運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

文字の大きさ
443 / 545
7 王女殿下と木精編

5-3

しおりを挟む
 王太子殿下の呻くような説明を聞いて、私は愕然とした。

「グレイの実のお母さま?!」

 驚きが言葉となって口から漏れる。

 今まで何度か姿を見たことはあったけど、遠目でだったり、チラッとだったり、とくにどうでもいい感じでしか思ってなかったので、意識して見たことはなかったかも。

「て。若くない?」

 うん、どう見ても二十代、頑張っても三十代だよ?

「グレイが私より五歳上でしょ。そのグレイより十八歳は上のはずだよね? え? 年齢詐欺?」

「なんでも、アルゲン大公領特産の水だかなんだかを使って、若さと美貌を維持してるんですって」

 噂通り若いわねぇ、とデルティ殿下も唸っている。

 噂って?という視線を向けると、デルティ殿下は親切に教えてくれた。

「アルゲン大公領の特殊な水そのものだったり、その水を使った加工品だったり、それを直接肌に使ったり、飲んだりしているらしいわよ」

「アルゲン大公領の特殊な水?」

 グレイなら何か知ってるのかな。そう思いながら、首を傾げていると、さらなる疑問が頭の中に湧いてきた。

「でも、グレイは年相応だよ? いや、むしろちょっと上に見えるし」


 プッ


「え?」

 笑いを堪えて吹き出すような声が聞こえた。

 くるっと振り向いて周りを見渡すけど、それらしい人はいない。

 フィリアとバルトレット卿は、吹き出したりしたら、後でグレイにボコボコにされるだろうし。 

「エルシア? どうかしたの?」

「いや、今ね。確かに誰かが笑うような声が聞こえたんだけどね」

「あら、そんなこと。それなら、」

 と、デルティ殿下が指を差す。

「ユニー兄さましかいないじゃないの」

 指を差された王太子殿下はとうとう、吹き出して、ハハハと笑い出した。

 いやいやいやいや。おかしいでしょ。

 クズ男が五強の仮主を集めて、今まさに何かやらかそうとしている目の前で、グレイの話を聞いて吹き出した?

 あまりの不謹慎さに、王太子殿下をジロッと睨みつける。

 そもそも、吹き出して笑い出す人柄じゃないよ、この人。

「何がおかしかったのかはこの際、どうでもいいので。ひとまず、笑うのは止めてください」

「いや、悪かった。あまりにも真剣に年齢の話をしていたから。ルベラス嬢も普通の人間なんだと思っただけだ」

 いや待って。その理屈からすると、私、普通の人間だと思われてなかったわけ?!

「その理由、一番、ダメなヤツですよね」

「だから、悪かったと。とりあえず、こちらの調べでは『特殊な水』とやらは、アルゲン城の城内に湧き出している物。
 大公妃が筆頭殿に相談して、共同開発にいたったそうだ」

「やけに詳しいですね」

「筆頭殿が研究している人工魔力結晶。あれの材料になってるからな。研究論文に書いてあったよ」

 人工魔力結晶という言葉を聞いて、私の思考が止まった。そしてすぐさま、カッとなった。

 身を乗り出して、王太子殿下の腕をガシッと掴む。

「なぁぁぁぁぁんで分かってるのに、研究を止めなかったんですか?!」

 あれだ。

 フォセル嬢が飲み込んでたヤツ。どす黒い色をした魔力を放っていたあの石。あれの材料にしたってことだ。

「人工的に魔石や魔力結晶を作るのは画期的なことだったから」

 殿下の話では、天然の魔石や魔力結晶は掘り尽くせば枯渇する。使い尽くせばただの石ころ。

 人工的に作ることが出来れば、有限だった資源を無限のものとすることが出来るという。

 そこに目を付けたのが国王陛下と王太子殿下、なんだろうね。王宮魔術師団の研究だから陛下や殿下が知らないはずない。無限の資源が手に入ると、欲が出たんだろう。

 こうして、クズ男の研究が進んでいったんだ。

 私は、胸の中がモヤモヤするのを無理やり落ち着かせた。

「命だってなんだって、限りがあるから大切に使うんだし、大事にするんじゃないんですか?」

「研究自体が悪いわけではない。それにひいては国のためになる、と判断した」

 王太子殿下は真顔で答える。本心でそう思ってる、そういう顔だ。

「ともあれ、その研究成果がおそらく、あんなことに繋がっているんです」

 私は、三聖の展示室の入り口に視線を戻した。

 クズ男は、今現在に至るまでの経緯をベラベラと喋っている。どうやら、国王陛下がやってくるまでの時間稼ぎをしているらしい。

 クズ男でも陛下がいないところでの五強のお披露目は、マズいと察したんだろうけど。
 そこまで察することが出来るのなら、会場を勝手に代えたらこうなる、ってところまで察しておいて欲しかった。

「フォセル嬢はどす黒い魔力結晶を食べてましたから、きっと、ダイアナ嬢も同じ物を食べてるんですよね。
 アルゲン大公妃はどす黒い魔力結晶の大元をたっぷり摂取しているようですから、同じように仕上がっているんでしょうね」

 私は改めて三人の姿を観察する。

 三人とも晴れ渡った秋の青空のような爽やかでスッキリとした笑みを浮かべて、招待客たちに手を振っていた。今日の主役は自分たちだとアピールするかのように。

「王太子殿下が見逃した研究の成果が、見事に役に立ちますよ。人間を五強の餌にすることでね」

 私は嫌みたっぷりにして、王太子殿下に現状を突きつける。なのに王太子殿下の方は私の嫌みなど物ともしない。

「それを阻止するために、私たちはここに来ているんだ」

 さらっとそう言い放つと、王太子殿下はクズ男を睨みつけたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

魔女の笑顔

豆狸
恋愛
アレハンドロはカルメンの笑顔を思い出せない。自分が歪めて壊してしまったからだ。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

【完結】義妹と婚約者どちらを取るのですか?

里音
恋愛
私はどこにでもいる中堅の伯爵令嬢アリシア・モンマルタン。どこにでもあるような隣の領地の同じく伯爵家、といってもうちよりも少し格が上のトリスタン・ドクトールと幼い頃に婚約していた。 ドクトール伯爵は2年前に奥様を亡くし、連れ子と共に後妻がいる。 その連れ子はトリスタンの1つ下になるアマンダ。 トリスタンはなかなかの美貌でアマンダはトリスタンに執着している。そしてそれを隠そうともしない。 学園に入り1年は何も問題がなかったが、今年アマンダが学園に入学してきて事態は一変した。

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

処理中です...