最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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忘却の河のほとりには

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 そうだ、自分はシャルスティーヤさまと―――瞬く間に記憶が蘇った。トクトクトクトク・・・と左胸が激しく乱れ始める。

 「少し無理をさせた・・・しばらく休んでいるがいい」

 「は、はい・・・」

 掛けられていた布をギュッと握りしめる。どれだけ激しく愛し合ったか。恥ずかしくてたまらない。

 どんな顔をしていいのか。どうしよう。下を向いて恥じらい始めたラシュレスタへ、フッと笑みをこぼすような気配を残して、シャルスティーヤが出て行った。

 (あぁ・・・)

 シュンッと静かに閉ざされた扉に、その場の華やいでいた大気がスッと鎮まったような感覚。猛烈な寂しさに襲われる。

 (行ってしまった・・・)

 仕方がない、仕方がないのだと自分に言い聞かせる。天界の最高位たる存在なのだ。自分ばかりにかまけている時間など、あるはずがない。

 むしろ、これほどまでに長く一緒にいてくれていたなんて―――そうは思っても、やはり寂しくてたまらない。
 
 (シャルスティーヤさま・・・)

 またすぐにでも会えるだろうか。別れたばかりなのに、願わずにはいられない。

 (あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)

 恋しくてたまらない。うつむいた途端、サラサラサラ・・・と髪が流れ落ちた。その白金の輝きに、ハッとする。

 (身体が・・・)

 キラキラとした粒子をまとった肌と霊気に満ちた、その細胞の感覚と。

 (天使に戻っている・・・)

 と認識する同時に、埋め尽くすように散って残る、赤い斑点にも気がつく。カッとまた全身が熱くなった。

 (あぁ・・・)

 それは存分に愛された証。

 秘所から流れ出ている聖なる蜜とともに、浄化と癒やしが可能な相手があえて残していった性愛の余韻。

 (夢みたいだ・・・)

 まさか、想いが叶うなんて。まさか、両思いだったなんて。まさか、愛してもらえるなんて。まさか、まさか、まさか。

 信じられない出来事。あまりにも、いろいろなことが立て続きに起こって、一体、どこからが本当にあったことなのか、わからなくなる。

 まるで堕天して、魔界公爵になっていた夢でも見ていたかのように。あやふやで、どこかベールがかかったように、なんだかぼんやりとしている。

 それでも、意識をなくすほど愛されたことは事実なのだ。自分の身体を通して、噛みしめる。

 (嬉しい・・・)

 パフッ・・・と柔らかいクッションの上に、そのまま身を横たわらせた。

 (あんな風に・・・されるなんて・・・)

 どんなに夢想しても、欲情とは無縁だと、清らかな方だと思わずにはいられなかった存在。

 その美しい方が――ラシュレスタがそっと唇に指で触れた。

 あれほどまでに情熱的に口づけられるなんて。息もできないほどに、深く重ねられて。舌を絡まれ、首筋も熱く舐められた。

 それに、ここの・・・胸だって、痺れるくらい、きつく吸われ続けた。両方ともずっと、たくさん――ラシュレスタの指先が愛の痕跡を確かめるように、自分の身体をなぞっていく。

 それから、ここも。ここだって、考えられないくらい、いっぱい舐められて・・・・・・出すと、そのまま・・・・・・飲まれた――

 あぁ・・・と琥珀色の瞳が潤んだ。

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