魔女の村

各務みづほ

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魔女への入門

第二十話 魔女の村

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 ゲーラの家に戻ると、カインは改めて師にシアのことを頼んだ。

「ばーさんにはフクロウがいるだろ。結構連絡取り合ったり、魔法の指導受けたりしてたんだよ、手紙で」

 だからシアが村に来ることになった時、ホストを頼んだ。まさか自分が教えるよう謀られるとは思わなかったけど、と説明する。
 ひょっひょひょと笑いながらゲーラはフクロウを籠に戻した。

「説得は……されなかったんですね。領主として戻るべきだとか」
「そうじゃのぅ。齢七つにして『好きな子がいるから村に戻りたくない』などと泣かれてしまった日にはのー」
「ばーさん!」

 カインは顔を真っ赤にして片手で顔を覆う。ゲーラはそんな愛弟子の背中を叩いた。

「しかしカインはいずれ必ず村に戻らねばならん。共に村に来れなければ、カインの恋心も二人が想い合う未来もどん詰まりじゃった。シアは、ほんによう決めて来てくださった」

 うんうんと頷きながら、ゲーラはシアの頭を撫でる。
 あらためて自分の知らない所での思いに涙が浮かび、シアはゲーラに抱きついた。


  ◇◆◇◆◇


「カインはこれからどうするの?」
「んー秋から大学。やっぱり法律やりたいし。村のこと、少しずつでも変えていきたいから」
「ええっ、掟は? 領主様……」

 するとカインは人差し指を口元に当て、シッと黙らせた。
 シアはあんぐりと口を開けたまま呆れ果てる。

「悪いな、付きっきりの指導できなくて」
「……村から出て行くの? おじさんのところ戻る?」
「いや、ホウキで片道二十分くらいだし通える。夕方には女体化して戻るよ。そしたら修行に付き合える」

 あっけらかんと事もなげに言う。

「そんなに簡単に村に来れるもんなの。あれ、でもその割にこの一ヶ月はずっとここにいたよね?」
「まぁ……一番警戒しないといけないのはルカだったから」

 大魔女様が見逃してくれるなら、そこまで難しくないという。
 それにシアが門を破壊してから、心なしか以前より出入りが緩くなって来ている。
 領主の城にも住まず、少女の姿で目立たなければ、出入りも労せず、他の魔女に迫られたりもしないだろうと。

「俺は……シア以外とキスする気ないし」

 言って額にそっと口付けを落とす。続けて頬にも、瞼にも。唇だけを避けて。
 といってもカインは女の子の姿なので微妙ではあるのだが。

「……私に、カインの想いが魔力でわかっちゃうの、嫌?」
「違う。嫌なんじゃなくて、前よりもっと……好きになってて……」

 言いながら顔を真っ赤にする。
 付き合って、想いを飲み込まなくてもいいと思ってから、前にも増してシアを求めてしまっている。だからキスなんてしたら、更に魔力を与えてしまうのだと。

「でもまだ、シアは怖いだろ? 大きい魔力持つの。我慢してんの、これでも」

 先日の暴走で、たくさん泣かせてしまったからと。
 そして僅かに頬を赤くしながらも、シアを真正面から見てきっぱり言う。

「だから! 早く魔法覚えて、心置きなくキスさせてよ。未来の大魔女様」
「うん、任せて。領主様」

 顔を見合わせ笑い合うと、満点の星空の元、二人はそっと寄り添った。


  ◇◆◇◆◇


 季節が変わり、クリスマス休暇にさしかかるころ、ロンドンに住む親友に嬉しい知らせが届いた。

「わっ、マルク見て! シアからメール来てる。メリークリスマスだって……魔女なのに!」

 ジェシカが恋人のマルクに、嬉々としてスマホを見せた。

「シアのSNSも更新されてるぞ。はー、魔女の村にインターネットが」
「カインもいるんだって。へぇ領主ー」

 するとメールを読んでいたジェシカが突如吹き出した。送られてきた添付写真をマルクにも見せながら笑いを堪える。

「見てこれカインちゃんだって! かわいい! ウケるー!」
「なかなかのナイスバディじゃないか。カインのやつ! 大学ホームページにはくっそ真面目な男の姿しか載せてないくせに」
 

 パソコンでカインのSNSを開きながら、どう突っ込んでやろうと画策しだすマルクに、ジェシカはそっともたれて息をついた。

「シア、カインとうまくいってるみたい。よかったぁ」
「はは、あの二人、もどかしかったもんな。お互い好きなのにさ」
「うん。めっちゃ心配した」

 付き合い自体は短いが、二人は表面上喧嘩をしていても、ずっと誰よりも互いを意識していたのを知っている。

「来年のクリスマスには会えるといいなぁ、二人とも」

 ジェシカはスマホで「素敵な一年を。未来の大魔女シアへ、親友ジェシカより」と打ち込んだ。


  ◇◆◇◆◇


 欧州ーーそこは魔女のいる世界。

 村に引きこもっていた魔女達も、車を運転し、インターネットに触れ、少しずつ外の世界に門戸を開き出した。

「この商品、魔女さんにどうだろう」
「そのプロジェクト、魔女にも意見聞いてみないか」
「魔女の村か、遊びに行ってみようよ」

 今日も村にはいろいろな人が訪れている。

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