運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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7 王女殿下と木精編

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 王太子殿下の呻くような説明を聞いて、私は愕然とした。

「グレイの実のお母さま?!」

 驚きが言葉となって口から漏れる。

 今まで何度か姿を見たことはあったけど、遠目でだったり、チラッとだったり、とくにどうでもいい感じでしか思ってなかったので、意識して見たことはなかったかも。

「て。若くない?」

 うん、どう見ても二十代、頑張っても三十代だよ?

「グレイが私より五歳上でしょ。そのグレイより十八歳は上のはずだよね? え? 年齢詐欺?」

「なんでも、アルゲン大公領特産の水だかなんだかを使って、若さと美貌を維持してるんですって」

 噂通り若いわねぇ、とデルティ殿下も唸っている。

 噂って?という視線を向けると、デルティ殿下は親切に教えてくれた。

「アルゲン大公領の特殊な水そのものだったり、その水を使った加工品だったり、それを直接肌に使ったり、飲んだりしているらしいわよ」

「アルゲン大公領の特殊な水?」

 グレイなら何か知ってるのかな。そう思いながら、首を傾げていると、さらなる疑問が頭の中に湧いてきた。

「でも、グレイは年相応だよ? いや、むしろちょっと上に見えるし」


 プッ


「え?」

 笑いを堪えて吹き出すような声が聞こえた。

 くるっと振り向いて周りを見渡すけど、それらしい人はいない。

 フィリアとバルトレット卿は、吹き出したりしたら、後でグレイにボコボコにされるだろうし。 

「エルシア? どうかしたの?」

「いや、今ね。確かに誰かが笑うような声が聞こえたんだけどね」

「あら、そんなこと。それなら、」

 と、デルティ殿下が指を差す。

「ユニー兄さましかいないじゃないの」

 指を差された王太子殿下はとうとう、吹き出して、ハハハと笑い出した。

 いやいやいやいや。おかしいでしょ。

 クズ男が五強の仮主を集めて、今まさに何かやらかそうとしている目の前で、グレイの話を聞いて吹き出した?

 あまりの不謹慎さに、王太子殿下をジロッと睨みつける。

 そもそも、吹き出して笑い出す人柄じゃないよ、この人。

「何がおかしかったのかはこの際、どうでもいいので。ひとまず、笑うのは止めてください」

「いや、悪かった。あまりにも真剣に年齢の話をしていたから。ルベラス嬢も普通の人間なんだと思っただけだ」

 いや待って。その理屈からすると、私、普通の人間だと思われてなかったわけ?!

「その理由、一番、ダメなヤツですよね」

「だから、悪かったと。とりあえず、こちらの調べでは『特殊な水』とやらは、アルゲン城の城内に湧き出している物。
 大公妃が筆頭殿に相談して、共同開発にいたったそうだ」

「やけに詳しいですね」

「筆頭殿が研究している人工魔力結晶。あれの材料になってるからな。研究論文に書いてあったよ」

 人工魔力結晶という言葉を聞いて、私の思考が止まった。そしてすぐさま、カッとなった。

 身を乗り出して、王太子殿下の腕をガシッと掴む。

「なぁぁぁぁぁんで分かってるのに、研究を止めなかったんですか?!」

 あれだ。

 フォセル嬢が飲み込んでたヤツ。どす黒い色をした魔力を放っていたあの石。あれの材料にしたってことだ。

「人工的に魔石や魔力結晶を作るのは画期的なことだったから」

 殿下の話では、天然の魔石や魔力結晶は掘り尽くせば枯渇する。使い尽くせばただの石ころ。

 人工的に作ることが出来れば、有限だった資源を無限のものとすることが出来るという。

 そこに目を付けたのが国王陛下と王太子殿下、なんだろうね。王宮魔術師団の研究だから陛下や殿下が知らないはずない。無限の資源が手に入ると、欲が出たんだろう。

 こうして、クズ男の研究が進んでいったんだ。

 私は、胸の中がモヤモヤするのを無理やり落ち着かせた。

「命だってなんだって、限りがあるから大切に使うんだし、大事にするんじゃないんですか?」

「研究自体が悪いわけではない。それにひいては国のためになる、と判断した」

 王太子殿下は真顔で答える。本心でそう思ってる、そういう顔だ。

「ともあれ、その研究成果がおそらく、あんなことに繋がっているんです」

 私は、三聖の展示室の入り口に視線を戻した。

 クズ男は、今現在に至るまでの経緯をベラベラと喋っている。どうやら、国王陛下がやってくるまでの時間稼ぎをしているらしい。

 クズ男でも陛下がいないところでの五強のお披露目は、マズいと察したんだろうけど。
 そこまで察することが出来るのなら、会場を勝手に代えたらこうなる、ってところまで察しておいて欲しかった。

「フォセル嬢はどす黒い魔力結晶を食べてましたから、きっと、ダイアナ嬢も同じ物を食べてるんですよね。
 アルゲン大公妃はどす黒い魔力結晶の大元をたっぷり摂取しているようですから、同じように仕上がっているんでしょうね」

 私は改めて三人の姿を観察する。

 三人とも晴れ渡った秋の青空のような爽やかでスッキリとした笑みを浮かべて、招待客たちに手を振っていた。今日の主役は自分たちだとアピールするかのように。

「王太子殿下が見逃した研究の成果が、見事に役に立ちますよ。人間を五強の餌にすることでね」

 私は嫌みたっぷりにして、王太子殿下に現状を突きつける。なのに王太子殿下の方は私の嫌みなど物ともしない。

「それを阻止するために、私たちはここに来ているんだ」

 さらっとそう言い放つと、王太子殿下はクズ男を睨みつけたのだった。
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