Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第1章

別れ

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 ヨンカイの振り下ろした剣が、シナズに当たる寸前に、何故か手を止めた。

 ヨンカイはシナズではなく、遠く先を見ていた。

「どうした。早く殺れよ」
「いや……すまない」

 ヨンカイが突然歩き出し、向かう先の街灯の下に、何者かが何かを置いて行くのが見えた。

 白黒模様の毛布のような物で、ヨンカイはそれを抱き抱えるように拾い上げると、シナズの元に戻った。

 ヨンカイは涙を流し、腕の中には、まだ小さな赤子が眠っていた。

「お前の言ってた息子か?」
「あぁ、そうだ……お前達を信じなくてすまなかった……」

「よかったな。戻ってきて」
「俺を殺れ」

「何言ってんだ……お前」
「こんな事を頼める立場ではないが、息子を病院まで連れてってくれ」

「いや、殺らねぇし、連れてかねぇよ。自分で連れてけ」
「だが、それでは――」

「もう終わりだ。見つかったならそれでいいだろ。それに、俺もあいつも、お前を恨んだりしねぇ。さっきはムカついたけど、あいつならきっとそう言うしな」

「……………………」
「まぁ、そう言う事だ。じゃあな。フジミー、帰るぞ」

「おぉ…………終わったんか……」
「あぁ、終わったよ。病院行くぞ」

「なぁ、頼みがあるんじゃが……歩いて帰らんか」
「そうだな…………お前歩けんのか?」

「おぶってくれ」
「俺も怪我人だぞ…………まぁいいや、乗れ」

「すまんのぉ……助かるわ」

 シナズはフジミを背中に乗せ、病院へ歩き出した。

「早く病院へ行った方がいい。2人共――」
「おい。今は2人きりにしてやろう」

 その言葉の意味が分からなかった。戸惑いはあったが言われた通り、それ以上声をかける事はしなかった。

 2人はそれから、どれくらいか分からないが、無言の時間が続いた。

「そういやお前、覚えてるか? 初めて会った時の事」
「忘れもせんわ……おまんが女2人連れて、見せびらかしてた時じゃろ……」

「別に見せびらかしてねぇよ」
「見せびらかしてたわ……」

「ただのお前の嫉妬だろ」
「当たり前じゃ……」

「やっぱりかよ……それにしても、あん時のお前弱かったよな」

「そうじゃな…………確かに弱すぎたのぉ」

 夜闘の時に、シナズとビキョウとフルールの3人でいると、フジミが、突然シナズに攻撃を仕掛けてきた。それを、フルールに一瞬で返り討ちにされて負けた。

「それで、親父に鍛えて貰って……」
「そうじゃ……師匠は厳しかったのぉ……」

「そっからだよな、お前が親父の真似して変な喋り方になったの」

「誰が……変な喋り方じゃ……! ワシはええが……師匠を悪く言うんは許さんぞ……!」

「別に親父を悪く言ってねぇよ、昔からだし。お前の事言ってんだよ」
「ワシは……師匠をリスペクトしてるんじゃ……同じじゃ」

 シナズが更に強くなる為に、ガンジョウの元で修行をする事にして、その時に3人も誘った。

 誰よりも、フジミが1番ガンジョウを慕っていて、徐々に話し方まで真似をするようになっていった。

「分かったよ……悪かったよ」
「まぁ、分かりゃええ……」

「もう……戻りたくねぇよな……」
「それは……同意じゃ……」

「お前最初の頃、よく逃げ出してたしな」
「おまんには……分からんのじゃ……覚えの悪いワシの事なんかのぉ……!」

「じゃあなんで、必ず戻って来てたんだよ」
「師匠が怖いからじゃ……それにおまんにも負けたく無かったからのぉ……」

 ガンジョウを1番慕っている筈のフジミは、4人の中で唯一逃げ出し、戻って来てはまた逃げ出す事を、2年間の修行で、最初の1年間だけ繰り返していた。

「それほんとか?」
「嘘じゃ…………フルールとビキョウの……冷たい態度に耐えれんかった……口すらきいてくれんからのぉ……」

「やっぱりな……お前が親父を怖がるとか、俺に負けたくないとか、ありえねぇし」

「今だから言うがのぉ……おまんに負けたく無かったのは…………やっぱええわ」
「俺はお前に負けたくねぇから、やってたけどな」

 フジミが逃げ出しても、最初の頃はビキョウとフルールが説得をしていた。

 それでも、すぐにまた逃げ出す事に愛想を尽かし、説得する事を止めるどころか、戻って来るまで話す事すらしなくなった。

 フジミがそんなでも、シナズは弱音を一切吐かず、フジミを責める事も無く、修行に打ち込んでいた。

 シナズに、何故そんなに頑張るのか聞いた時に、フジミにだけは負けたくないし、万が一にでも負けた時に、自分が言い訳出来ないようにと言っていた。

「ほんまか……? 嬉しいのぉ……やっぱおまんにはバレてたんじゃな……ワシの実力が……」

「違ぇよ。お前なんかに負けてたら、ビキョウの事守れねぇだろ」
「なっ……! 損したわ……言い方があるじゃろ……」

「冗談だよ」
「いや……その通りじゃ。ガッハハハハ」
「なんで笑えんだよ……ハッハハハハ」

 2人は楽しそうに、笑いあっていた。

「ありがとなぁ……シナズ」
「何がだよ……そういやさ、4人で森に入った時もやばかったよな」

「すまんのぉ……ちょっと眠くなってきたわ……起きてから……またゆっくり話さんか……」
「何言ってんだよ。病院までもうすぐだから、まだ寝るなよ」

「……………………」
「なぁ、寝てていいのかよ……またフルールに怒られんぞ。なぁフジミ! 起きろよ、今話そうぜ! 1人じゃ暇だろ!」

 フジミの意識は無く、眠りに落ちていた。

「シナズ……フジミは――」
「黙ってろ! 今フジミと話してんだ…………頼むから黙っててくれ…………なぁ、お前ちゃんとウルの世話出来てんのか?」

「……………………」
「俺も息子がもう産まれるからよ……教えてくれよ色々とさ…………お前に聞いても無駄か。どうせフルールに怒られっぱなしだろうしな」

「ブォーーーン……ブォーーーン……」

「俺はもう行く」
「やはり…………フジミは……」

「そう言う事だ。後は頼む。フルールとビキョウの天使達には、女神に言うように伝えておく」
「あぁ…………」

「現在時刻24時。夜間闘技イベント終了です。参加者の皆様、大変お疲れ様でした。次回の開催は、来月第4金曜日となります。それでは、お気を付けてご帰宅下さい」

「ブォーーーン……ブォーーーン……」

 夜間闘技の、終わりを告げるサイレンが鳴り響き、フジミの育成神は、視るのを止めた。

 その間も、シナズは延々と話しかけ続けた。もう目覚める事はないと、分かっていながらも。

 病院が見えてきた頃、外で待つフルールの姿があった。
 フルールはこちらに気付くが、その場で待ち続けた。

「育成神……さっきは悪かったな……」
「私の方こそ、申し訳ない……私が未熟なあまりに……」

「フルールに合わせる顔がねぇな……」
「そんな事……」

 それからすぐに、フルールの元に着いた。

「フルール……」
「シナズ。ありがとう! フジミと一緒に、帰って来てくれて」

「お礼なんて……俺のせいで……」
「何が? フジミが自分でやった事でしょ。こいつの顔見てよ……幸せそうに眠ってるじゃん……こんな顔されたら…………怒れないよ……!」

「ごめん…………ありがとう……」
「シナズもすごい傷じゃん……早く行って。ビキョウが待ってるよ! 少し2人きりになりたいからさ!」

「あぁ……じゃあ行くな」
「うん……!」

 フルールとフジミを残し、その場を後にした。
 フルールは泣かずに、終始笑顔だったが、悲しくない訳も、悔しくない訳も、怒ってない訳も無く、笑顔でいられる訳なんか無いのは、私でも分かった。改めて、フルールの強さ、フジミとの絆を感じた。

「俺の弱さに腹が立つよ…………あの2人見てるとさ……」
「シナズ!」

 病院内に入り、シナズが突然倒れた。だが無理もないのは分かっていた。

 いつ倒れてもおかしくない事は、分かっていたつもりだが、このまま起きなかったら、ビキョウに会えなかったら、息子の顔を見れなかったら、と良からぬ事ばかり考えてしまった。

 私の力で助けられるなら、すぐにでも助けたかったが、そんな力は、育成神には無い。

 女神が治療はしてくれるが、治癒をするには、もう1度シナズが目覚め、自らの意思で、勲章を使わなければならない。

 シナズは病室に運ばれ、治療は終わったが、目覚めなかった。

 それから、少し経つと病室に、フルーツとナイフを持ったビキョウが、入ってきた。

「ビキョウ……」
「あら、育成神。視てたんだ」

「2人きりにしようか」
「ううん。顔見にきただけだから。……フルーツ要らなかったね」

「そんな事ないよ。起きたらたべるさ…………」
「そうだよね。……フジミくんの事……天使ちゃんから聞いたよ。フルちゃんは、大丈夫?」

「外にフジミといるよ……」
「そっか……シナズくんもフジミくんも、頑張りすぎちゃったんだね……! きっと……」

「ガラガラ……」

 病室の扉が開き、フルールが入ってきた。
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