20 / 31
魔女への入門
第二十話 魔女の村
しおりを挟むゲーラの家に戻ると、カインは改めて師にシアのことを頼んだ。
「ばーさんにはフクロウがいるだろ。結構連絡取り合ったり、魔法の指導受けたりしてたんだよ、手紙で」
だからシアが村に来ることになった時、ホストを頼んだ。まさか自分が教えるよう謀られるとは思わなかったけど、と説明する。
ひょっひょひょと笑いながらゲーラはフクロウを籠に戻した。
「説得は……されなかったんですね。領主として戻るべきだとか」
「そうじゃのぅ。齢七つにして『好きな子がいるから村に戻りたくない』などと泣かれてしまった日にはのー」
「ばーさん!」
カインは顔を真っ赤にして片手で顔を覆う。ゲーラはそんな愛弟子の背中を叩いた。
「しかしカインはいずれ必ず村に戻らねばならん。共に村に来れなければ、カインの恋心も二人が想い合う未来もどん詰まりじゃった。シアは、ほんによう決めて来てくださった」
うんうんと頷きながら、ゲーラはシアの頭を撫でる。
あらためて自分の知らない所での思いに涙が浮かび、シアはゲーラに抱きついた。
◇◆◇◆◇
「カインはこれからどうするの?」
「んー秋から大学。やっぱり法律やりたいし。村のこと、少しずつでも変えていきたいから」
「ええっ、掟は? 領主様……」
するとカインは人差し指を口元に当て、シッと黙らせた。
シアはあんぐりと口を開けたまま呆れ果てる。
「悪いな、付きっきりの指導できなくて」
「……村から出て行くの? おじさんのところ戻る?」
「いや、ホウキで片道二十分くらいだし通える。夕方には女体化して戻るよ。そしたら修行に付き合える」
あっけらかんと事もなげに言う。
「そんなに簡単に村に来れるもんなの。あれ、でもその割にこの一ヶ月はずっとここにいたよね?」
「まぁ……一番警戒しないといけないのはルカだったから」
大魔女様が見逃してくれるなら、そこまで難しくないという。
それにシアが門を破壊してから、心なしか以前より出入りが緩くなって来ている。
領主の城にも住まず、少女の姿で目立たなければ、出入りも労せず、他の魔女に迫られたりもしないだろうと。
「俺は……シア以外とキスする気ないし」
言って額にそっと口付けを落とす。続けて頬にも、瞼にも。唇だけを避けて。
といってもカインは女の子の姿なので微妙ではあるのだが。
「……私に、カインの想いが魔力でわかっちゃうの、嫌?」
「違う。嫌なんじゃなくて、前よりもっと……好きになってて……」
言いながら顔を真っ赤にする。
付き合って、想いを飲み込まなくてもいいと思ってから、前にも増してシアを求めてしまっている。だからキスなんてしたら、更に魔力を与えてしまうのだと。
「でもまだ、シアは怖いだろ? 大きい魔力持つの。我慢してんの、これでも」
先日の暴走で、たくさん泣かせてしまったからと。
そして僅かに頬を赤くしながらも、シアを真正面から見てきっぱり言う。
「だから! 早く魔法覚えて、心置きなくキスさせてよ。未来の大魔女様」
「うん、任せて。領主様」
顔を見合わせ笑い合うと、満点の星空の元、二人はそっと寄り添った。
◇◆◇◆◇
季節が変わり、クリスマス休暇にさしかかるころ、ロンドンに住む親友に嬉しい知らせが届いた。
「わっ、マルク見て! シアからメール来てる。メリークリスマスだって……魔女なのに!」
ジェシカが恋人のマルクに、嬉々としてスマホを見せた。
「シアのSNSも更新されてるぞ。はー、魔女の村にインターネットが」
「カインもいるんだって。へぇ領主ー」
するとメールを読んでいたジェシカが突如吹き出した。送られてきた添付写真をマルクにも見せながら笑いを堪える。
「見てこれカインちゃんだって! かわいい! ウケるー!」
「なかなかのナイスバディじゃないか。カインのやつ! 大学ホームページにはくっそ真面目な男の姿しか載せてないくせに」
パソコンでカインのSNSを開きながら、どう突っ込んでやろうと画策しだすマルクに、ジェシカはそっともたれて息をついた。
「シア、カインとうまくいってるみたい。よかったぁ」
「はは、あの二人、もどかしかったもんな。お互い好きなのにさ」
「うん。めっちゃ心配した」
付き合い自体は短いが、二人は表面上喧嘩をしていても、ずっと誰よりも互いを意識していたのを知っている。
「来年のクリスマスには会えるといいなぁ、二人とも」
ジェシカはスマホで「素敵な一年を。未来の大魔女シアへ、親友ジェシカより」と打ち込んだ。
◇◆◇◆◇
欧州ーーそこは魔女のいる世界。
村に引きこもっていた魔女達も、車を運転し、インターネットに触れ、少しずつ外の世界に門戸を開き出した。
「この商品、魔女さんにどうだろう」
「そのプロジェクト、魔女にも意見聞いてみないか」
「魔女の村か、遊びに行ってみようよ」
今日も村にはいろいろな人が訪れている。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
