最高天使に恋をして~忘却の河のほとりには~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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愛に囚われた天使~シャルスティーヤ~

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 『シャルスティーヤさまに・・・お尋ねしてからに・・・します』

 『そうか。そうよのぅ。シャルスティーヤの命ならば、そなたはなんでも聞くだろうな。だが果たして、あちらはどうだろうか。そなたからの願いに・・・応じてもらえるだろうか・・・フフフ』

 身じろいで離れようとする腕を逃さないとばかりに掴んだまま。白金の美しい髪に手を伸ばして持ち上げると唇を寄せた。

 『我をシャルスティーヤと思えばよいのだ・・・我はシャルスティーヤと似ているだろう? シャルスティーヤを愛しているのだろう?』

 ラシュレスタがさりげない仕草で自身の髪を相手の手から取り返しながら、努めて冷静に答えた。

 『この天界でシャルスティーヤさまを愛さない者などおりません』

 『フフフ・・・なるほど言うのぅ。一理ある。そうだ。我も我が弟を愛している。愛しくて愛しくて。抱きたくて抱きたくて・・・たまらない』

 『なっ・・・』

 あからさまな性的な意味合いの言葉に。ラシュレスタが絶句して硬直した。尋常じゃないその瞳のぎらつきで。頬をねっとりと触られる。

 『ラシュレスタ、魔界に行きたくなった暁には必ず我を呼ぶがよい。我が案内してやろうぞ。それこそ特別に手取り足取り、教えてやる』

 『私は・・・魔界には行きません』

 ラシュレスタが一歩後ろへと下がりながら答えた。

 『いいや、そなたは来るのだ。今の我にはわかる。そなたは必ずや魔界に来ることになる』

 (来る・・・?)

 まるであちら側に属しているかのような言い方に。何かを予言しているかのような言葉に。呪詛のようにつぶやかれ、宣告された側が激しく狼狽えた。

 『ラシュレスタ、ここに居たのか。すまないが、この書簡をネイオロスに届けてくれないか』

 『シャルスティーヤさま!!』

 声をかけられて、ラシュレスタがすぐさま跪く。その全身から喜びが一気に溢れ出た。

 『頼む。今すぐにだ』

 『は、はい!! かしこまりました』

 特に急ぎでもない用件を両手に大切に抱きしめて。駆け出すようにして去って行く背中を横目で見送る。と、光り輝く小道をさっさと歩み始めていた兄を追いかけた。
 
 『兄上、お待ちください』

 穏やかな風が吹きつけ、花が咲き誇る美しい河辺で。この上なく大切な双翼たる存在を引き留めた。

 かつてはただ輝く光の世界だった天界が。今では道が整えられ、アーチ状の屋根を持つ建築物や群集した植物、生き物などが見られる・・・妖精界や人間界と同じような情景となった世界で、呼ばれた者が足を止めた。

 (ヤヌスティーヤ・・・)

 そう、この兄なのだ。この兄が取り入れてくれたのだ。木々や花々があふれる妖精界に降り立った際に「このような美しい世界もあるのか」と感じ入った自分を喜ばせるために。造りあげてくれたのだ。

 『なんだ?』

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