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4 聖魔術師の幻影編
3-2
五分後には、私たちはエンデバート卿と数名の護衛騎士に連れられて、王宮の外郭の遊歩道を歩いていた。
エンデバート卿から直接、説明が聞きたいからと、エスコートはばっさりと断ったので、私はグレイに手を取られながら、ソニアも自分の専属護衛の手を取っている。
「王宮の周りは庭園調の遊歩道になっています。
普段使いのところで、ちゃんとした庭園として作られているところではありませんが、季節の花を楽しめるように、庭師が工夫しています」
エンデバート卿の説明もそこそこに、私は周りに集中していた。遺物の《探知》をこっそり行うために。
《探知》に集中する私をグレイが不自然にならない程度に支えて、誘導する。
まぁ、ほぼ、連行に近い。
「どうですか?」
突然、私に感想を振ってくるエンデバート卿の相手を、ソニアが優雅にこなす。
「えぇ、普段使いとは思えないほど、作り込まれていますわ。見事ですね」
「でしょう? ルベラス嬢はいかがですか? 気に入られましたか?」
うん、しつこい。
あくまでも、私にも何か喋らせるつもりか。変に喋ると、仲良く歓談してた、なんて言われかねない。
私の面倒そうな顔に気づいてソニアから、注意が飛ぶ。
「(エルシア、少しは反応しないとダメですわよ)」
仕方ない。
「私、花は詳しくないんで」
私の応対にソニアがうっという表情を一瞬浮かべた後、すぐさまフォローに入った。
「そうでしたわね。よろしければ、説明していただけます? グラディアではあまり見かけない花もあるみたいですし」
「えぇっと、専門外なので、知っている限りにはなりますが…………」
それから、エンデバート卿による花の説明が始まる。
騎士隊長に花の説明をさせるソニアもソニアだけれど、応じるエンデバート卿もエンデバート卿だ。
エンデバート卿が花の説明をしている隙に、私はソニアの真横にぴったりとくっついて、説明を始めた。
「(王宮関係と魔術師関係のところに《魔力防御》がある)」
「(普通ですわね)」
一言で《魔力防御》と言っても、様々なものがある。
力のある言葉が同じだけで、魔法陣の術式、細かい指令などは千差万別。
例えば、学院の魔力防御壁。あれも《魔力防御》の一つだ。《魔力防御》を壁のように張り巡らせ、あらゆる魔力を外に漏らさないよう遮断する。
学院のは中から外に出ないように、というものだけれど、このタイプの方が珍しく、外からの攻撃魔法を中に通さないようにするタイプが主流だ。
ここで使われてる《魔力防御》は主流の方で、さらに魔力による干渉も防御するような術式が組まれていた。
簡単にいうと、外からの攻撃魔法を防ぐだけでなく、魔法を弱体化させたり無効化したりする魔法も防ぐ。
中で魔法を使っている者を守るのに、とても適した術式になっていた。
ソニアの言うとおり、術式自体はよく目にするもの。この術式があちこちにかけられてはいたのだけれど、念入りにかけられている場所がおかしい。
「(一番厳重なのがお披露目会の会場)」
「(え? そこですの?)」
ソニアも驚いた様子を見せる。
お披露目会の会場には『金冠』がいる。
金冠は回復魔法や治療魔法が得意なわけだけれど、それと、無効化魔法や弱体化魔法対策というのが、どうにもしっくりこない。
その考えをソニアに伝えると、ソニアからも同意された。
「(だいたい、回復魔法や治療魔法は弱体化や無効化など出来ませんわ)」
ソニアの指摘ももっともだった。
出来ないんだから対策する必要はない。
「(能力を上げる魔法や状態異常を起こす魔法など、効果が持続するような魔法を使っているのなら、弱体化や無効化魔法で邪魔されるのを防ぎたくなりますけれど)」
「(それに、王宮よりも厳重ってのが引っかかるんだよね)」
私は黙って、王宮と魔術師団の建物とを見比べたけれど、とくに答えになるような物は感知できなかった。
そう。新リテラ王国に来る前にも言われていた遺物。
この気配も、まっっっったくなし!
とにかく。
金冠のことも遺物のことも、はっきりと探り当てることが出来ず、少しもやっとする。
「…………といったくらいで。お恥ずかしながら、後はそれほど詳しくないんです」
どうやらこの辺で時間切れのようだった。外周はこんなところかな。
エンデバート卿が持てる知識を総動員して説明してくれた花は、それなりの種類があった。
「いえ、十分、お詳しいですわ」
公爵令嬢であるソニアにそう言わしめるほどに。ソニアにお世辞抜きで誉められるのも凄いけど、どうして騎士なのに、花に詳しいのかと首を傾げてしまう。
「うちのエルシアなんて、綺麗ならそれでいい、ですもの」
うん、そうだね。
花言葉とかなんだとか、あまり興味ないしね。ご令嬢の嗜みとして花言葉は必須だからと、ギューギューに知識を詰め込まれはしたけどね。
「それはそれで潔いですね。でも、いろいろ見られているから、興味はおありなんですね」
ギクギク。
私があちこちキョロキョロ見まわしていたことに、気がついていたようだ。
見ていたのは花じゃないけど。
「まぁ、そうみたいですね。エルシアも年頃の女性ですから」
ソニアがホホホと笑ってごまかした。
私もソニアの真似をしてホホホと笑う。
なぜか、顔を赤くするエンデバート卿。
「では、次は騎士隊の方にご案内します」
そそくさと次の場所へと案内を進めた。
騎士隊か。騎士隊は別に見なくても良さそうだけど、ついでだから案内してもらうか。
そしてこの後、私もソニアも、この『ついで』の見学を後悔することになる。
エンデバート卿から直接、説明が聞きたいからと、エスコートはばっさりと断ったので、私はグレイに手を取られながら、ソニアも自分の専属護衛の手を取っている。
「王宮の周りは庭園調の遊歩道になっています。
普段使いのところで、ちゃんとした庭園として作られているところではありませんが、季節の花を楽しめるように、庭師が工夫しています」
エンデバート卿の説明もそこそこに、私は周りに集中していた。遺物の《探知》をこっそり行うために。
《探知》に集中する私をグレイが不自然にならない程度に支えて、誘導する。
まぁ、ほぼ、連行に近い。
「どうですか?」
突然、私に感想を振ってくるエンデバート卿の相手を、ソニアが優雅にこなす。
「えぇ、普段使いとは思えないほど、作り込まれていますわ。見事ですね」
「でしょう? ルベラス嬢はいかがですか? 気に入られましたか?」
うん、しつこい。
あくまでも、私にも何か喋らせるつもりか。変に喋ると、仲良く歓談してた、なんて言われかねない。
私の面倒そうな顔に気づいてソニアから、注意が飛ぶ。
「(エルシア、少しは反応しないとダメですわよ)」
仕方ない。
「私、花は詳しくないんで」
私の応対にソニアがうっという表情を一瞬浮かべた後、すぐさまフォローに入った。
「そうでしたわね。よろしければ、説明していただけます? グラディアではあまり見かけない花もあるみたいですし」
「えぇっと、専門外なので、知っている限りにはなりますが…………」
それから、エンデバート卿による花の説明が始まる。
騎士隊長に花の説明をさせるソニアもソニアだけれど、応じるエンデバート卿もエンデバート卿だ。
エンデバート卿が花の説明をしている隙に、私はソニアの真横にぴったりとくっついて、説明を始めた。
「(王宮関係と魔術師関係のところに《魔力防御》がある)」
「(普通ですわね)」
一言で《魔力防御》と言っても、様々なものがある。
力のある言葉が同じだけで、魔法陣の術式、細かい指令などは千差万別。
例えば、学院の魔力防御壁。あれも《魔力防御》の一つだ。《魔力防御》を壁のように張り巡らせ、あらゆる魔力を外に漏らさないよう遮断する。
学院のは中から外に出ないように、というものだけれど、このタイプの方が珍しく、外からの攻撃魔法を中に通さないようにするタイプが主流だ。
ここで使われてる《魔力防御》は主流の方で、さらに魔力による干渉も防御するような術式が組まれていた。
簡単にいうと、外からの攻撃魔法を防ぐだけでなく、魔法を弱体化させたり無効化したりする魔法も防ぐ。
中で魔法を使っている者を守るのに、とても適した術式になっていた。
ソニアの言うとおり、術式自体はよく目にするもの。この術式があちこちにかけられてはいたのだけれど、念入りにかけられている場所がおかしい。
「(一番厳重なのがお披露目会の会場)」
「(え? そこですの?)」
ソニアも驚いた様子を見せる。
お披露目会の会場には『金冠』がいる。
金冠は回復魔法や治療魔法が得意なわけだけれど、それと、無効化魔法や弱体化魔法対策というのが、どうにもしっくりこない。
その考えをソニアに伝えると、ソニアからも同意された。
「(だいたい、回復魔法や治療魔法は弱体化や無効化など出来ませんわ)」
ソニアの指摘ももっともだった。
出来ないんだから対策する必要はない。
「(能力を上げる魔法や状態異常を起こす魔法など、効果が持続するような魔法を使っているのなら、弱体化や無効化魔法で邪魔されるのを防ぎたくなりますけれど)」
「(それに、王宮よりも厳重ってのが引っかかるんだよね)」
私は黙って、王宮と魔術師団の建物とを見比べたけれど、とくに答えになるような物は感知できなかった。
そう。新リテラ王国に来る前にも言われていた遺物。
この気配も、まっっっったくなし!
とにかく。
金冠のことも遺物のことも、はっきりと探り当てることが出来ず、少しもやっとする。
「…………といったくらいで。お恥ずかしながら、後はそれほど詳しくないんです」
どうやらこの辺で時間切れのようだった。外周はこんなところかな。
エンデバート卿が持てる知識を総動員して説明してくれた花は、それなりの種類があった。
「いえ、十分、お詳しいですわ」
公爵令嬢であるソニアにそう言わしめるほどに。ソニアにお世辞抜きで誉められるのも凄いけど、どうして騎士なのに、花に詳しいのかと首を傾げてしまう。
「うちのエルシアなんて、綺麗ならそれでいい、ですもの」
うん、そうだね。
花言葉とかなんだとか、あまり興味ないしね。ご令嬢の嗜みとして花言葉は必須だからと、ギューギューに知識を詰め込まれはしたけどね。
「それはそれで潔いですね。でも、いろいろ見られているから、興味はおありなんですね」
ギクギク。
私があちこちキョロキョロ見まわしていたことに、気がついていたようだ。
見ていたのは花じゃないけど。
「まぁ、そうみたいですね。エルシアも年頃の女性ですから」
ソニアがホホホと笑ってごまかした。
私もソニアの真似をしてホホホと笑う。
なぜか、顔を赤くするエンデバート卿。
「では、次は騎士隊の方にご案内します」
そそくさと次の場所へと案内を進めた。
騎士隊か。騎士隊は別に見なくても良さそうだけど、ついでだから案内してもらうか。
そしてこの後、私もソニアも、この『ついで』の見学を後悔することになる。
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