496 / 590
8 騎士一族と黒鉄編
3-15
意外と作戦会議自体は淡々と進んだ。
もちろん、ユースカペル副団長と魔術師長殿の話の進め方が良かったのもあるが、作戦会議を行うこと自体に文句があるわけではなかったようだ。
ホッと胸をなでおろす。
「まず、エルシアと騎士のパターンだなぁ」
この辺りまではまだいい。元より想定していた物だから。一部の試合の様子から話し合いをして作戦は詰めていた。
その時は、まさか、自分たちが試合で対戦するとはまったく思っていなかったので、気楽さがあったが、そういう意味では今は誰の表情にも余裕がない。
「一部、二部はすべてこのパターンでの試合出場だったので、三部もこのパターンで来る可能性はとても高いと思います」
「ルベラスを旗の防戦に集中させて、他の騎士を潰しにいくのが順当だな」
魔術師長のパシアヌス殿とユースカペル副団長がそれぞれ意見を述べると、あちこちからざわざわと話し合う声が聞こえてきた。
とくに意見は出ないようだ。
私が頷くと、パシアヌス殿が具体的に人数を割り振る。
「旗の守りに魔術師二人。対騎士に騎士二十人、中央突破をはかって騎士を全員引きつける。残り騎士八人は四人ずつ分かれて、左右から相手の旗を攻める。
元より話し合っていた内容と変わりありませんが、どうでしょう?」
パシアヌス殿の割り振りを聞き、すぐさま反応する騎士たち。
「これなら、エルシアも壁を旗の守りに集中するしかないだろう」
「相手の騎士は十五人、対してこっちは二十人。きちんと抑え込めるな」
「騎士を全員抑えたら、後はエルシアを包囲する」
全員、自分たちの動きが具体的に掴めているようだ。まぁ、散々、陣形や作戦の話し合いやら特訓やらしてきたんだ。そのくらいは出来てもらわないと。
そして、話を次に進めた。
「次に、エルシア以外の魔術師と騎士のパターン」
今まで、このパターンでの試合はなかったので、おそらく今回もない。これは断言してもいいくらいだ。
案の定、騎士たちからも疑問の声が挙がる。
「それ、あるか?」
「いやいや、ないだろ」
多くが否定する中、ユースカペル副団長から冷静な指摘が飛んだ。
「ニグラートは全員、殲滅隊が出場してきてる。騎士といっても魔剣士だ。エルシアが出てこない代わりに魔剣士の数が倍近くになれば、これはこれで侮れない」
すると、他の騎士も考え込む。
「なるほど」
「こっちも人数減らして、団長と副団長を出すか?」
「二人で十人分になるぞ?」
「それで組むとどうだい?」
促してみると、みな、意外と素早く数字を出してきた。
「魔術師二人、騎士十八人、正副団長二人。旗の守りの魔術師二人は変わらないとして」
「左右から旗を攻める騎士は二人ずつの計四人、中央突破は正副団長二人と騎士十四人」
「魔剣士十五人だから、まぁまぁってところか」
「エルシア抜きパターンだと、こっちは人数で負けるぜ」
「でも、団長と副団長が入るからな」
どうやら考えはまとまった様子。ゆっくり試合を外から眺めていたかったが、この流れだと参加させられそうだ。
まとまったところで、ポンと手を打つ。
「で、問題はここらかだなぁ」
「ニグラートはこの他にも出場パターンがあるんですか?」
当然の質問に、数秒、間を取ってから、答えた。
「グレイアド・ルプスが出てくるパターンだなぁ」
「あぁ、ルプス卿か」
「あの人も強かったよな」
意外にもみな、落ち着いている。
そうか。グレイアドのヤツ。第三騎士団に出向していた時は『ほどほど』で訓練してたんだな。
今になってようやく、基本的なことに思い至った。
だよな。出向先で自分の力を出し切るタイプじゃないよな、あいつは。
「隊長格と言われてたような気がしますが、ペナルティあるんですか?」
今日一番、答えたくない質問が来たよ。
頭を抱えそうになるのをぐっと我慢して、ユースカペル副団長を見ると、彼は無言で頷く。
そして、口を開いた。
「十五人だそうだ」
シーーーーーーーーン
ペナルティの人数は強さの証。
と言っても過言ではない。
団長のペナルティが五人。
に対してグレイアドのペナルティは十五人。
どういう計算だと聞いてみたくもなるが、ルベラス君もグレイアドと同じペナルティ人数なので、グレイアドのヤバさがよく分かったはずだ。
数字でヤバさが伝わったのか、
「エルシアと同等?」
「そんなにヤバいんですか?」
ようやく真顔になる隊長格のヤツら。
ちなみに、隊長というだけならペナルティはない。
「おいおい、あいつはああ見えても、鳴く魔獣も黙る殲滅隊の突撃隊長だ。普通の強さじゃないし、何より、あいつは魔剣持ちだ」
「ならやっぱり、正副団長が加わるパターンですね」
「ルプス卿、騎士十三人、魔術師二人。正副団長でルプス卿、残りの騎士十八人で向こうの騎士十三人。いけなくはないな」
「で、最悪のパターンが…………」
私がもっとも恐れているパターンを口にすると、会議室は無言になった。息をすることも出来ないくらいの重苦しさが、会議室に充満する。
誰かが、
「いやいやいやいや、それはないですよ」
と言い出すと、
「だよな」
「団長、考えすぎだよな」
とあちこちから声があがったが、重苦しい雰囲気は残ったままだった。
もちろん、ユースカペル副団長と魔術師長殿の話の進め方が良かったのもあるが、作戦会議を行うこと自体に文句があるわけではなかったようだ。
ホッと胸をなでおろす。
「まず、エルシアと騎士のパターンだなぁ」
この辺りまではまだいい。元より想定していた物だから。一部の試合の様子から話し合いをして作戦は詰めていた。
その時は、まさか、自分たちが試合で対戦するとはまったく思っていなかったので、気楽さがあったが、そういう意味では今は誰の表情にも余裕がない。
「一部、二部はすべてこのパターンでの試合出場だったので、三部もこのパターンで来る可能性はとても高いと思います」
「ルベラスを旗の防戦に集中させて、他の騎士を潰しにいくのが順当だな」
魔術師長のパシアヌス殿とユースカペル副団長がそれぞれ意見を述べると、あちこちからざわざわと話し合う声が聞こえてきた。
とくに意見は出ないようだ。
私が頷くと、パシアヌス殿が具体的に人数を割り振る。
「旗の守りに魔術師二人。対騎士に騎士二十人、中央突破をはかって騎士を全員引きつける。残り騎士八人は四人ずつ分かれて、左右から相手の旗を攻める。
元より話し合っていた内容と変わりありませんが、どうでしょう?」
パシアヌス殿の割り振りを聞き、すぐさま反応する騎士たち。
「これなら、エルシアも壁を旗の守りに集中するしかないだろう」
「相手の騎士は十五人、対してこっちは二十人。きちんと抑え込めるな」
「騎士を全員抑えたら、後はエルシアを包囲する」
全員、自分たちの動きが具体的に掴めているようだ。まぁ、散々、陣形や作戦の話し合いやら特訓やらしてきたんだ。そのくらいは出来てもらわないと。
そして、話を次に進めた。
「次に、エルシア以外の魔術師と騎士のパターン」
今まで、このパターンでの試合はなかったので、おそらく今回もない。これは断言してもいいくらいだ。
案の定、騎士たちからも疑問の声が挙がる。
「それ、あるか?」
「いやいや、ないだろ」
多くが否定する中、ユースカペル副団長から冷静な指摘が飛んだ。
「ニグラートは全員、殲滅隊が出場してきてる。騎士といっても魔剣士だ。エルシアが出てこない代わりに魔剣士の数が倍近くになれば、これはこれで侮れない」
すると、他の騎士も考え込む。
「なるほど」
「こっちも人数減らして、団長と副団長を出すか?」
「二人で十人分になるぞ?」
「それで組むとどうだい?」
促してみると、みな、意外と素早く数字を出してきた。
「魔術師二人、騎士十八人、正副団長二人。旗の守りの魔術師二人は変わらないとして」
「左右から旗を攻める騎士は二人ずつの計四人、中央突破は正副団長二人と騎士十四人」
「魔剣士十五人だから、まぁまぁってところか」
「エルシア抜きパターンだと、こっちは人数で負けるぜ」
「でも、団長と副団長が入るからな」
どうやら考えはまとまった様子。ゆっくり試合を外から眺めていたかったが、この流れだと参加させられそうだ。
まとまったところで、ポンと手を打つ。
「で、問題はここらかだなぁ」
「ニグラートはこの他にも出場パターンがあるんですか?」
当然の質問に、数秒、間を取ってから、答えた。
「グレイアド・ルプスが出てくるパターンだなぁ」
「あぁ、ルプス卿か」
「あの人も強かったよな」
意外にもみな、落ち着いている。
そうか。グレイアドのヤツ。第三騎士団に出向していた時は『ほどほど』で訓練してたんだな。
今になってようやく、基本的なことに思い至った。
だよな。出向先で自分の力を出し切るタイプじゃないよな、あいつは。
「隊長格と言われてたような気がしますが、ペナルティあるんですか?」
今日一番、答えたくない質問が来たよ。
頭を抱えそうになるのをぐっと我慢して、ユースカペル副団長を見ると、彼は無言で頷く。
そして、口を開いた。
「十五人だそうだ」
シーーーーーーーーン
ペナルティの人数は強さの証。
と言っても過言ではない。
団長のペナルティが五人。
に対してグレイアドのペナルティは十五人。
どういう計算だと聞いてみたくもなるが、ルベラス君もグレイアドと同じペナルティ人数なので、グレイアドのヤバさがよく分かったはずだ。
数字でヤバさが伝わったのか、
「エルシアと同等?」
「そんなにヤバいんですか?」
ようやく真顔になる隊長格のヤツら。
ちなみに、隊長というだけならペナルティはない。
「おいおい、あいつはああ見えても、鳴く魔獣も黙る殲滅隊の突撃隊長だ。普通の強さじゃないし、何より、あいつは魔剣持ちだ」
「ならやっぱり、正副団長が加わるパターンですね」
「ルプス卿、騎士十三人、魔術師二人。正副団長でルプス卿、残りの騎士十八人で向こうの騎士十三人。いけなくはないな」
「で、最悪のパターンが…………」
私がもっとも恐れているパターンを口にすると、会議室は無言になった。息をすることも出来ないくらいの重苦しさが、会議室に充満する。
誰かが、
「いやいやいやいや、それはないですよ」
と言い出すと、
「だよな」
「団長、考えすぎだよな」
とあちこちから声があがったが、重苦しい雰囲気は残ったままだった。
あなたにおすすめの小説
マジメにやってよ!王子様
猫枕
恋愛
伯爵令嬢ローズ・ターナー(12)はエリック第一王子(12)主宰のお茶会に参加する。
エリックのイタズラで危うく命を落としそうになったローズ。
生死をさまよったローズが意識を取り戻すと、エリックが責任を取る形で両家の間に婚約が成立していた。
その後のエリックとの日々は馬鹿らしくも楽しい毎日ではあったが、お年頃になったローズは周りのご令嬢達のようにステキな恋がしたい。
ふざけてばかりのエリックに不満をもつローズだったが。
「私は王子のサンドバッグ」
のエリックとローズの別世界バージョン。
登場人物の立ち位置は少しずつ違っています。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
4人の女
猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。
うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。
このご婦人方には共通点がある。
かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。
『氷の貴公子』の異名を持つ男。
ジルベール・タレーラン公爵令息。
絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。
しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。
この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。
こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結】王命の代行をお引き受けいたします
ユユ
恋愛
【 お知らせ 】
先日、近況ボードにも
お知らせしました通り
2026年4月に
完結済みのお話の多数を
一旦closeいたします。
誤字脱字などを修正して
再掲載をするつもりですが
再掲載しない作品もあります。
再掲載の時期は決まっておりません。
表現の変更などもあり得ます。
他の作品も同様です。
ご了承いただけますようお願いいたします。
ユユ
【 お話の内容紹介 】
白過ぎる結婚。
逃れられない。
隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。
相手は一人息子。
姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。
仕方なく私が花嫁に。
* 作り話です。
* 完結しています。
聖女は歌う 復讐の歌を
奏千歌
恋愛
[悠久を生きる魔女①]
*②と②´まとめました。バッドエンドです。後味が悪い部分があります。ご注意ください。
幼なじみの令嬢との婚約を解消して、新たに聖女と王太子が婚約した。といった騒動があった事は私には関係の無いことだと思っていた。
ドンドンと扉を叩く音が聞こえ、薬草を調合する手を止め、エプロンを外しながら玄関に向かった。
こんな森の中の辺鄙な場所に誰がきたのかと、首を傾げながら取っ手を掴んだ。
そもそも、人避けの結界を張っているのに、そんな場所に侵入できるのは限られている。
カチャっと扉を開くと、予想通りの人の姿を認めた。
「エカチェリーナ、助けて!」
開けるなり飛び込んで来たのは、この国の王太子と婚約したばかりの聖女、ヴェロニカさんだった。
コテンと首を傾げた私に彼女が頼んできたことは、第二王子を救うことをだった。
彼女に同行して、城で私が見たものは…………