運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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8 騎士一族と黒鉄編

3-15

 意外と作戦会議自体は淡々と進んだ。

 もちろん、ユースカペル副団長と魔術師長殿の話の進め方が良かったのもあるが、作戦会議を行うこと自体に文句があるわけではなかったようだ。

 ホッと胸をなでおろす。

「まず、エルシアと騎士のパターンだなぁ」

 この辺りまではまだいい。元より想定していた物だから。一部の試合の様子から話し合いをして作戦は詰めていた。

 その時は、まさか、自分たちが試合で対戦するとはまったく思っていなかったので、気楽さがあったが、そういう意味では今は誰の表情にも余裕がない。

「一部、二部はすべてこのパターンでの試合出場だったので、三部もこのパターンで来る可能性はとても高いと思います」

「ルベラスを旗の防戦に集中させて、他の騎士を潰しにいくのが順当だな」

 魔術師長のパシアヌス殿とユースカペル副団長がそれぞれ意見を述べると、あちこちからざわざわと話し合う声が聞こえてきた。

 とくに意見は出ないようだ。

 私が頷くと、パシアヌス殿が具体的に人数を割り振る。

「旗の守りに魔術師二人。対騎士に騎士二十人、中央突破をはかって騎士を全員引きつける。残り騎士八人は四人ずつ分かれて、左右から相手の旗を攻める。
 元より話し合っていた内容と変わりありませんが、どうでしょう?」

 パシアヌス殿の割り振りを聞き、すぐさま反応する騎士たち。

「これなら、エルシアも壁を旗の守りに集中するしかないだろう」

「相手の騎士は十五人、対してこっちは二十人。きちんと抑え込めるな」

「騎士を全員抑えたら、後はエルシアを包囲する」

 全員、自分たちの動きが具体的に掴めているようだ。まぁ、散々、陣形や作戦の話し合いやら特訓やらしてきたんだ。そのくらいは出来てもらわないと。

 そして、話を次に進めた。

「次に、エルシア以外の魔術師と騎士のパターン」

 今まで、このパターンでの試合はなかったので、おそらく今回もない。これは断言してもいいくらいだ。

 案の定、騎士たちからも疑問の声が挙がる。

「それ、あるか?」

「いやいや、ないだろ」

 多くが否定する中、ユースカペル副団長から冷静な指摘が飛んだ。

「ニグラートは全員、殲滅隊が出場してきてる。騎士といっても魔剣士だ。エルシアが出てこない代わりに魔剣士の数が倍近くになれば、これはこれで侮れない」

 すると、他の騎士も考え込む。

「なるほど」

「こっちも人数減らして、団長と副団長を出すか?」

「二人で十人分になるぞ?」

「それで組むとどうだい?」

 促してみると、みな、意外と素早く数字を出してきた。

「魔術師二人、騎士十八人、正副団長二人。旗の守りの魔術師二人は変わらないとして」

「左右から旗を攻める騎士は二人ずつの計四人、中央突破は正副団長二人と騎士十四人」

「魔剣士十五人だから、まぁまぁってところか」

「エルシア抜きパターンだと、こっちは人数で負けるぜ」

「でも、団長と副団長が入るからな」

 どうやら考えはまとまった様子。ゆっくり試合を外から眺めていたかったが、この流れだと参加させられそうだ。

 まとまったところで、ポンと手を打つ。

「で、問題はここらかだなぁ」

「ニグラートはこの他にも出場パターンがあるんですか?」

 当然の質問に、数秒、間を取ってから、答えた。

「グレイアド・ルプスが出てくるパターンだなぁ」

「あぁ、ルプス卿か」

「あの人も強かったよな」

 意外にもみな、落ち着いている。

 そうか。グレイアドのヤツ。第三騎士団に出向していた時は『ほどほど』で訓練してたんだな。

 今になってようやく、基本的なことに思い至った。

 だよな。出向先で自分の力を出し切るタイプじゃないよな、あいつは。

「隊長格と言われてたような気がしますが、ペナルティあるんですか?」

 今日一番、答えたくない質問が来たよ。

 頭を抱えそうになるのをぐっと我慢して、ユースカペル副団長を見ると、彼は無言で頷く。

 そして、口を開いた。

「十五人だそうだ」


 シーーーーーーーーン


 ペナルティの人数は強さの証。

 と言っても過言ではない。

 団長のペナルティが五人。
 に対してグレイアドのペナルティは十五人。

 どういう計算だと聞いてみたくもなるが、ルベラス君もグレイアドと同じペナルティ人数なので、グレイアドのヤバさがよく分かったはずだ。

 数字でヤバさが伝わったのか、

「エルシアと同等?」

「そんなにヤバいんですか?」

 ようやく真顔になる隊長格のヤツら。

 ちなみに、隊長というだけならペナルティはない。

「おいおい、あいつはああ見えても、鳴く魔獣も黙る殲滅隊の突撃隊長だ。普通の強さじゃないし、何より、あいつは魔剣持ちだ」

「ならやっぱり、正副団長が加わるパターンですね」

「ルプス卿、騎士十三人、魔術師二人。正副団長でルプス卿、残りの騎士十八人で向こうの騎士十三人。いけなくはないな」

「で、最悪のパターンが…………」

 私がもっとも恐れているパターンを口にすると、会議室は無言になった。息をすることも出来ないくらいの重苦しさが、会議室に充満する。

 誰かが、

「いやいやいやいや、それはないですよ」

 と言い出すと、

「だよな」

「団長、考えすぎだよな」

 とあちこちから声があがったが、重苦しい雰囲気は残ったままだった。
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