運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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8 騎士一族と黒鉄編

1-0 エルシア、闘技会の準備をする

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 リュネットから衝撃的な打ち明け話を聞いた翌日のこと。

「で。オルドー、本当の話なの?」

「絶対、オルドーがなんかやったのよぅ!」

 お昼の休憩時間に、私は、いや、私たちは第三騎士団の食堂に集まって、オルドーを取り囲んでいた。

 取り囲まれている当の本人、オルドー・フェルアスはとてつもなく、不機嫌な様子ながらも、おとなしく私たちに従っている。

 オルドーとは魔塔の孤児院からの付き合い。私が孤児院に捨てられる少し前に、オルドーもやってきたらしい。
 詳しいことはあれこれ聞いてないけど、オルドーも親に捨てられて魔塔に連れてこられたようだった。

 今は第三騎士団の第二隊所属の魔術師として生活しているオルドー。
 同じく魔塔の孤児院からの付き合いがあるリュネットとは、恋人としてお付き合いしていた。

 と聞いていたのに!

「他人の私的なことに、踏み込んでもらいたくないんだけどな」

 返事の内容からして、リュネットから聞いた話『オルドーとは別れた』というのは本当のことのようだ。

 別れを決意するほどのことがあったんだろうか。リュネットからサラッと話を聞いただけの私なんて、気になって気になって、夜も眠れなかったほど。
 今ここで真相を明らかにしておかないと、きっと今日も眠れなくなる。

「他人といえば他人だけど。オルドーもリュネットも、私にとっては家族みたいなものでしょ?」

「絶対、オルドーが悪いのよぅ!」

 私が語る後から、おまけのように声を出しているのは、言わずと知れたユリンナ・ダイモス先輩。第三騎士団第一隊所属の魔術師だ。

 ポジション的には、第三騎士団魔術師長のパシアヌス様、第三騎士団長付き魔術師の私、そしてユリンナ先輩という順番になるけど、経験的にはパシアヌス様の次にくる人物。
 話し方が特徴的なのに加えて、頭の中身も特徴的などこぞのお嬢さまである。

 そのユリンナ先輩は『女子の話なら任せて』と言って、私に勝手についてきて、キャーキャー騒いでいた。

 そんなユリンナ先輩を無視して、オルドーも私も話を進める。

「家族だからって、なんでも踏み込んでいいわけじゃないだろ」

「私、オルドーとリュネットがケンカ別れして、それっきりになるのって、嫌なんだけど」

「そうよそうよぅ、オルドー、」

 無視しても割り込んでくるユリンナ先輩に、イラッとして、私は声を荒げてしまった。

「ユリンナさんは黙っててくれ!」

「ユリンナ先輩は黙ってて!」

 あれ。
 オルドーに先を越されちゃったわ。

「はい」

 ともあれ、二人して怒鳴ったのが効果あったようで、ユリンナ先輩は静かになる。

 そして。

 追求が始まった。




「それで?」

「だから、あぁ、もう、ケンカ別れでも浮気でもないって。価値観の相違ってヤツなんだよ」

 説明を求める私と、おとなしくなったユリンナ先輩と、もちろん私の護衛のフィリアとバルトレット卿と。
 四人に囲まれる形で迫られて、やけになったのか、オルドーは頭をかきむしりながら、ぐぁぁぁぁっと叫ぶ。

 いや、ここ、食堂なんだから。
 目立つことは止めて欲しいんだけど。

 周りから変な目で見られてるし。「またエルシアが何かやったんじゃないか」とか言わないでよ、やってないから。

 周りの声は聞こえない振りで乗り切って、私は気を取り直した。

「何があったの?」

「何もないんだよ。本当に。ちょっとしたことの積み重ねって言うのかな」

 オルドーは諦めたのか、今度は普通に喋り出す。

「リュネットとは付き合い、長いだろ。だからさ、リュネットのことは、なんだって分かってる、そう思い上がっていだんだよな」

 喋り出したと思ったら、本題の手前のところから話が始まった。

「いきなり語りモードに入らないで」

 と遮ったのに、

「俺は、親から捨てられたから。子どもを捨てない、いや、子どもを捨てないのは普通は当たり前だよな、そんな普通の家庭を持って普通な親になりたかったんだよな、きっと」

 語りは続く。

「オルドー、語りモードから離れないわねぇ」

「だから、結婚して、どんな家庭にしたいかとか、どんな親になりたいかとか、先走ったんだよ。リュネットの気持ちも確認しないで」

 まぁ、人生設計を考えるのは大事だ。

 結婚となると、自分の人生設計だけでなく、相手の人生設計も関係してくる。自分の意見と相手の意見を摺り合わせるのも、とても大事なことだ。

 オルドーはまずは自分の意見をリュネットに伝えたんだろう。それがうまく行かなかったのか。

「あるあるだわぁ」

 と声をあげたのは、恋愛に関しては私より何十倍も経験豊富なユリンナ先輩。

「あるあるなんですか、ユリンナ先輩」

「あるあるよぅ。あるある!」

 ユリンナ先輩のあるある騒ぎに目もくれず、オルドーは一人、語り続ける。

「リュネットは親を亡くして一人になって、それで魔塔に来たから。当然、家族が欲しいと思って。家庭を持って子どもを育てて、って考えていると思ってたんだ、勝手に」

 家族。家族か。

 私にとって血の繋がった家族は、クズ男だけ。
 ルベル公爵家も血は繋がっているけど、会話どころか会ったことさえないので、家族という実感は皆無だった。

「家族、欲しいかな。そんなに」

 そんな感じなので、血の繋がった家族が欲しいとか、考えたこともなかった。
 だって、あんなクズ。他人の方がむしろ嬉しい。

 私の心のままの発言を、ユリンナ先輩が隣から咎めた。

「何、言ってるのよぅ! エルシアには後援がいるんだから、家族のようなものでしょぅ!」

 後援。後援か。

「そうだった」

 ニグラートは私の家族みたいなものだった。グレイも、グレイの養父のベイオス辺境伯も、私の家族のようなものだった。

 グレイに至っては、婚姻の書類にサインをしてしまっているので、もはや他人ではなかったわ。誰にも言ってないけど。

 ユリンナ先輩の指摘に私がうんうん頷いて納得している間も、オルドーは語りモードのまま。

「居場所というか、帰る場所というか。俺はそんなのが欲しかったんだけど。リュネットは違ったんだよな」

「だからぁ、具体的に何があってどうなったのよぅ!」

 しびれを切らしたユリンナ先輩が、とうとうオルドーに突っ込みを入れ始めてしまう。物理的にも。

 でも、私もそろそろ具体的な話を聞きたいと思っていたので、オルドーの首をリアルに絞め始めたユリンナ先輩に乗っかってしまった。

「そうだよ、オルドー。ぼんやりふんわりとした話だけじゃ、分からないよ」

 私たち二人に詰め寄られて、というかユリンナ先輩に首を絞められて苦しかったのか、オルドーはようやく、経緯を具体的に話し始めた。
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