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5 覆面作家と水精編
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リーブル嬢に声をかけた騎士たちは、第五隊所属の騎士だ。
私も第五隊だったし、三聖の展示室の見学会でいっしょに仕事をしたことがある。
私のことを、何かと気にかけてくれた騎士たちだった。時には注意されたり、時には味方になってくれたり、公平ないい騎士たちだと思う。
その二人までもリーブル嬢に声をかけているのを見て、私はガッカリした気分になる。
「あ、トナー先輩にフォルド先輩。ミライラで構いませんよ!」
リーブル嬢は遅れて声をかけてきた二人に、明るく返事をした。
この明るくて元気が出てくるような声。
みんな、好きだからな。
ところが。
次に発せられた声は、私が予想していたものとは違うものだったのだ。
おそらく、リーブル嬢の予想とも。
「仮配属なんだから、砕けた呼び方は好ましくない」
正論だけれど、ここまでバシッと言った人物はいなかったのだろう。
言葉を発したのは二人のうち年長の騎士だけど、その静かな声に圧され、リーブル嬢の周りを取り囲んでいる騎士たちはピタッと動きを止め、リーブル嬢の方はみるみる表情を曇らせた。
「そう言われると寂しいですね」
「騎士団のルールなんだから。優秀な君なら、当然、分かってくれると思ったんだがな」
「でも、副隊長のクラウド先輩だって、ミライラって呼んでくれてますよ?」
リーブル嬢の反論に、そうだよな、と周りも同調する。
しかし、周りのざわざわにもリーブル嬢の反論にも眉一つ動かさず、さらに言い返した。
「クストス隊長はそう呼んでない」
「はい、それはそうですが…………」
またもや、表情を曇らせて、さらにうなだれるリーブル嬢に興味も示さず、話を続ける二人。
「その話はもういい。話しかけたのは呼び名の注意ではなく別件だ」
おお? なんだろう?
て、私はいつまで入り口で中を窺っていないといけないんだろう?
グレイは私がいつまで経っても食堂に入らないことを気にした風もなく、私の隣にピッタリくっついていた。
言葉通りピッタリと密着していて、なんだか、髪もいじくられてる。
これ、端から見たら、なんか誤解されそう。
グレイに適度な距離をと言いかけたところで、食堂内で会話が始まる。
いまさら会話を聞き漏らすのもしゃくなので、私は再び、食堂内に集中した。
グレイに注意するタイミングを逃してしまったので、このことについては、後できちんと注意しておかないと。
「リーブル嬢は研修中に教わっていないようだが、序列的には、今、エルシアは第三騎士団の次席魔術師、第二位になる」
「それは序列的な話なんですよね? 実力的には、」
「実力的には第一位だ」
「………………え?」
うん、それはそうだな。
私、これでもセラだし。
思わぬ情報に絶句するリーブル嬢とは違って、第五隊の騎士たちは至って平静だった。
「魔術師の実力的にはトップなんだよな」
「パシアヌス様以上だしな」
「他の騎士団の魔術師と比べてもトップクラスだしな」
「性格はともかく、魔術師としては凄いヤツなんなよな」
「………………え?」
みんな、口々に『魔術師として』の私の実力を褒め称えてくれるので、私の気分は少し上向きになる。
しかし、突然、そんな話を出して。だからなんだと言うつもりなのか。
その答えに繋がる内容を年若い騎士が明らかにした。
「少し前に、エルシアの異動を第一と第二の団長から打診されて、ヴァンフェルム団長が断ってましたよね」
「あぁ。だから、他愛もない噂話が原因でエルシアが第三騎士団に居づらくなった、なんてことになったら、喜ぶのは第一と第二なんだよ」
「発端が第五隊してた噂話だなんてことになったら…………」
チラリと他の第五隊の騎士を見る二人。
「さすがに、第五隊のせいでエルシアが他に引き抜かれた、って、マズくないか?」
「マズいどころじゃないぞ、それ」
さきほどまで、リーブル嬢に乗っかって私のことをあれこれ言ってた勢いが、あっという間になくなっていた。
リーブル嬢だけは変わらず、私のことを訴え続ける。
「でも、私。ルベラス先輩に無視されてるみたいで」
この言葉を聞いて、リーブル嬢を囲んでいる騎士たちは、私を非難したものだけれど、この年長の騎士は冷静に問題点を指摘した。
「先にリーブル嬢は挨拶したのか?」
「えっと、先にルベラス先輩から声をかけてもらわないと、こちらからは声をかけづらいです」
「声をかけるのと挨拶は別だろう。例えば王太子殿下とすれ違うとき、こっちから声をかけられなくても、こっちから挨拶はするよな」
身分違いの相手を引き合いに出してはいるけど、言いたいことは伝わってくる。
なので、リーブル嬢もおとなしく頷くしかなかったようだ。
「はい」
「まぁ、エルシアも愛想がいいわけじゃないから、誤解するのも仕方ないが、気をつけた方がいい」
「そうそう。リーブル嬢の評価が下がりかねないからね」
「ご忠告、ありがとうございます」
けっきょく、最後にリーブル嬢が頭を下げて終わりとなった。
いや本当に。訳が分からない。
なんでここまで敵視されてるんだろう。
国外公務でリーブル嬢といっしょに出かけたときは、和気あいあいと会話をしていたのにな。
確かにこの辺りからも、私を追い出して代わりに自分が、みたいなところはあるにはあった。今から思えば、ほんの些細な事だけど。
そして、よくよく思い起こしてみると、関係が大きく変わったのは、リーブル嬢が第三騎士団に仮配属されてから。
この時に、私はリーブル嬢にとって邪魔者になったのかもしれない。
それでも、私の味方についてくれる人もいるんだし、深く気にせずやっていくしかない。
私は強く心に誓った。
「あの二人、良い人なんだよ。いつも私に親切にしてくれるし」
「そうか」
「変な噂にも惑わされないし」
「なるほどな。それなら引き抜くか、あの二人」
え? 引き抜く?
事も無げに喋るグレイに私は一瞬、言葉に詰まる。
「シアが北部に帰るときに、あの二人も連れて帰ろうか、という話だ」
「誘拐? それとも恐喝?」
「声をかければ喜んでついてくるぞ」
「へー。グレイ、北部って人気なんだね」
私がピッタリくっついているグレイに返事をすると、別な方向から声が聞こえてきた。バルザート卿だ。
「マジですか? 北部辺境騎士団は人気ないと思いますが。それよりランチ、作ってもらってきましたよ」
バルザート卿は、手に三人分のお昼を抱えている。
「隊長もお嬢も、人目のつくところでイチャイチャしてないで。移動しましょう」
「い、イチャイチャ?!」
「お嬢。そんなにべったりと抱き合っていて、イチャイチャしてないと言い張るつもりですか?」
うっ。
顔が熱くなる。
グレイがピッタリくっついているので、何か誤解されそうだとは思ったけど。
まさか、周りからは抱き合っているように見えていたとは。
いつの間にか、グレイの腕が私の腰に回されていて、後ろから抱きつかれている格好になっているし。
「グレイ、イチャイチャしてると誤解されるから、もうちょっと離れて!」
私は先ほどのタイミングで、グレイに注意しなかったことを後悔した。
遅くはなったけど、注意して、グレイを引きはがしにかかる。
「何か問題でもあるのか?」
「問題だらけでしょ、勤務中にイチャイチャなんて!」
うん、グレイの馬鹿力にかなうはずなかったな。びくともしない。
「今は昼休憩だが?」
「それでも勤務中には変わりないから!」
「なら、勤務が終わった後なら良いわけだな。俺とシアはパートナーだしな」
「え、えーっと」
「良いよな、シア」
「うん、まぁね」
グレイの圧におされて、思わず頷く。
「お嬢って、意外と押しに弱かったんですね」
バルザート卿の呆れ声に、いやこれはグレイ限定だから、と心の中でつぶやいた。
このところ、グレイはぐっと物理的な距離を縮めてきていて、私もついつい受け入れてしまっているような気がする。
グレイはグレイで「パートナーなんだから、本来はこの距離が妥当」と言い切るけれど。経験不足の私にはよく分からない。
「とにかく、お昼にしましょう」
バルザート卿の提案に同意して、私たちはランチを持って移動することにした。今の食堂の中では居心地が悪いので、このまま団長室に戻ろうか。
行く先が決まって、動き出したとたん、
「あ、エルシア」
聞き慣れた声に私は呼び止められた。
私も第五隊だったし、三聖の展示室の見学会でいっしょに仕事をしたことがある。
私のことを、何かと気にかけてくれた騎士たちだった。時には注意されたり、時には味方になってくれたり、公平ないい騎士たちだと思う。
その二人までもリーブル嬢に声をかけているのを見て、私はガッカリした気分になる。
「あ、トナー先輩にフォルド先輩。ミライラで構いませんよ!」
リーブル嬢は遅れて声をかけてきた二人に、明るく返事をした。
この明るくて元気が出てくるような声。
みんな、好きだからな。
ところが。
次に発せられた声は、私が予想していたものとは違うものだったのだ。
おそらく、リーブル嬢の予想とも。
「仮配属なんだから、砕けた呼び方は好ましくない」
正論だけれど、ここまでバシッと言った人物はいなかったのだろう。
言葉を発したのは二人のうち年長の騎士だけど、その静かな声に圧され、リーブル嬢の周りを取り囲んでいる騎士たちはピタッと動きを止め、リーブル嬢の方はみるみる表情を曇らせた。
「そう言われると寂しいですね」
「騎士団のルールなんだから。優秀な君なら、当然、分かってくれると思ったんだがな」
「でも、副隊長のクラウド先輩だって、ミライラって呼んでくれてますよ?」
リーブル嬢の反論に、そうだよな、と周りも同調する。
しかし、周りのざわざわにもリーブル嬢の反論にも眉一つ動かさず、さらに言い返した。
「クストス隊長はそう呼んでない」
「はい、それはそうですが…………」
またもや、表情を曇らせて、さらにうなだれるリーブル嬢に興味も示さず、話を続ける二人。
「その話はもういい。話しかけたのは呼び名の注意ではなく別件だ」
おお? なんだろう?
て、私はいつまで入り口で中を窺っていないといけないんだろう?
グレイは私がいつまで経っても食堂に入らないことを気にした風もなく、私の隣にピッタリくっついていた。
言葉通りピッタリと密着していて、なんだか、髪もいじくられてる。
これ、端から見たら、なんか誤解されそう。
グレイに適度な距離をと言いかけたところで、食堂内で会話が始まる。
いまさら会話を聞き漏らすのもしゃくなので、私は再び、食堂内に集中した。
グレイに注意するタイミングを逃してしまったので、このことについては、後できちんと注意しておかないと。
「リーブル嬢は研修中に教わっていないようだが、序列的には、今、エルシアは第三騎士団の次席魔術師、第二位になる」
「それは序列的な話なんですよね? 実力的には、」
「実力的には第一位だ」
「………………え?」
うん、それはそうだな。
私、これでもセラだし。
思わぬ情報に絶句するリーブル嬢とは違って、第五隊の騎士たちは至って平静だった。
「魔術師の実力的にはトップなんだよな」
「パシアヌス様以上だしな」
「他の騎士団の魔術師と比べてもトップクラスだしな」
「性格はともかく、魔術師としては凄いヤツなんなよな」
「………………え?」
みんな、口々に『魔術師として』の私の実力を褒め称えてくれるので、私の気分は少し上向きになる。
しかし、突然、そんな話を出して。だからなんだと言うつもりなのか。
その答えに繋がる内容を年若い騎士が明らかにした。
「少し前に、エルシアの異動を第一と第二の団長から打診されて、ヴァンフェルム団長が断ってましたよね」
「あぁ。だから、他愛もない噂話が原因でエルシアが第三騎士団に居づらくなった、なんてことになったら、喜ぶのは第一と第二なんだよ」
「発端が第五隊してた噂話だなんてことになったら…………」
チラリと他の第五隊の騎士を見る二人。
「さすがに、第五隊のせいでエルシアが他に引き抜かれた、って、マズくないか?」
「マズいどころじゃないぞ、それ」
さきほどまで、リーブル嬢に乗っかって私のことをあれこれ言ってた勢いが、あっという間になくなっていた。
リーブル嬢だけは変わらず、私のことを訴え続ける。
「でも、私。ルベラス先輩に無視されてるみたいで」
この言葉を聞いて、リーブル嬢を囲んでいる騎士たちは、私を非難したものだけれど、この年長の騎士は冷静に問題点を指摘した。
「先にリーブル嬢は挨拶したのか?」
「えっと、先にルベラス先輩から声をかけてもらわないと、こちらからは声をかけづらいです」
「声をかけるのと挨拶は別だろう。例えば王太子殿下とすれ違うとき、こっちから声をかけられなくても、こっちから挨拶はするよな」
身分違いの相手を引き合いに出してはいるけど、言いたいことは伝わってくる。
なので、リーブル嬢もおとなしく頷くしかなかったようだ。
「はい」
「まぁ、エルシアも愛想がいいわけじゃないから、誤解するのも仕方ないが、気をつけた方がいい」
「そうそう。リーブル嬢の評価が下がりかねないからね」
「ご忠告、ありがとうございます」
けっきょく、最後にリーブル嬢が頭を下げて終わりとなった。
いや本当に。訳が分からない。
なんでここまで敵視されてるんだろう。
国外公務でリーブル嬢といっしょに出かけたときは、和気あいあいと会話をしていたのにな。
確かにこの辺りからも、私を追い出して代わりに自分が、みたいなところはあるにはあった。今から思えば、ほんの些細な事だけど。
そして、よくよく思い起こしてみると、関係が大きく変わったのは、リーブル嬢が第三騎士団に仮配属されてから。
この時に、私はリーブル嬢にとって邪魔者になったのかもしれない。
それでも、私の味方についてくれる人もいるんだし、深く気にせずやっていくしかない。
私は強く心に誓った。
「あの二人、良い人なんだよ。いつも私に親切にしてくれるし」
「そうか」
「変な噂にも惑わされないし」
「なるほどな。それなら引き抜くか、あの二人」
え? 引き抜く?
事も無げに喋るグレイに私は一瞬、言葉に詰まる。
「シアが北部に帰るときに、あの二人も連れて帰ろうか、という話だ」
「誘拐? それとも恐喝?」
「声をかければ喜んでついてくるぞ」
「へー。グレイ、北部って人気なんだね」
私がピッタリくっついているグレイに返事をすると、別な方向から声が聞こえてきた。バルザート卿だ。
「マジですか? 北部辺境騎士団は人気ないと思いますが。それよりランチ、作ってもらってきましたよ」
バルザート卿は、手に三人分のお昼を抱えている。
「隊長もお嬢も、人目のつくところでイチャイチャしてないで。移動しましょう」
「い、イチャイチャ?!」
「お嬢。そんなにべったりと抱き合っていて、イチャイチャしてないと言い張るつもりですか?」
うっ。
顔が熱くなる。
グレイがピッタリくっついているので、何か誤解されそうだとは思ったけど。
まさか、周りからは抱き合っているように見えていたとは。
いつの間にか、グレイの腕が私の腰に回されていて、後ろから抱きつかれている格好になっているし。
「グレイ、イチャイチャしてると誤解されるから、もうちょっと離れて!」
私は先ほどのタイミングで、グレイに注意しなかったことを後悔した。
遅くはなったけど、注意して、グレイを引きはがしにかかる。
「何か問題でもあるのか?」
「問題だらけでしょ、勤務中にイチャイチャなんて!」
うん、グレイの馬鹿力にかなうはずなかったな。びくともしない。
「今は昼休憩だが?」
「それでも勤務中には変わりないから!」
「なら、勤務が終わった後なら良いわけだな。俺とシアはパートナーだしな」
「え、えーっと」
「良いよな、シア」
「うん、まぁね」
グレイの圧におされて、思わず頷く。
「お嬢って、意外と押しに弱かったんですね」
バルザート卿の呆れ声に、いやこれはグレイ限定だから、と心の中でつぶやいた。
このところ、グレイはぐっと物理的な距離を縮めてきていて、私もついつい受け入れてしまっているような気がする。
グレイはグレイで「パートナーなんだから、本来はこの距離が妥当」と言い切るけれど。経験不足の私にはよく分からない。
「とにかく、お昼にしましょう」
バルザート卿の提案に同意して、私たちはランチを持って移動することにした。今の食堂の中では居心地が悪いので、このまま団長室に戻ろうか。
行く先が決まって、動き出したとたん、
「あ、エルシア」
聞き慣れた声に私は呼び止められた。
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