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7 王女殿下と木精編
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私たちに、いや、もっと正確にいえば私に声をかけてきたのは、私の良く知る人物だった。
なんなら、つい最近まで行動をともにしていた人物、と言った方が分かりやすいだろうか。
「クラウド。なんだか久しぶりだね」
私は声のする方向に身体を向け、声をかけた。
そこにいたのは第三騎士団第五隊の副隊長、クラウド・ヴェルフェルム。
フィリアがボコボコにしたカイエン卿はクラウドの二番目のお兄さんだ。
私は改めてクラウドを見る。
カイエン卿が黒褐色の髪色をしているのに対して、クラウドは赤みがかった茶髪。目の色は似たような赤眼。
兄弟のせいか、体格や容貌は似ている。なのに、髪の色が違うだけで、かなり違った印象を受けた。
何より違うのは見た目ではなく性格。
胡散臭い偽爽やかさはクラウドにはない。ちょっと軽薄な感じもあるけど、基本的には真面目。
人当たりも良く要領もいいのに、楽観的な部分が災いしてか、同年代以上の女性陣からはあまり人気がない。顔は良いのに。
私の前に立つフィリアも、「あら、顔は良いわねぇ、兄に似て」とつぶやいている。
どことなく笑顔が引きつるフィリア。カイエン卿のことでも思い出して、ムカついているようだ。
クラウドは一瞬、躊躇して、私の周囲に視線を走らせた。
フィリアとバルトレット卿のことを気にしているのだろう。フィリアなんて笑顔が引きつっているしね。
クラウドの様子を見て、バルトレット卿がサッと軽く頭を下げた。フィリアもあわせて頭を下げる。
年は若くても、カイエン卿に似ていてムカついても、騎士団内でのポジション的にはクラウドの方が上となるから。
二人が頭を下げるのを見て、クラウドは息を吐くと、私に笑顔を向けてきた。
「そうだな。エルシアも元気そうで良かった。大噴出の処理に帰ったと、他から聞いていたから」
あー。ちょっと気まずい。
少し前まで同僚だったクラウドには、とくに挨拶もしなかったっけ。
大噴出の処理のため急いでニグラートに戻った私は、ごく数人しか帰郷の挨拶をしていなかった。
配属中の団長室はもちろん挨拶したけど。後はユリンナ先輩とかオルドーとか、ソニアとかリュネットとか。魔術師関係者のみだった。
急いで帰ったんだから仕方がないと思ってもらいたい。
それに、例のトラブル以降は、第五隊とはあまり関わらないようにしていたから。
私の評判を下げて貶めようとしたトラブルは、ちょっとした行き違いだとか誤解だとか、そんな言い訳を第五隊からされただけ。
正直なところ、そんな言い訳をされて気分は良くなかったのだ。
そういった背景もあるのだから、直接、挨拶をしなかったことについては、理解してもらっているとばかり思っていたけど。
わざわざ、他の人から聞いただなんて、面と向かって責めるように言うクラウドを見ると、どうやらそれは私の勘違いだったみたいだ。
しかも、簡単に、元気そうで良かっただなんて。
ぐっと堪えて、平静を保つ。
「大噴出は辺境では日常だから」
ケガをしたり命を落としたりするのが日常の世界。
そんな地で、フィリアもバルトレット卿も生まれ育って生きている。
フィリアたちを前にして、簡単に元気そうだとかなんだとか、言ってもらいたくない。私はそんな気持ちにもなっていた。
「それでもだよ。いくらムチャクチャなお前でも、万が一ってことがあるだろ? 無事で良かった」
もしかしたら、クラウドは何の考えもなしに、ただ思ったこと、感じたことを喋っているだけなのかもしれないけど。
言葉通りに受け止められない自分もいて、気まずくて、気分も悪くて、複雑な気分だった。
表情には出ないように、ニコリと笑ってクラウドの言葉に応じる。
「心配してくれてありがとう」
簡潔に。
「いや、心配するのは当然だろ。その、同僚なんだから」
クラウドにそう言われて他に返す言葉もなく、私は黙ってしまった。「それじゃあ」と別れの言葉でも、付け加えれば良かったのか。沈黙がツラい。
クラウドも黙ったまま、立ち去ることもなく、かといって別れの言葉を発するわけでもなく、私の次の言葉を待っているようだ。
いや、この話の流れで何か待たれても、私としても非常に困る。心配してくれてありがとう、は伝えたので、もう一度繰り返すのもおかしいし。
フィリアとバルトレット卿は素知らぬ顔で、私たちの会話を聞いていて、口出ししたり割り込んだりする様子もなかった。
うーん。
話題、話題、何か話題。
頭の中をかき回して、何か話題になるようなことを探していると、私も他の人から聞いたクラウドの話を思い出した。
それもかなり重要な話を。
親しい間柄なら、他の人から聞くようなことではない話を。
「そうだ。他の人から聞いたんだけど」
他から聞いた、つまり、クラウドは直接教えてくれなかったよね、という意味合いも込めて、クラウドと似たような台詞を使って私は話題を切り出してみた。
なんなら、つい最近まで行動をともにしていた人物、と言った方が分かりやすいだろうか。
「クラウド。なんだか久しぶりだね」
私は声のする方向に身体を向け、声をかけた。
そこにいたのは第三騎士団第五隊の副隊長、クラウド・ヴェルフェルム。
フィリアがボコボコにしたカイエン卿はクラウドの二番目のお兄さんだ。
私は改めてクラウドを見る。
カイエン卿が黒褐色の髪色をしているのに対して、クラウドは赤みがかった茶髪。目の色は似たような赤眼。
兄弟のせいか、体格や容貌は似ている。なのに、髪の色が違うだけで、かなり違った印象を受けた。
何より違うのは見た目ではなく性格。
胡散臭い偽爽やかさはクラウドにはない。ちょっと軽薄な感じもあるけど、基本的には真面目。
人当たりも良く要領もいいのに、楽観的な部分が災いしてか、同年代以上の女性陣からはあまり人気がない。顔は良いのに。
私の前に立つフィリアも、「あら、顔は良いわねぇ、兄に似て」とつぶやいている。
どことなく笑顔が引きつるフィリア。カイエン卿のことでも思い出して、ムカついているようだ。
クラウドは一瞬、躊躇して、私の周囲に視線を走らせた。
フィリアとバルトレット卿のことを気にしているのだろう。フィリアなんて笑顔が引きつっているしね。
クラウドの様子を見て、バルトレット卿がサッと軽く頭を下げた。フィリアもあわせて頭を下げる。
年は若くても、カイエン卿に似ていてムカついても、騎士団内でのポジション的にはクラウドの方が上となるから。
二人が頭を下げるのを見て、クラウドは息を吐くと、私に笑顔を向けてきた。
「そうだな。エルシアも元気そうで良かった。大噴出の処理に帰ったと、他から聞いていたから」
あー。ちょっと気まずい。
少し前まで同僚だったクラウドには、とくに挨拶もしなかったっけ。
大噴出の処理のため急いでニグラートに戻った私は、ごく数人しか帰郷の挨拶をしていなかった。
配属中の団長室はもちろん挨拶したけど。後はユリンナ先輩とかオルドーとか、ソニアとかリュネットとか。魔術師関係者のみだった。
急いで帰ったんだから仕方がないと思ってもらいたい。
それに、例のトラブル以降は、第五隊とはあまり関わらないようにしていたから。
私の評判を下げて貶めようとしたトラブルは、ちょっとした行き違いだとか誤解だとか、そんな言い訳を第五隊からされただけ。
正直なところ、そんな言い訳をされて気分は良くなかったのだ。
そういった背景もあるのだから、直接、挨拶をしなかったことについては、理解してもらっているとばかり思っていたけど。
わざわざ、他の人から聞いただなんて、面と向かって責めるように言うクラウドを見ると、どうやらそれは私の勘違いだったみたいだ。
しかも、簡単に、元気そうで良かっただなんて。
ぐっと堪えて、平静を保つ。
「大噴出は辺境では日常だから」
ケガをしたり命を落としたりするのが日常の世界。
そんな地で、フィリアもバルトレット卿も生まれ育って生きている。
フィリアたちを前にして、簡単に元気そうだとかなんだとか、言ってもらいたくない。私はそんな気持ちにもなっていた。
「それでもだよ。いくらムチャクチャなお前でも、万が一ってことがあるだろ? 無事で良かった」
もしかしたら、クラウドは何の考えもなしに、ただ思ったこと、感じたことを喋っているだけなのかもしれないけど。
言葉通りに受け止められない自分もいて、気まずくて、気分も悪くて、複雑な気分だった。
表情には出ないように、ニコリと笑ってクラウドの言葉に応じる。
「心配してくれてありがとう」
簡潔に。
「いや、心配するのは当然だろ。その、同僚なんだから」
クラウドにそう言われて他に返す言葉もなく、私は黙ってしまった。「それじゃあ」と別れの言葉でも、付け加えれば良かったのか。沈黙がツラい。
クラウドも黙ったまま、立ち去ることもなく、かといって別れの言葉を発するわけでもなく、私の次の言葉を待っているようだ。
いや、この話の流れで何か待たれても、私としても非常に困る。心配してくれてありがとう、は伝えたので、もう一度繰り返すのもおかしいし。
フィリアとバルトレット卿は素知らぬ顔で、私たちの会話を聞いていて、口出ししたり割り込んだりする様子もなかった。
うーん。
話題、話題、何か話題。
頭の中をかき回して、何か話題になるようなことを探していると、私も他の人から聞いたクラウドの話を思い出した。
それもかなり重要な話を。
親しい間柄なら、他の人から聞くようなことではない話を。
「そうだ。他の人から聞いたんだけど」
他から聞いた、つまり、クラウドは直接教えてくれなかったよね、という意味合いも込めて、クラウドと似たような台詞を使って私は話題を切り出してみた。
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