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魔女への入門
第十七話 仲直り
しおりを挟む「カイン……うそ……何で……だって、あれだけ嫌い合って……」
「ああもう、言っただろ、忘れるわけないって……魔女になったらもう戻れないって……」
しかしカインがその手を取ろうとして、止まる。
「てかシアの方こそ……俺とは一緒にいたくないよな……悪い。魔力は渡したし、なんなら魔法も今度こそゲーラに教えるよう頼んでーー」
「えっ、カインは何処へ行くの? お城に行っちゃう? もう教えてくれないの!?」
シアが慌ててカインの袖を掴み、必死に引きとめる。
「俺が……教えていいのか? お前こそ、俺を嫌いなんじゃなかったのか」
「カインじゃなきゃ嫌だよ!」
カインの顔が綻び、あの優しかった、シアの大好きだった幼馴染みの顔に戻っていく。
シアの涙がぼろぼろ溢れた。掟に縛られることなんてどうでもよくなるくらい嬉しい。
カインが戸惑いながら呟いた。
「今からでも……付き合えるかなぁ……」
「うん、うん! 好きな人とは一緒にいたいよ、カイン」
頑張っても、どうやっても、ただただ悲しいだけで嫌いになんてなれなかった。
シアがそう告げると、カインは泣きそうな顔になりながらシアを抱き寄せる。
「じゃ、一緒にいようか、シア」
カインの腕の中で、冷えていたシアの心がどんどん温かくなっていく。抑えていた感情が動き出す。
「あは……私ももう戻れないや。本当に大魔女目指さなくちゃ!」
魔力値百二十一がどのくらいの魔女かはわからないけれど。
こうやってカインが傍にいてくれるならーー。
「ーーーー傍に?」
ふと、疑問が湧き起こった。
領主としてカインが村に戻るなら、軽く罰を受けた後、あの領主の城に移ることになるのではーーそして。
「……キスするの? カイン、他の魔女にも」
「え?」
シアの呟きにカインが僅かに動揺した。ルカが当たり前のように答える。
「それはそうよ? それが領主の務めだもの。魔力を望む魔女がいれば与えるーーまあカインは控えめに見てもヴェルドの次には人気でるわよね」
「ルカ!」
意外に旦那好きのブラコンなどと突っ込みをする気にもなれず、シアは口元を押さえ黙り込む。
つい先程まで、他の領主とキスをすることにも、そこまで抵抗がなかったはずなのに。
「シア、その……俺だって嫌だぞ? その抵抗もあって、村に戻らなかったんだし」
しかしカインは、村に再び入った時からその覚悟もしていた。領主として周知されてしまった時のリスクも。
それでもシアが心配で離れたくなくて、戻ることを選んでいた。
「なお悪い……そんなの」
「は、はい?」
「私が村を出にくくなるとか、掟に縛られるとかはどうでもいい……でもそこは嫌。私が嫌! カインだって私が他の領主様とキスしようとするの嫌がったじゃない!」
「え、ええと……」
カインは困惑した。そもそも想いが通じることなど想定していなかった。
嫌な思いをするのは自分だけだと思っていた。完全に読み違いだ。
しかしもう戻りようがないし、領主である事実も変わらない。今までが運良く見つからなかっただけだ。
シアの怒りが沸々と湧いてくる。
「だってなんで! 折角カインの気持ちわかって、恋人になってこれからなのに。他の魔女ともキスするなんて! 私だってもう他の領主様とキスしようなんて思わないよ!」
「う……うーん、魔力を……力を欲しがるのはわからなくもないというか……」
「そんなの知ってる。わかってる! 私だって魔力は欲しいって思ったもん」
完全に我儘だ。醜い嫉妬、独占欲だ。
何せ村に六人しかいない領主様。独占など許されるはずがない。
結婚しているルカだって、そこは許容している。
しかし、わかっているのに悔しくて抑えが効かない。
お腹のあたりがモヤモヤしてきた。胸のあたりが熱くなり、とうとう身体が震えてくる。
おかしいーー頭痛に吐き気、この上なく気持ちが悪い。
シアは耐えきれず、カインの腕を掴んで震える声で訴えた。
「カイン、やっぱり……村を出て逃げよう……! どこか……田舎でひっそり私に魔法を教えてくれるとか……というか、カインが外に出ようって言ってた意味が今わかった!」
「え、ええっ! そーくる!?」
「シア、ちゃん。いい加減にしようね?」
怒りを込めながら、にっこりとルカが笑う。
「無理だシア。地の果てまで追手……てか、ルカが容赦なく自ら追ってくるぞ。そうしたらそれこそ俺たちは引き離される……て、シア?」
ゾクリーー突然空気が変わった。
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