Children Of The God's

鈴木ヨイチ

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第2章

神の眼

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 入った路地は街灯があっても薄暗く、道幅も3人が横並びで歩けないほど狭いから、俺を先頭に、ウル、ゴカイと続いて、1列になった。

 立ち並ぶ建物の高さがあり、相手に挟まれれば、逃げ道は何処にも無いし、闘えるかも分からない。

 それに俺は、街の何処に何があるか把握してたつもりだったけど、路地裏を含めて、まだまだ知らない場所がたくさんあった。

 ゴカイも多少は知ってるけど、初めて会った街の外れの方しか、分からないらしいから、相手が地理に詳しければ状況は不利になる。

 だからこそ、そうならない為にも、こっちから攻めるべきだと考えた。

 3人で話し合い、敵だった場合を考えて、1人ずつ確実に落としていく事にした。というより、出てきてまとまってくれない限り、それしか選択肢が無かった。

 まずは1番近くの人の方向に向かって、道が分からないから、ウルに教えてもらいながら走った。

「突き当たりを左に曲がったらいるはずだから、気をつけてよ」

 ウルに言われた通り左に曲がると、20m程先が明るいから、恐らく路地を抜けてしまうし、そこに行くまでに人の姿は無い。

「この場所で間違いないか?」
「うん、そのはずだけど……」

 ウルはその場でもう1度、地面に手を置いて、能力を使った。

「さっきいた場所から考えると、この辺りだけど、誰もいないんだよね……」

 ウルの話しだと、この場所に誰もいないから、断言は出来ないけど、この辺に居たのは間違いない。なのに、付近にも人はいないらしい。

 それを聞いて分かったのは、依頼人は移動しないから、この辺にいた何者かが能力者だという事。

 それに人数は変わって無いけど、場所が変わってるらしいから、また振り出しに戻った訳で、敵だとしたら目的が分からなかった。

 もう1度同じように路地に入り、1番近い場所にいる人を目指して、今度はあらかじめ、俺とゴカイも居場所を教えてもらってから走り、目的地に着いた。

 さっきと同じように、誰もいない。3人で確認したから場所は間違ってない筈なのに。

「どうなってんだよ、マジで」
「完全に舐められてるよ。見られてる気もするしねぇ」
「なんなの、ほんと」

 ゴカイの言う通り、舐められてるとしか思えないけど、気配を感じられても、どんな能力で監視されてるのかは、分かって無いのが現状。

 その場で、ウルに能力を使ってもらったけど、移動もされてる。

 振り出しに戻されて、街にある時計台に目をやると、もうすぐ21時で、夜間闘技が始まってから、1時間が経過しようとしてた。

 正直、無事に夜間闘技が終われば、修行は合格だから、残りの約3時間を隠れて過ごすという、考えがよぎった。でもウルとゴカイには言わない。

 単純にそんなやり方はしたくない筈だし、何よりそれで無事終わっても、修行の意味が無いのと、不合格になったら最悪だから。

 そこで俺が考えたのが、ウルにはこの場所で能力を使ってもらって、俺とゴカイがウルの指示で動く作戦。

 連絡手段はどうするのかと言うと、課命したら使える力『神眼』。

 ファジーの説明によると、これは2人以上を視てる育成神だけが、課命する事で能力者に与えられる力で、能力者自身が神の視点を得られる。

 育成神が視てる能力者の、人数分だけしか与えられないし、与えた能力者同士でしか視られない。

 だから、ルキはウルに神眼を与えられないけど、ファジーは俺とゴカイに加えて、ガン爺の育成神でもあるから3人まで可能で、ウルにも与えられた。

 使い方は、最初にネックレス、ブレスレット、ピアス、指輪の中から1つ選べて、それに触りながら、視る相手を思い浮かべると、アクセサリーが光る。

 その相手も同じで、誰かが念じる事で、自分が持つアクセサリーが光るから、触りながら許可するように念じると、そこでお互いが視られる。

 拒否したい場合は、それを触りながら念じるか、無視すればいいだけ。

 許可した、もしくはされた場合は、相手の現在地が空間に映し出されるから、話せて、視点も一人称、三人称と、自由に変更出来る。

 繋いだまま映像だけ消して、声だけを聞こえる状態にも出来るし、視てる能力者同士以外の人は、一切映像を認識させない事も出来る。

 これら全ての操作を、念じるだけで可能にするらしい。

 見た目は普通の、便利なアクセサリーで、ちなみに俺は指輪、ウルはブレスレット、ゴカイはネックレスを選んだ。

 早速、百聞は一見にしかずって事で、指輪に触れて、ウルとゴカイを思い浮かべた。

 すると、2人のブレスレットと、ネックレスが同時に光り、それに触れた。

 俺の前には、ウルとゴカイ、ウルの前には、俺とゴカイ、ゴカイの前には、俺とウルの、三人称視点の映像が、映し出された。

 上空から視てるような感じで、ウルの左側にゴカイがいたから、視点を動かしてみると、ちゃんとゴカイが映った。

 それから一通り操作して、ある程度使い方を覚えたところで、作戦を実行する事にした。

「じゃあ、まずは1番近い奴の所に案内してくれ」
「オッケー、任せて」

 ウルと離れて、神眼を使ったまま、ゴカイと相手の元に向かった。

 ウルの指示に従い、最短距離で路地裏を進み、相手の近くまで来た。

 俺は能力を使うと、約10m先を左に曲がった少し先に、街灯の真下で照らされる、人の後ろ姿が視えた。

「ゴカイ、そこで一旦止まるぞ。誰か居る」
「うん、分かったよ」

 曲がる手前で1度止まり、そこでもう1度能力を使った。

 その場から覗く未来を視ると、さっきと変わらず、こちらに背を向けて立つ、人の姿が視える。1人きりで、動く様子も無く、ただ立ち尽くしてた。

「ウル、この先にいる奴だよな?」
「うん、間違いないよ。今回は誰も動いて無いから、今がチャンスだよ」

 この場を離れて、人に話しかける未来を視ると、気付いているのかいないのか、なんの反応も無い。

「行ってみるか。ゴカイ、気を抜くなよ」
「心配いらないよ。ずっと力使ってるからねぇ」

 未来視を止めて、頼もしいゴカイと一緒に、立ち尽くす人の元に向かった。

 後ろ姿を完全に捉えながら、ゆっくり近づいて行くと、突然音もなく姿を消した。

「は?」
「え?」

 俺とゴカイの目の前で、目を離した訳でも無いのに、いきなり消えたから、何が起きたのか分からず、ゴカイも困惑した様子だった。

「どういう事? 一瞬で1箇所に集まったんだけど」

 ウルの言葉の意味が分からなかった。詳しく聞くと、俺達の目の前で人が消えたのと同時に、9人が1人の元に、瞬間移動したらしい。

 それを聞いて、能力者がいるのは分かったけど、味方では無いにしても、敵なのか目的がなんなのかは、全く分からなくなった。

「また散らばったよ。1人はそこから近い」
「案内してくれ」

 ウルに道を教えてもらいながら、急いで向かうと、すぐに目的地に着いた。

 曲がった先にいるらしいから、さっきと同じように、手前で1度止まり、今度はウルに視てもらった。

「いるよ。周りを見回してる」
「よし、じゃあ行ってみるわ」

「2人とも気をつけてね」
「あぁ、ありがとう」
「ありがとねぇ」

 俺は1度覗き、相手はこっちを見てないのが確認出来たから、背後からゆっくり近づいた。

 足音に気づいたのか、勢い良く振り向き俺達を見ると、驚いた様子で急に走り出した。

「追うか」
「そうだねぇ」

 逃げたから、追いかけた。逃げた奴は、路地を抜けて曲がったから、能力を使い、追いかける未来を視ると、もういなかった。
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