最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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愛に囚われた天使~シャルスティーヤ~

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 『ヤヌスティーヤが愛するそなたと我のために背負ってくれたのだ。魔界の闇が生んだ魔の象徴、その源泉でもある魔獣ザルキスを身に取り入れた今、ヤヌスティーヤは我から遠のいた。

 このまま闇の王になるだろう。だが、ヤヌスティーヤの魂はいかなる時も我とともにある。全ては我のために、担ってくれたのだ』

 『あぁ、ヤヌスティーヤ・・・』

 『そなたに先に伝えておれば、そなたも同じ選択をしただろう』

 瞳を閉じて嗚咽を漏らす。言葉を発することなどできない。

 『闇をあえて作り、有限なる世界を望んだ我を許せ。ヤヌスティーヤに背負わせた我を許せ。シャルスティーヤよ』

 『・・・我が創造主よ。我が光、我が愛、我が全て。許せなどと・・・そのような・・・』

 涙を流し続ける身がふわりと高次元の光に包みこまれた。その慈愛に満ちた愛の霊気に。

 『あぁ・・・私がこのように主とともにあるという喜びを感じられる中、兄がもはや主を感じられないとは・・・これほどまでの悲しみがあるでしょうか。

 主よ、必ずや、必ずや・・・兄がまた主の喜びとともにあらんことを。どうぞ、お導きを。もし居場所を取りかえよと言われましたら、すぐにでも担います。なにとぞ・・・なにとぞ、お願いします』

 癒しの光を注がれながらも、たただただ一心に願う。

 『シャルスティーヤよ、そなたの悲しみは我の悲しみ。そなたの願いは我の願い。ともに、分かち合わん。そなたもヤヌスティーヤもいかなる時も我とともに』

 高次元の光である創造主の言葉に深く頭を下げる。そして、祈り続けた。ただひたすら兄を想いながら。可能な限りに。魔界から戻ってくる兄を浄化し続けて。

 だが、やはりその「時」は来た―――

 『ラシュレスタ、相変わらず、そなたは美しいな。見ているだけで興奮を覚えるぞ』

 ヤヌスティーヤに声をかけられたラシュレスタが困惑した様子を見せた。

 『そなたを側に置き、ずっと眺めていられるシャルスティーヤが羨ましくもある』

 『そ、そのようなことは・・・』

 理知的で優しく穏やかであるはずの最高位たる存在の、感情的で稚拙で粗雑な気を感じて。琥珀色の瞳が不安げに揺れた。

 『ラシュレスタ、我と今度一緒に魔界に行かないか?』

 『魔界に・・・ですか? 魔界の管理に同行を・・・というご指示でございますか?』

 『フフフ・・・魔界はよいぞ。違う自分に酔い痴れることができる。そなたも違う自分になりたいと思っていないか。もっと正直で。もっと素直で。もっと貪欲で。もっと相手を求めて・・・乱れてみたいと思ってないか』

 『な、なにをおっしゃるのですか・・・』

 激しく動揺して身構えた無垢な者へと、引きずりこみたい側が詰め寄る。腕を取られた途端、ラシュレスタの身体に激しい嫌悪感が走った。感じるのは異様な邪気だ。

 『どうだ? 我が魔界を案内しようぞ』

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