127 / 157
忘却の河のほとりには
2
しおりを挟む
そうだ、自分はシャルスティーヤさまと―――瞬く間に記憶が蘇った。トクトクトクトク・・・と左胸が激しく乱れ始める。
「少し無理をさせた・・・しばらく休んでいるがいい」
「は、はい・・・」
掛けられていた布をギュッと握りしめる。どれだけ激しく愛し合ったか。恥ずかしくてたまらない。
どんな顔をしていいのか。どうしよう。下を向いて恥じらい始めたラシュレスタへ、フッと笑みをこぼすような気配を残して、シャルスティーヤが出て行った。
(あぁ・・・)
シュンッと静かに閉ざされた扉に、その場の華やいでいた大気がスッと鎮まったような感覚。猛烈な寂しさに襲われる。
(行ってしまった・・・)
仕方がない、仕方がないのだと自分に言い聞かせる。天界の最高位たる存在なのだ。自分ばかりにかまけている時間など、あるはずがない。
むしろ、これほどまでに長く一緒にいてくれていたなんて―――そうは思っても、やはり寂しくてたまらない。
(シャルスティーヤさま・・・)
またすぐにでも会えるだろうか。別れたばかりなのに、願わずにはいられない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
恋しくてたまらない。うつむいた途端、サラサラサラ・・・と髪が流れ落ちた。その白金の輝きに、ハッとする。
(身体が・・・)
キラキラとした粒子をまとった肌と霊気に満ちた、その細胞の感覚と。
(天使に戻っている・・・)
と認識する同時に、埋め尽くすように散って残る、赤い斑点にも気がつく。カッとまた全身が熱くなった。
(あぁ・・・)
それは存分に愛された証。
秘所から流れ出ている聖なる蜜とともに、浄化と癒やしが可能な相手があえて残していった性愛の余韻。
(夢みたいだ・・・)
まさか、想いが叶うなんて。まさか、両思いだったなんて。まさか、愛してもらえるなんて。まさか、まさか、まさか。
信じられない出来事。あまりにも、いろいろなことが立て続きに起こって、一体、どこからが本当にあったことなのか、わからなくなる。
まるで堕天して、魔界公爵になっていた夢でも見ていたかのように。あやふやで、どこかベールがかかったように、なんだかぼんやりとしている。
それでも、意識をなくすほど愛されたことは事実なのだ。自分の身体を通して、噛みしめる。
(嬉しい・・・)
パフッ・・・と柔らかいクッションの上に、そのまま身を横たわらせた。
(あんな風に・・・されるなんて・・・)
どんなに夢想しても、欲情とは無縁だと、清らかな方だと思わずにはいられなかった存在。
その美しい方が――ラシュレスタがそっと唇に指で触れた。
あれほどまでに情熱的に口づけられるなんて。息もできないほどに、深く重ねられて。舌を絡まれ、首筋も熱く舐められた。
それに、ここの・・・胸だって、痺れるくらい、きつく吸われ続けた。両方ともずっと、たくさん――ラシュレスタの指先が愛の痕跡を確かめるように、自分の身体をなぞっていく。
それから、ここも。ここだって、考えられないくらい、いっぱい舐められて・・・・・・出すと、そのまま・・・・・・飲まれた――
あぁ・・・と琥珀色の瞳が潤んだ。
「少し無理をさせた・・・しばらく休んでいるがいい」
「は、はい・・・」
掛けられていた布をギュッと握りしめる。どれだけ激しく愛し合ったか。恥ずかしくてたまらない。
どんな顔をしていいのか。どうしよう。下を向いて恥じらい始めたラシュレスタへ、フッと笑みをこぼすような気配を残して、シャルスティーヤが出て行った。
(あぁ・・・)
シュンッと静かに閉ざされた扉に、その場の華やいでいた大気がスッと鎮まったような感覚。猛烈な寂しさに襲われる。
(行ってしまった・・・)
仕方がない、仕方がないのだと自分に言い聞かせる。天界の最高位たる存在なのだ。自分ばかりにかまけている時間など、あるはずがない。
むしろ、これほどまでに長く一緒にいてくれていたなんて―――そうは思っても、やはり寂しくてたまらない。
(シャルスティーヤさま・・・)
またすぐにでも会えるだろうか。別れたばかりなのに、願わずにはいられない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
恋しくてたまらない。うつむいた途端、サラサラサラ・・・と髪が流れ落ちた。その白金の輝きに、ハッとする。
(身体が・・・)
キラキラとした粒子をまとった肌と霊気に満ちた、その細胞の感覚と。
(天使に戻っている・・・)
と認識する同時に、埋め尽くすように散って残る、赤い斑点にも気がつく。カッとまた全身が熱くなった。
(あぁ・・・)
それは存分に愛された証。
秘所から流れ出ている聖なる蜜とともに、浄化と癒やしが可能な相手があえて残していった性愛の余韻。
(夢みたいだ・・・)
まさか、想いが叶うなんて。まさか、両思いだったなんて。まさか、愛してもらえるなんて。まさか、まさか、まさか。
信じられない出来事。あまりにも、いろいろなことが立て続きに起こって、一体、どこからが本当にあったことなのか、わからなくなる。
まるで堕天して、魔界公爵になっていた夢でも見ていたかのように。あやふやで、どこかベールがかかったように、なんだかぼんやりとしている。
それでも、意識をなくすほど愛されたことは事実なのだ。自分の身体を通して、噛みしめる。
(嬉しい・・・)
パフッ・・・と柔らかいクッションの上に、そのまま身を横たわらせた。
(あんな風に・・・されるなんて・・・)
どんなに夢想しても、欲情とは無縁だと、清らかな方だと思わずにはいられなかった存在。
その美しい方が――ラシュレスタがそっと唇に指で触れた。
あれほどまでに情熱的に口づけられるなんて。息もできないほどに、深く重ねられて。舌を絡まれ、首筋も熱く舐められた。
それに、ここの・・・胸だって、痺れるくらい、きつく吸われ続けた。両方ともずっと、たくさん――ラシュレスタの指先が愛の痕跡を確かめるように、自分の身体をなぞっていく。
それから、ここも。ここだって、考えられないくらい、いっぱい舐められて・・・・・・出すと、そのまま・・・・・・飲まれた――
あぁ・・・と琥珀色の瞳が潤んだ。
0
あなたにおすすめの小説
雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―
なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。
その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。
死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。
かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。
そして、孤独だったアシェル。
凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。
だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。
生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
イケメンに育った甥っ子がおれと結婚するとか言ってるんだがどこまでが夢ですか?
藤吉めぐみ
BL
会社員の巽は、二年前から甥の灯希(とき)と一緒に暮らしている。
小さい頃から可愛がっていた灯希とは、毎日同じベッドで眠り、日常的にキスをする仲。巽はずっとそれは家族としての普通の距離だと思っていた。
そんなある日、同期の結婚式に出席し、感動してつい飲みすぎてしまった巽は、気づくと灯希に抱かれていて――
「巽さん、俺が結婚してあげるから、寂しくないよ。俺が全部、巽さんの理想を叶えてあげる」
……って、どこまで夢ですか!?
執着系策士大学生×天然無防備会社員、叔父と甥の家庭内ラブ。
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される
あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる