぐみそうになった途端、ツクン・・・と下腹部に小さな違和感を覚えた。
(えっ・・・)
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。
鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。
死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。
君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる