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【第六章】姉と妹
60.姉と妹(10) ソフィア視点
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「どうしてよ! この私が国王を呼んでるのよ! 何で来ないの!」
私は大声をあげた。
いつもなら職務を投げ出してでも、エドアルトは私の傍に来てくれていた。
それなのに今日は来てくれない!
新しい宝石を頼もうと思ったのに、なんで来てくれないの!
「お前、きちんとエドアルトに伝えたの!?」
私は、私添きの侍女を怒鳴りつける。
「は、はい、いつものように」
「ならなんで来ないのよ!」
私は熱々の紅茶の入ったポットを侍女にぶちまけてやった。
「あつっ、あっ……あぁあたああああああ!」
「うるさいわね、蝉じゃあるまいし、そんなにぎゃあぎゃあ叫ばないで頂戴。黙れ。黙りなさい」
「い、痛いんです。すごく熱いんです……皮膚が……お願い、だれか……」
私は侍女の頭を踏みつけた。
侍女とはこう使うものだ。
イライラした時の八つ当たり道具。だってこいつは庶民だもの。
それに比べて私は選ばれし王妃だ。
何をしたって許される。
「先程コチラから悲鳴が聞こえましたが――」
突然、騎士が私の部屋に入ってきた。
熱湯で赤くなっている侍女と、彼女の頭を踏みつけている私を見て、唖然としていた。
でも大丈夫。いつもなら許してくれるもの。
男の人はみんな私の虜。
――あなたは王妃だから、すべて隠してしまいましょう。
そういって、みんながみんな、私を甘やかしてくれ――
「大丈夫ですか?」
騎士は私を突き飛ばし、侍女を心配した。……この私を突き飛ばした!
「早く冷やしましょう。やけどは放っておくほど悪化します。医者にも診てもらいましょう」
騎士の男は私に一瞥もしなかった。
彼女を抱きかかえて、医務室に向かった。
「なに、なによ! 今日はおかしいわ! みんなおかしい!」
私は地団駄を踏む。そして別の者をベルで呼ぶ。
そして何度も何度もエドアルトへ取次を頼んだ。
でもその度に断られてしまった。
「あんの馬鹿国王! 私に歯向かうの? 私を蔑ろにするなんて許せない。こうなったら、二人っきりになった時に彼を苛め抜いてやる。生きてるのも嫌だと思うくらい、苦しめてやる! そしてまた私の言うことを聞かせてやるんだから。ばか、ばぁか!」
そしてその日の夜、エドアルトから呼び出しを食らった。
「遅いのよ、馬鹿。愚図」
私は独り言を呟いて、いつもどおり新しいドレスを卸して着た。
そしてエドアルトの私室に向かおうとすると、騎士に止められた。
「王妃様、違います。今回の呼び出し場所は国王様の部屋ではなく――」
騎士に連れられてきたのは、王座の間だった。
こんな夜中に王座の間を使うなんて。
もしかして民をいじめるのかしら。ふふ。私のためにサプライズとしてプレゼントを用意してくれていたのなら、一日中呼びかけに応じなかったことも許してあげないこともないわ。
私はワクワクして、玉座へ上がろうとした。
「動くな」
エドアルト国王は冷たい声で言った。この私に向かって。
「エドアルト様ぁ? 私は王妃よぉ。玉座に座る権利はあるわぁ」
「わかってる。だが、今回呼び出したのは、貴方に関係することだ。そこの玉座の下に座り、足をつけろ」
「わたしにぃ? 足をつけろぉ? あはははは、エドアルト様ぁ、お酒に酔ってるのかしらぁ?」
「いいから言うとおりにしろ。でないと――お前を殺すことになる」
エドアルトの瞳は本気だった。
何で? 何で!?
昨日までうまくいってたじゃない。なのに、なんでエドアルトは私を拒むの!?
「ソフィア・ノヴィコフ。お前とは離縁する。国税の使いこみも、国の困窮も、すべてお前のドレスや宝石のせいだ」
「はぁ?」
なんで?
なんで、そんなことを言うの? エドアルト。私の愛おしい一番の玩具。
贅沢三昧の日々は貴方も同意だったじゃない。
私を愛しているから、何ても買ってくれたし、そのために何でもしてくれたじゃない。
今までずっとずっとずっと、私の言うことにはみんなが従ってくれた。
みんなが石と私の魅力に取り憑かれて、私を愛してくれていた。
それなのに、今は騎士たちは、侍女たちは、蔑んだ瞳で私を見ている。
悲しむような目ではなく、こうなって当然といったような目で。
なんで、なんでこうなったの!?
私は大声をあげた。
いつもなら職務を投げ出してでも、エドアルトは私の傍に来てくれていた。
それなのに今日は来てくれない!
新しい宝石を頼もうと思ったのに、なんで来てくれないの!
「お前、きちんとエドアルトに伝えたの!?」
私は、私添きの侍女を怒鳴りつける。
「は、はい、いつものように」
「ならなんで来ないのよ!」
私は熱々の紅茶の入ったポットを侍女にぶちまけてやった。
「あつっ、あっ……あぁあたああああああ!」
「うるさいわね、蝉じゃあるまいし、そんなにぎゃあぎゃあ叫ばないで頂戴。黙れ。黙りなさい」
「い、痛いんです。すごく熱いんです……皮膚が……お願い、だれか……」
私は侍女の頭を踏みつけた。
侍女とはこう使うものだ。
イライラした時の八つ当たり道具。だってこいつは庶民だもの。
それに比べて私は選ばれし王妃だ。
何をしたって許される。
「先程コチラから悲鳴が聞こえましたが――」
突然、騎士が私の部屋に入ってきた。
熱湯で赤くなっている侍女と、彼女の頭を踏みつけている私を見て、唖然としていた。
でも大丈夫。いつもなら許してくれるもの。
男の人はみんな私の虜。
――あなたは王妃だから、すべて隠してしまいましょう。
そういって、みんながみんな、私を甘やかしてくれ――
「大丈夫ですか?」
騎士は私を突き飛ばし、侍女を心配した。……この私を突き飛ばした!
「早く冷やしましょう。やけどは放っておくほど悪化します。医者にも診てもらいましょう」
騎士の男は私に一瞥もしなかった。
彼女を抱きかかえて、医務室に向かった。
「なに、なによ! 今日はおかしいわ! みんなおかしい!」
私は地団駄を踏む。そして別の者をベルで呼ぶ。
そして何度も何度もエドアルトへ取次を頼んだ。
でもその度に断られてしまった。
「あんの馬鹿国王! 私に歯向かうの? 私を蔑ろにするなんて許せない。こうなったら、二人っきりになった時に彼を苛め抜いてやる。生きてるのも嫌だと思うくらい、苦しめてやる! そしてまた私の言うことを聞かせてやるんだから。ばか、ばぁか!」
そしてその日の夜、エドアルトから呼び出しを食らった。
「遅いのよ、馬鹿。愚図」
私は独り言を呟いて、いつもどおり新しいドレスを卸して着た。
そしてエドアルトの私室に向かおうとすると、騎士に止められた。
「王妃様、違います。今回の呼び出し場所は国王様の部屋ではなく――」
騎士に連れられてきたのは、王座の間だった。
こんな夜中に王座の間を使うなんて。
もしかして民をいじめるのかしら。ふふ。私のためにサプライズとしてプレゼントを用意してくれていたのなら、一日中呼びかけに応じなかったことも許してあげないこともないわ。
私はワクワクして、玉座へ上がろうとした。
「動くな」
エドアルト国王は冷たい声で言った。この私に向かって。
「エドアルト様ぁ? 私は王妃よぉ。玉座に座る権利はあるわぁ」
「わかってる。だが、今回呼び出したのは、貴方に関係することだ。そこの玉座の下に座り、足をつけろ」
「わたしにぃ? 足をつけろぉ? あはははは、エドアルト様ぁ、お酒に酔ってるのかしらぁ?」
「いいから言うとおりにしろ。でないと――お前を殺すことになる」
エドアルトの瞳は本気だった。
何で? 何で!?
昨日までうまくいってたじゃない。なのに、なんでエドアルトは私を拒むの!?
「ソフィア・ノヴィコフ。お前とは離縁する。国税の使いこみも、国の困窮も、すべてお前のドレスや宝石のせいだ」
「はぁ?」
なんで?
なんで、そんなことを言うの? エドアルト。私の愛おしい一番の玩具。
贅沢三昧の日々は貴方も同意だったじゃない。
私を愛しているから、何ても買ってくれたし、そのために何でもしてくれたじゃない。
今までずっとずっとずっと、私の言うことにはみんなが従ってくれた。
みんなが石と私の魅力に取り憑かれて、私を愛してくれていた。
それなのに、今は騎士たちは、侍女たちは、蔑んだ瞳で私を見ている。
悲しむような目ではなく、こうなって当然といったような目で。
なんで、なんでこうなったの!?
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