運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

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8 騎士一族と黒鉄編

2-4

 一部の試合で私がやる気満々だったのはそこまでだった。非常に残念なことではあるけれど。

「なんか、不満げですね」

 フィリアが私の顔色を窺ってきた。

「だって」

 不満げなんてかわいらしいものじゃない。
 私の不満が爆発している。

 そのすべてをぶちまけようとしたところ、フィリアが先に、私を諭し始めた。

「いいですか、お嬢。闘技会は団体戦なんです。個々の力を集団でいかにうまく生かせるか。それがポイントなんです」

「だからって」

 団体戦なのは分かってる。組織戦でもあるのも分かってる。

 出場メンバーに選ばれてない人も、選ばれている人も、すべての人が自分の全力をもってして戦いに挑むわけだ。

 なのに、私のこの不満はどこから湧きあがってくるのか。

 私が今、立たされている場所。
 それがすべての不満の原因だった。

「お嬢が背中を守ってくれるから、私たちはしっかり戦えるんですよ。それを忘れないでください」

「そうなんだけど」

「まだ不満があるんですか?」

 ない方がおかしいと思う。

 さぁ、戦うぞ! いざ、戦いだ!

 そんな高揚した気分でやってきた場所が、最奥だったのだから。




「お嬢は『魔術師』なので、ここです」

「え。ここ?」

 最初の試合が始まる前のこと。

 私だけ、何にも指示を受けてないので、リザルトに確認をしてみた。

 うん、自分でも分かってはいる。もっと早く確認しとけってこと。

 言い訳ではあるけど。ニグラートで準備や訓練を進めていた殲滅隊と違って、私は第三騎士団で仕事をして、お披露目会の準備や運営に携わって、あれこれ忙しかった。

 そのため、細かい説明も後回しになっていて、直前で説明を受ける羽目になっていたのだ。

 細かい説明が直前になったのは、いろいろと周りの誤解が重なったせいもある。

 ずっと王都で生活していたし、研修生として一年間、王城にはいたので、当然、闘技会のことを知っているだろうと思っていたリザルトを始めとするニグラートのみんな。

 グレイは出ないし、研修生としての業務もあって、闘技会はまったくタッチしてなかった私。

 自分が出場しないからと、闘技会情報を私にはぜんぜん教えてくれてなかったグレイ。

 当然のごとく、闘技会になんてまったく興味のないセラフィアスにクラヴィス。

 そんなこんなで、誰も私が細かいルールを知らないことに気がつかず、私も細かいルールがあることすら知らず。
 細かいルールを教えてもらって覚えるので精一杯。

 ユリンナ先輩には、指示通り動くだけと適当に言った話が、本当に本当の話になってしまっている。

 そして、リザルトに立ち位置と動き方を確認してたところ、連れてこられたのがここ。

 眺めはとてもいい。
 味方も敵も全体が見渡せる。

 というか、どちらかというと、味方の背中ばかりが見える。
 くるりと後ろを振り向けば、すぐそばは壁だ。そそり立つ壁の上には観客席。

 そう。

 私が連れていかれた場所とは、ニグラートの陣営の最後尾。ニグラートの旗がある場所だった。

 試合への出場者が全員戦闘不能になるか降参するか、もしくは、この旗を取られるかすると、敗北となる。

「ここ、戦うところじゃないよね?」

 旗を取られたらいけないんだから、ここは戦うところではなく守るところだ。
 しかも、ここは周りの人たちから守ってもらう場所でもある。

「何を言ってるんですか。一番、激しく攻撃されるところです」

 まぁ、そうとも言うか。

「でもそれは攻め込まれたら、でしょ?」

 せっかく私がやる気満々なのに、地味に防戦役をやらないといけないなんて。
 知らず知らずのうちに頬が膨らむ。

 不満が全面に出ているであろう私の顔を見て、リザルトは顔色一つ変えずに、次の言葉を繰り出してきた。

「お嬢の職種は?」

「…………………………魔術師?」

「妙な間と疑問形なのが気になりますが、そうです、魔術師です、お嬢は」

 当たり前のことを自信たっぷりに言うリザルトは、大きく両腕を広げた。

「もしかして、魔術師の場所がここなの?」

 私も真似して大きく両腕を広げる。

「どこのチームのどの作戦でも、基本、魔術師はここなんですよ、お嬢」

「うーん。私、魔物の討伐ではグレイのすぐ後ろにいるけど」

 広げた両腕を胸の前で組んで、今度はうーんと唸ってみたが、リザルトは別の話題を持ち出して私を説得しにかかった。

「大噴出ではこの位置ですよね」

「そうだった」

「適材適所という言葉を覚えてください」

 リザルトが言いたいことはよく分かった。

 魔術師は、魔法を準備するのに時間がかかるし、そこを狙われたら魔法は発動できない。
 だからこそ、騎士に守ってもらえる最後方が定位置であるのだ。

 でも、

「私が殴りにいった方が有利じゃない?」

 私だって、打撃武器の扱い方は教わってるし、第二騎士団の暗黒隊も、手合わせで全滅に追い込んだ。王宮魔術師団の筆頭すら殴り倒した実績がある。

 いける、絶対にいける。

 私が握り拳を振りかざして提案すると、物騒なものを見るような目で、私の顔と握り拳を交互に見てきた。そして、ため息一つ。

「お嬢。闘技会の一部は延々と休む暇なく試合なんです。数日に渡って。体力は温存しておかないと、身体が保ちませんよ」

「えー」

「うちはお嬢のおかげで、出場人数が半分なので、その分、騎士たちは体力回復できますが、お嬢はずっと出るようですからね」

「あー、確かに」

 痛いところをつかれた。

 騎士たちには交代要員がいるけど、私には代わりの私がいない。
 不公平感は否めないけど、グレイに代わりがいないのと同じだと思うと、リザルトの意見も納得だった。

「最悪、騎士が全滅しても、お嬢が旗を死守できれば、こっちの勝ちなんです。だから、最重要ポジションだと思ってください」

「うん、まぁ、分かったわ」

 こうして私の位置と役割が判明し、最初の試合に臨む。

 リザルトは出場者ではないので、待機場所へ、私は少し緊張しながら出場者が集まる場所へと移動するのだった。
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