魔女の村

各務みづほ

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魔女への入門

第十二話 奪還

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「結界? 誰!?」

 ルカが気づくと同時に呪文を唱える。

結界解除 ブリセド エル スターラ

 パキンという音とともに、晴れた空が戻ってきた。続けて死角となっている物置小屋の後ろに手をかざす。

落雷 ステルク ディラネク!」

 すると弱い電撃とともに小柄な影が飛び出す。ルカは逃さず次の攻撃を放った。

氷矢 セヘド ディエ
水盾 スジート ウイスク

 聞き慣れた可愛い声とともにシールドが張られ、ルカの放った氷の矢が全て、水の盾に飲み込まれていった。

「あら、やるわね」

 シールドが消え、現れたその姿にシアは思わず叫ぶ。

「カイン!」

 はっと気づき慌てて口を塞ぐがもう遅い。ルカが不審の目をシアに向け、そして前方の少女に向き直った。
 そのまま目を逸らさず、じっと睨みつける。

(まずい! ルカ様怒ってるよ! 何で来るの。人前になんて出てこなかったのに!)

 シアはカインの元に駆け寄り、声をかける。

「怪我は? もう、何で来たのよ。手紙にはこっちに移るって」

 するとカインはそっとシアの頬に手を触れる。真っ直ぐその顔を見て無事を確認すると、表情を和らげそっと抱きしめた。
 何年ぶりかの抱擁に、シアの心臓はドクドク高鳴り始める。

「迎えに来た」

 喧嘩腰ではない、優しい声。先日まで喧嘩していたのが嘘のようだ。

「……馬鹿、シア……ヴェルドの所になんて、行くな……」

 ぎゅうっと腕の力がこもっていく。遠慮のない少女の姿で。
 シアの心がきゅうっと締め付けられた。今までの怒りや憎しみを飲み込んでいく。


 このまま浸りそうになり、しかし既のところで我に返った。
 ルカの視線が鋭く刺さる。シアは咄嗟にカインを庇う格好で向き直った。

「る、ルカ様、あの、これはーー」

 すると後ろに庇ったカインがシアの前に腕を出し、言葉を止める。
 カインの顔は引き締まり、真っ直ぐ目の前の大魔女を睨みつけていた。
 成り行きを眺めていたルカが静かに口を開く。

「ああ、そういうこと。ヴェルドを遠ざけたかったの、なるほどね」
「る、ルカ様……?」
「お見事よ。全然気づかなかった。その子の魔力のことも全部」

 そしてゆっくりと腕を上げ、鋭く声を上げた。

「貴方だったのね、カイン!」

 ルカの声と共に、先程とは比べものにならないくらい強力な火の矢が出現し、容赦なくカインに襲いかかった。
 知り合いなのかなどと悠長に考えている暇はない。
 シアは咄嗟に後ろからカインの肩に腕を回し横へ避けようとする。すると少女の可愛い声が高らかに響いた。

水盾 スジート ウイスク!」

 先程も聞いた言葉に同じ盾。二人の前に出現したそれが次々と火の矢を落としていく。
 シアはその光景を呆然と眺めた。

「え、これ、魔法!?」

 咄嗟に声の主である少女カインを見つめるが、シアはその考えをぶんぶんと否定した。
 男であるカインが魔法を使えるわけがない。
 だってずっと一緒に、十三年も共に育ったのだ。その間魔法なんて一度も見たことがないし、話を聞いたこともない。しかし。

「すごいわ、カイン! 女体化しながらそれだけ魔法が使えるなんて! 完全に貴方を見縊っていたわ」
「えっ……女体化魔法を……カインが?」

 ゲーラがカインを女の子の姿にしていたのではないのか。信じられないことばかりが続き、シアの頭は混乱する。
 しかし、そんな間もルカの攻撃は止まることなく続く。
 カインはそんなシアを抱き上げ、物置小屋の陰へと退避した。

「ひゃあっ!」
「つっ!」

 ズサッと二人は倒れ込む。カインの足首に矢が掠り、呻き声を上げた。

「悪い! 大丈夫かシア! くっそ、この姿弱すぎ」

 息を切らしながらカインは警戒を続ける。
 そしてルカの手には見るからにとどめの一撃。
 シアはカインが止めるのも振り切り陰から飛び出ると、必死にルカに懇願した。

「る、ルカ様、待って! カインは幼馴染みなんです! 殺さないで!」
「殺さないわよ。話は山ほどあるんだから。この位平気でしょ、カイン」

 躊躇いもなく攻撃を繰り出し、一瞬で爆発する。
 シアの顔が青ざめる中、大魔女は確認するように口を開いた。

「カイン・ドーウェルーーーー私の弟」

 ーーーーえ?

「えええええええええ!?」
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